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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
最終章 彼の願いは

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619/684

稽古初日

大宮→大田

河内→多賀野 

修正しました。

「断る」


「何故だ!?」


「奴らが嫌いだからだ。他に理由がいるか?」


「今は世界の危機だ。個人の感情は――」


「黙れ。それ以上喋るな。殺したくなる」


「なっ!?」


「用件は済んだな? それじゃ俺は行かせて貰うぞ」



 ナイザーが待ってくれという暇もなく、タカシは足早に過ぎ去っていく。タカシはエレノアの元へと戻り愚痴を零す。



「ちっ。なんで俺があいつらの稽古をしてやらねばならんのだ。他の奴に頼めばいいのに」


「断ったのですか?」


「ああ。胸糞悪い奴の顔も見ないといけないからな」


「でも、丁度いい機会じゃないのですか?」


「なんでだ?」


「いえ、稽古と言う名目であれば多少痛めつけても問題ないのではと思いまして」


「そうか……確かにそうだ!」


「でも、殺しは駄目ですよ?」


「半殺しなら許されるんじゃないか? 向こうには完全回復持ちの奴がいるんだし」


「でしたら、受けてもよろしいのでは?」


「しかし、一度断った手前、今更受けるってのも怪しくないか?」


「それでしたら、私も共に行きますよ。そうすれば、向こうは私に説得されたのだと勘違いすると思います」


「ふむ。その手で行くか」



 結果タカシはエレノアを引き連れてナイザーの元へと戻り、勇者の稽古を快諾する事にしたのだ。



 ナイザーは最初断ったのに、突然の心変わりに怪しんだが後ろにいたエレノアを見て勘違いをした。彼も尻に敷かれているのだと。やはり、真に強いのは女なのだとナイザーはしみじみ思った。



 ナイザーに案内されるがままに到着したのは勇者達が待っていた部屋だ。全員、動きやすい服装でいつでも動ける準備をしていた。タカシはそんな勇者達を見て口の端を上げてニヤリと笑う。



 どこぞの悪役みたいな顔をするタカシに勇者達は背筋を振るわせる。



「こちらの――」


「初めまして。勇者の皆さん。俺の名前はタカシと言います。どうぞ、よろしく」



 ナイザーが紹介しようとしていたのにタカシは遮って自己紹介をする。勇者達はタカシという名前を聞いてそれぞれの反応を示す。



 動揺する者や戸惑う者などといった具合で勇者達はざわめく。



「もしかして、福田か?」


「ナイザー。ここからは俺一人で充分だ。もう帰って良いぞ」


「いや、しかし流石に一人でこの人数は厳しいだろう」


「問題ない。それにエレノアもついている」



 そう言われたナイザーは後方に控えているエレノアに目を向けるとエレノアが優雅に微笑んで頭を下げたので言われた通り退散した。



「さっきの質問だが俺はお前達の想像している福田隆史で間違いない」



 断言するタカシに数名のクラスメイト達が戦慄する。今すぐにここから立ち去りたいが恐らく逃げ出してもすぐに捕まってしまうと悟った数名はがたがたと震えながら時が経つのを待つ。



「ほ、本当に福田くんなの? その見た目が全然違うから信じられないんだけど……」


「これでどうだ」



 タカシが差し出したのはステータスカード。つまるところ身分証明書である。それを見たクラスメイトは名前の欄にはっきりと福田隆史と記入されているのを確認した。



「さて自己紹介も済んだことだし、早速稽古をつけてやろうか」



 まるで悪魔のように笑うタカシに恐怖する一同は動けなくなってしまうが、その中から飛び出す三つの影をタカシは見逃さない。



「逃がすと思ってんのか! 大田おおた多賀野たがも野上のがみ!!!」



 逃げ出した三人は元の世界でタカシをいじめていた者達だ。名前を呼ばれた三人は止まることなく逃げ出そうとしたが、突然身体が重くなり呆気なくタカシに捕まってしまう。



「た、頼む。殺さないで……」


「殺しはしねえよ。ただ、ちょーっと痛い目見るだけだ」


『ヒイイイイイ!!!』



 三人にはタカシが悪魔よりも恐ろしく見えて、三日月状に歪んだ口が一層恐怖を駆り立てた。



 こうして、タカシの復讐は始まる。いじめていた三人はこの日、阿鼻叫喚の地獄に堕ちることになる。



「自業自得だけど……」


「殺してないだけいいんじゃないか……?」



 取り残されたクラスメイトはただただ見守るだけであった。



「おらおら!!! そんなんじゃこの先、生き残れねえぞ!!!」


「もうゆるじでぐれぇぇぇえええ!」


「じぬうううううう!!」


「だずげでぇぇぇええええ!!」



 半殺しにされては回復魔法で癒され、間違えて引きちぎってしまった腕や足は清水沙羅の完全回復で再生してもらい、稽古と言う名の仕返しが続くのである。



 因果応報とはまさにこのことである。やり返されても文句は言えないし、誰も助けてはくれない。タカシをいじめていた三人はこの日、身を持って理解した。いじめは良くない、と。



 結局、最初の一日はタカシがいじめっ子を徹底的に稽古を付けるだけで終わり、他の者達はもう一人か二人ほど稽古を付けてくれる人が必要だと感じた。

不定期更新ですがよろしくおねがいします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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