独り
「まず最初に行うのは情報収集ですね。世界がどうなっているかを確認しなければなりません」
「それなんだけど、クラスメイトが言うには黒いコマみたいなのが人を消してるらしい」
「それだけでは不十分ですね。もう少し情報が欲しいですのでこれから貴方には世界各地へと赴き情報を集めてきてもらいます」
「わかった。まあ、俺にはそれくらいしか出来ないからな」
「では、早速行動に移りましょう」
というやり取りを二週間前ほどにしたことをぼんやりと思い出す。今俺は黒いコマ、誰が名前をつけたかわからないがブラックリミナーレを殲滅している。
はっきりといってブラックリミナーレはそこら辺の魔物よりも弱い。唯一つ厄介な点は恐れを知らないこと。だから、無謀な特攻を繰り返してくる。しかも、数が多い。
一度、数千体ものブラックリミナーレと戦ったが殲滅するまで一体も逃亡しなかった。おまけにこの世界のものなら消し去る光線で衣服を消されたりしてパンツ一枚で戦う羽目になったりと色々厄介な敵である。
それだけでなく俺は度々この世界の住人とも戦った。正確に言えば戦いといよりも防衛といった方が正しいかもしれない。ブラックリミナーレが出現した場所に向かうと戦闘中だったりして、本当なら共闘するはずなのに敵対されて一人で二つの勢力と戦うことになったりする。
この二週間で俺は既に世界最悪の魔王になってたりした。しかも、俺と一緒に召喚されたクラスメイトたちも誤解が解けないままでいるから、遭遇するたびに攻撃される。とは言っても何人かは俺がブラックリミナーレを倒すところを見て疑問を抱いてくれている。
しかし、解決にはなっていない。俺が今もこうしてブラックリミナーレを破壊しているが、それ以上の速度で人々が消えている。
だから、世界中の人間、亜人、魔族は手を組んだ世界連合は俺を討伐すると宣言した。俺という脅威をこの世界から取り除く為に。
「ふう……マーニ。周囲の確認を頼む」
「かしこまりました」
この二週間でマーニのことを呼び捨てになっていた。それから、アシストのレベルが上がっておりブラックリミナーレの出現場所の予測や出現位置などの特定が出来るようになっていた。
そのおかげで被害が出ないうちに俺が殲滅したり出来るが、複数の場所に現れたりすると間に合わなかったりもする。ついでに言うと瞬間移動で現れるから、戦闘中だと余計に怪しまれたりもした。
「確認終わりました。周囲にブラックリミナーレは存在しません。帰還なさいますか?」
「頼む」
「では、転送を開始します」
目を閉じてあけると、そこは既に施設の中だ。すぐ近くにマーニが待機しており、目を合わせるとペコリとお辞儀をしてくれる。
「ご苦労様でした」
「そんなに疲れてないさ。それよりも次だ」
「まずは休息を取られた方がよろしいかと。連続での戦闘時間が既に六十時間を越えています」
「立ち止まるわけにはいかない。俺がやらなきゃいけないんだから」
「ですがこれ以上はお体に障ります。申し訳ありませんがサポート役として無理矢理にでも休息を取って頂きます」
「う……わかった。しばらく、寝るから何かあったら起こしてくれ」
「分かってくれればいいのです。それではゆっくりとお休みを」
このようにマーニに無理矢理休息をとらされるのはもう何度もやった。飲まず食わずで戦い続けていたら一度マーニに強制的に眠らされて以降はきちんと休息を取るようにした。
ちなみに狸寝入りはすぐにバレたりした。マーニにこっぴどく怒られたのはそれが初めてであったが、少しだけ嬉しくもあった。今や、この世界に味方はマーニだけなのだから。
しばらくの間、俺は眠りにつく。疲れた身体を癒し、失った魔力を回復させる為に。
「起きて下さい」
「んぅ……なにかあったか?」
「大規模なぶつかり合いがおこっています。場所はイルミゾート、ブラックリミナーレ数万に対して連合側は数千に加えて異世界の勇者達です」
「すぐに向かう! 転送始めてくれ!!」
「かしこまりました。くれぐれも無茶はしないでください」
「努力する。最悪、マーニの判断で俺を強制回収してくれ」
「わかりました……」
複雑そうな顔をしながら俺を転送してくれるマーニに見送られながら、俺は戦場のど真ん中に出る。
突然、姿を現した俺を見て世界連合は動きが止まる。ブラックリミナーレはそんな事お構い無しに攻撃を続ける。そして、俺はブラックリミナーレを殲滅する為に動き出す。
「はああっ!!!」
一気に数百ものブラックリミナーレを破壊して、戦場を駆け回る。動きを止めていた世界連合はブラックリミナーレを破壊しつつ俺へと攻撃を開始してくる。俺はブラックリミナーレと世界連合の攻撃を回避しつつ敵を殲滅していく。
くそ~!
辛いなあ!
でも、やるしかねえよなぁ!!!
不定期更新ですがよろしくお願いします
ここまでお読み頂きありがとう御座います




