稽古二日目
稽古二日目は朝からタカシがいじめっ子三人を痛めつけていた。昨日と同じように見守るクラスメイト達にタカシは三人を半殺しにしながらも指示を出した。
「一先ずお前らの実力が知りたい。この後、一対一で模擬戦をするから準備しておけ」
意外な発言にクラスメイト達は驚いたが、ちゃんと稽古を付けてくれるのだと一安心する。しかし、よくよく考えてみると三人の有様を見て、やっぱり今からでも断りたくなってきたクラスメイト達であった。
三人組が再起不能になると、すかさず清水沙羅がスキルで全回復させる。タカシも今日は真面目に稽古を付けるつもりで先程指示を出したのでクラスメイト達の前に出る。
「とりあえずスキルは使用禁止だ。体術と魔法のみとする。多少怪我をしても清水のスキルで治るのは見ての通りだ。だから、殺す気でかかって来い」
殺す気で来いと言われても急には動けない。誰が最初に行くのかとクラスメイト達は周囲の顔を見るばかりで誰も行こうとしない。
見かねてタカシは適当な奴を指名しようとしたら、挙手して名乗り上げる者が現れる。
「俺がやるよ」
「桐谷か。いいぜ。前に出て来い」
「ああ」
自ら名乗りあげた桐谷を見て、思わず拭きだして笑いそうになったがなんとか持ち堪えるタカシは桐谷と向かい合う。
「行くよ!」
「来い!」
桐谷が声を掛けて床を踏みつけてタカシへと迫る。タカシはその速度に多少驚くことになったが、すぐに冷静になり桐谷が突き出してきた拳を避けると顔面に容赦なく拳を叩き込んだ。
「大くんっ!」
「大輝さんっ!」
「大輝っ!」
「外野は黙って見てろ。手出しはするなよ」
飛び出してきた三人に釘を刺すタカシは拳をまともに受けて少し離れた桐谷を睨み付ける。
「どうした! まだ始まったばかりだぞ!」
「わ、分かってる!」
桐谷は吹き出た鼻血を拭いながら、タカシへと魔法を放つ。タカシは飛んできた魔法を相殺して桐谷に近付き拳を振り抜く。だが、桐谷は拳を防ぎ反撃とばかりに拳を振るうが、タカシに拳を受け流されて体勢を崩したところを膝蹴りで顎を打ち上げられる。
そして、桐谷は無防備になった腹部に強烈な連打を浴びる。さらに、止めに回し蹴りを受けて部屋の壁に激突する。
「かっはっ……」
壁に激突した桐谷は動かなくなる。気絶した桐谷から目をそらして、タカシは次の相手を呼ぶ。しかし、桐谷とタカシの模擬戦を見てクラスメイト達は驚きと恐怖に萎縮してしまう。
タカシはそんな様子のクラスメイト達に溜息をつき、指名しなければ出てこないと思い声に出そうとしたら一人前に出てくる。
「委員長だったな」
「ええ、覚えててくれたのね」
「ふん。俺は女だからと言って容赦はしないぞ?」
「戦場に出れば男も女も子供も老人も関係ないわ。覚悟の上で私はここに立ってるの」
「はっ! 勇ましいな。嫌いじゃないぜ」
「ありがとう。それじゃあ、始めてくれる?」
「泣き喚くなよ!」
タカシは容赦なく魔法を打ち込んだ。委員長と呼ばれた女性はタカシの魔法を相殺して防ぎ、前に出た。
「攻めて来るか!」
「殺す気でやればいいんでしょ! だったら下がってられないじゃない!」
「はははっ! 桐谷よりも骨がありそうだな、委員長!」
「私の名前は天宝寺優衣よ! 委員長でもいけど、気軽に優衣ちゃんと呼んでもいいのよ!」
「戦いの最中にそんだけ喋れるならまだいけるな!」
本当に女性かと言うくらい苛烈に攻める優衣。意外にもタカシは苦戦を強いられ、防御に徹している。
「くっ! 元の世界で格闘技でもならってたのか!?」
「ご名答! ダイエットでキックボクシングをちょっとね!」
「ちょっとってレベルかよ!」
優衣は勝負を決めようと攻撃の速度を跳ね上げる。
「マジかよっ!」
これ以上は防ぎきれないと判断したタカシは優衣から離れる。優衣は優勢の今が好機と見てタカシの懐へと肉薄する。
「もらった!」
優衣の渾身の一撃が決まる。タカシに直撃したと確信した瞬間、タカシの姿がぶれる。
「えっ!?」
「悪いがそう簡単にはやられねえよ!」
「いつのまに後ろにっ!? きゃあっ!」
タカシは優衣の背後へと回り込んでおり、手加減など一切せずに優衣を叩き伏せた。だが、意外にもタカシは桐谷の時と違い、優衣へと手を差し伸べる。
「侮っていた。まさかここまでやるとは思ってなかったよ、委員長」
「いたた……意外にやるもんでしょ?」
「ああ。これなら少しは期待できるかもしれんな」
「ええ。必ず山本くんの為にも……」
他のクラスメイトたちは二人のやり取りを見て、タカシは意外と優しいところがあると見直して自ら進んでタカシとの模擬戦を望んだ。
全員と戦い終えたタカシは残りの時間でどこまで鍛え上げれるかと大いに悩む事になる。しかも、人数が38人もいる為自分一人では限界があると判断して他の者を呼ぶことを考えた。
不定期更新ですがよろしくお願いします
ここまでお読み頂きありがとう御座います
近いうちにクラスメイトの名前一覧を出します




