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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

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残り時間

 結論から言えば、クラスメイト達は三人に完膚無きまでに叩きのめされた。リュウホウの一撃必殺とも呼べる拳や蹴りに的確なアテナの支援に加えてアイリスの多彩な魔法でクラスメイト達は手も足も出ずに負けてしまった。



「くそが……」


「ほほう~。まだ意識が残っておったか」



 回復を担当する数名を残しておいたが、戦闘を担当する者は全員容赦なく意識を失わせたと思ったがタカシだけはぎりぎり意識を保っており、三人の圧倒的な強さに悪態を吐く。



「まだやるか?」


「くっ……」



 リュウホウに煽られてタカシは立ち上がろうと足に力を込めるが立ち上がるだけの力は既に残っていない。



「参りました……」


「今はそれでいい。じゃが、いつかは己の限界を超えてでも立ち上がらねばならぬ日が来る事を忘れるな」



 そう言ってリュウホウは優しくタカシの頭を撫でた。抵抗する気力もいないタカシは頭を撫でられて髪の毛がくしゃくしゃになってしまうものの、それが嫌とは思わなかった。



 回復を担当していたクラスメイトがアテナと協力して気絶しているクラスメイト達を回復して回る。全員が意識を取り戻したところでリュウホウが全員に向かって喋る。



「さて、これで分かったと思うがお主等はまだまだ弱い。自惚れていた自分を恥じよ! 慢心することなく鍛錬に打ち込め。でなければ、次の戦い――死ぬ事になるぞ」



 最後の一言でクラスメイト達はより一層死の認識が強まる。この世界の存亡は自分達の双肩に掛かってるのだと。自ら失くしてしまった希望の為にも彼等は負けられないと意気込む。



 改めて痛感したクラスメイト達は三人の指導の下、鍛錬を休むこともなく驕ることもなく真面目に打ち込んでいく。そうして、彼等は一歩一歩成長していくのである。



 クラスメイト達が日々成長している時、ショウは未だに目覚めないでいた。マーニはショウが眠るカプセルを見詰め、時折モニタールームで世界の情報を集めている。



 情報といっても、サイファが宣言した通り現在は概ね平和である。だが、世界が滅亡すると知って犯罪を犯す悪党が出たりしている。窃盗や暴行ならまだしも強姦や放火、殺人などの重罪を犯す者までいる始末だ。



 犯罪者の中には国を守るはずの騎士や兵士なども含まれている。人間とはこうも脆く醜い生き物だと改めて思う。



 だけど、それでも懸命に生きようと足掻く者達がいる。だからこそ、人は強く美しく尊い生き物なのだとマーニは実感する。



「どうしたものですかね……」



 一人呟くマーニはそのままモニターの映像を切り替えていく。ショウが目覚めるまでは特にやることはなく、淡々と時間だけが過ぎていくのであった。



 それから、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。既にサイファが宣言した一月という時間は残り僅かなっている。マーニは当の昔に完治したはずなのに目覚めないショウを見詰めて懇願する。



「お願いです。どうか目覚めてください。もう、時間がありません」



 残り二十四時間を切っている。サイファがどのようにして世界を滅亡させるのかはわからないが、残された時間はあまりにも少ない。異世界の勇者達がどこまで戦えるかが全ての鍵を握っている。



 その頃、異世界の勇者であるクラスメイト達は来るべき時の為に最後の休暇を満喫していた。本当は最後の最後までリュウホウ師匠たちに稽古をつけてもらう様に頭を下げたのだが断られてしまった。



 理由は決戦の時に肝心の体力がないといけないからだと言う。リュウホウたちが間違った事を言っているわけでもないので、言われた通りに休暇を取っている。



「いよいよ明日なのか……」


「そうね……なんだか実感ないわね」


「だな。ここまで色々とあったけど、明日世界が滅ぶなんて信じられないな」


「それな。あのサイファとかいう野郎が嘘言ってるように見えてきたわ」


「でも、一ヶ月前に思い知ったでしょ。嘘じゃないって」


「ああ。俺らがどうにかしなきゃなんねーんだよな」




 語り合うクラスメイト達は明日の決戦に備えて早めに就寝を取ることにした。敵がどう動くかは分からないが出来る限りの事はして来たつもりだと全員がはっきりと自覚している。



「タカシ様、寝られないので?」


「ああ。寝付けなくてな……」


「気分が優れないのですか?」


「いや……情けないことに怯えてるんだ。明日、死ぬんじゃないかって」


「タカシ様……」


「はは、今までこんなことなかったのに――」



 中々寝付けないタカシはエレノアに心境を話していたら、突然柔らかいものに頭を包まれる。



「大丈夫です。きっと大丈夫です。タカシ様はお強いですから死にません。私が保証します」


「でも、もし――」



 タカシが弱音を吐きかけた時、エレノアがさらに力を込めてタカシを胸に抱き寄せる。



「私の知っているタカシ様は負けません。とっても強いんです。だから、きっと今回も私を守ってくれるんですよね?」


「エレノア……」



 とくんとくんとエレノアの鼓動を聞きながら、タカシは覚悟を決める。この人だけは絶対に何があっても守り抜こうと。だから、彼女の前ではもう二度と情けない姿を見せないと。



「ああ。必ず俺がお前を守ってみせる。だから、エレノア。見ててくれ」


「はい、タカシさま」



 その日二人は一緒のベットで眠る。明日も明後日も彼女といるために。

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとう御座います

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