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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

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三日目終わり

 刀を構えたタカシと隼人と潤の三人が雄叫びを上げながらガンマに突撃する。



『うおおおおおおおお!!!』



 ガンマに接近した三人は烈火の如く攻める。ガンマは三人の攻撃を捌き、反撃を仕掛けるが三人の連携の前にガンマの反撃も止められる。



 しかし、驚くべきはガンマの戦闘力だろう。数の上でも手数の多さでも圧倒的に不利な立場であるのに三人と互角に戦っている。驚異的な強さである。



 四人の戦闘を後方から眺めるアイリスは魔法で支援しようにも既に魔力が尽きている。この場から離れると言う選択肢もあったが、体力も残っていない。ただ、何も出来ないままのアイリスは悔しさに下唇を噛んだ。



「ぐっ!」


「がっ!」



 隼人と潤がガンマの攻撃により吹き飛ばされる。残ったタカシが一人でガンマと対峙している。しかし、一人ではガンマの猛攻に耐え切れず徐々に押されていく。



「くぅ!」


「どうした、どうした! 先ほどまでの威勢はどこに行った!」


「ぐあっ!」



 力負けしたタカシが吹き飛ばされる。遂に三人が負けてしまい、ガンマはアイリスへと歩を進めた。だが、そこに隼人が飛び込んできて再びガンマと戦い始める。



「行かせるかよ!!」


「しつこいぞ!」


「ぐぎぃ!」



 殴られて隼人が膝を着く。膝を突いたの隼人の髪を掴み持ち上げると容赦なく顔面にガンマは拳を叩き込んだ。



「があっ……」


「吹き飛べ!」


「ぎっ!!!」



 二発目に打ち込んだ拳で隼人は吹き飛んでいく。拳についた血を払いながらガンマは歩き出す。そして、またもや邪魔が入り溜息を零す。



「はあ……まだわからんか。実力の差が」


「やらせるわけにはいかねんだよ!」


「口だけは達者な奴らだ!」



 潤とガンマが戦闘に入る。三人でいた時に比べるとガンマの強さは嫌と言うほど分かる。そもそも三人で戦っても押し負けた相手なのだ。一人で潤が勝てるはずが無い。必死に戦う潤だがガンマの前に敗北した。



「が、はぁ……」


「そこで沈んでいろ」



 腹に強烈な一撃を受けた潤が蹲り、ガンマは潤を一瞥すると今度こそアイリスを殺すために足を進めた。



「性懲りもない奴だ。貴様は既に分かっているだろう? 我に勝てないことくらい」



 ガンマとアイリスの間にタカシが立ちはだかる。息も絶え絶えで今のも倒れてしまいそうな身体を刀で支えている。それでも、タカシはアイリスを守るために立ち向かう。



「わかっている。わかっているが……諦めるわけにはいかねえだろう?」



 流石のガンマも呆れて声が出ない。何故そうまでして戦うのか。何故、勝てないと分かっていても挑むのか。理解に苦しむガンマはタカシを倒して目的であるアイリスを殺害して天空の城へと早急に戻りたいという気持ちになる。



「そうだ。福田の言うとおりだ」


「ああ。負けらんねえよな」



 いつの間にか吹き飛ばしたはずの隼人がガンマの横に立っており、蹲っていたはずの潤がガンマの後ろに立っている。三方を囲まれたガンマは少々驚くことになる。すぐには立ち上がれないほどの痛みと傷を負わせたはずの者達が立ち上がってきたのだから。



「驚いた。まさか、もう立ち上がってくるとは」


「俺たちを舐めるんじゃねえぞ」



 杖代わりにしていた刀を地面から引き抜き、タカシが飛び出す。それと同時に隼人と潤もガンマへと襲い掛かる。



「敬意を払おう。お前達の執念に。そして、知るがいい。お前たちが決して叶わぬ相手だと言う事を! はあっ!!!」



 飛び掛った三人はガンマが放った衝撃波により吹き飛ばされて完全に沈黙する。残されたガンマはようやくアイリスの元へと近付く。



「時間が掛かってしまったがようやくだな。小娘。最後に何か言い残すことはあるか?」


「私が死んでもどうか悲しまないで、顔を上げて戦いなさい、と。あの子達に伝えてください」


「了承した」



 アイリスは既にスキルを発動する事も出来なくなっている為、死を簡単に受け入れた。ガンマの温情で最後の言葉だけは残す事が出来てアイリスは思い残すことなく逝けるだろうと思った。だけど、最後の瞬間思い出してしまう。



 ショウと過ごした僅かな日々を。



「さらばだ」



 目を閉じ一筋の涙を流しながらアイリスはガンマの魔法によって世を去る。アイリスを殺し終えたガンマは最後に周囲に散った三人の勇者を見詰めてから天空の城へと帰還した。



 ベータとガンマの二人が五人の殺害を達成した事により天空の城から溢れ出していたブラックリミナーレがピタリと止まる。クラスメイト達は今日の戦闘が終了した事に安堵する。



 優衣の元へと全員が集まる。負傷していた大輝達三人とタカシ達三人と剛史も合流を果たす。クラス内でも上位の実力者達が暗い顔をしているのが分かると雰囲気が重たくなる。



「やあ、諸君。元気にしてるかな?」



 まるで分かってるかのようにサイファがタイミングよく声を出してくる。いつもの如く姿は見えないが、どこかで見ているのだろうとクラスメイト達は空を見上げる。



「とても悲しいね~。昨日に引き続きまたもや親しい人が死んでしまうなんて」


「どこまで人を馬鹿にすれば……」


「んん~。何か言ったかな~?」


「貴方だけは必ず! 必ず倒してみせる!」


「ぷっ! はははははははっ! 私が作ったアルファやベータやガンマに手も足も出なかった君達が私を倒す~? はははっ! これほど愉快な冗談は初めてだ!」



 笑い続けるサイファにクラスメイト達が怒りを激しく燃やしていく。しばらく、笑っていたサイファの声が聞こえなくなる。



「ふう。大いに笑わせてもらった。そのお礼とは何だが明日は四人だけで戦ってあげよう」



 クラスメイト達はその提案に驚きの表情を見せる。サイファの言う事が本当であるなら勝てるかもしれないと希望が沸いてくる。



「明日は東西南北に私の部下を向かわせよう。ふふ、明日を楽しみにしていたまえ!」



 その言葉が最後でサイファの声は聞こえなくなる。嘘か本当かは分からないが明日は大事な一日となるだろうとクラスメイト達は覚悟する。明日、必ずサイファに後悔させてみせると決めた。

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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