疑い
「よし! オルランドに到着!」
俺は急いでマーニにオルランドの王都近くに転送してもらう。現在、世界がどうなっているか分からない為、知り合いに会わないように王都へとこっそり潜入する。
建物の上を疾走して城へと入り込む。クラスメイト達がどこにいるかわからないのでしらみつぶしに探していく。巡回している兵士達に気をつけながら城を歩き回る。
どこにもいないから、近くの兵士にでも尋ねてみようかと思ったが敵だと言われて仲間を呼ばれるといけないので諦めて探すことにした。
しかし、どれだけ探しても城にはいなかったので街を探す事になる。さすがに一人くらいは見つかるだろうと思っていたら早速見つけた。
「おーい!」
「ん?」
確か名前は……
なんだっけ?
「お前は……山本!」
「ああ。うん。よかった。ちょうどクラスメイト達を探してたんだよ。すぐに見つかってよかった」
「よくも俺の前に現れたな! お前自分のしたことわかってんのか!」
「は? 一体何の事だ?」
「惚けんじゃねえ!!! お前がみんなを消してるんだろ!」
「へ? なんで俺が? 意味わかんないだけど?」
「あくまでしらを切るつもりか……」
「いや、本当に何のことだかわからないんだけど……」
「……本当にわかってないのか?」
「ああ。なにが起こってるんだ?」
「ここじゃ説明しにくい。ついて来い」
言われて後を着いていく。人通りのない裏道に入り、クラスメイトが今何が起こっているのかを説明してくれる。
「今、世界中で人々が消える現象が起こってるんだ。しかも、ただ消えるんじゃなくて記憶からも消えて最初から存在してなかった事になってるんだよ。そんでその原因が異世界から来た魔王ことお前だってことになってる」
「はあ!? いやいや、俺ずっと戦ってたからね! そんなこと知らない――あっ」
「あ? あってなんだよ! 何か知ってるのか!?」
俺はこの世界のことについて説明した。この世界が元の世界の創作物の模倣である事や、世界が何度も滅んで繰り返されてる事の全てを。
「そんな話信じられるかよ……」
「でも、本当なんだ! 信じてくれ」
「……悪い。やっぱ無理だわ。むしろ、より一層お前が怪しい感じがする」
「なんでそうなるっ!」
「証明できるのかよ! なあ!」
「それは……出来ないけど――」
「なら、信じられるかよ! お前には言ってなかったけど、イルミゾートから送られてきた映像にはお前に似た黒髪の男が映ってたんだよ! この世界の人たちを消した黒いコマを作ってるところがな!」
「俺じゃない! 俺はそんな事出来ない!」
「じゃあ、お前のステータス見せろよ」
「ほら、見てくれ!」
俺は信じてもらう為に全ての情報を開示したステータスを見せた。だが、俺のステータスは文字化けしている箇所がいくつかあり、説明のしようがなかった。
「なんだよ、これ。文字化けしてるじゃねえか」
「こ、これはその違うんだ。色々あって……」
「決まりだ。やっぱり、お前が原因なんだな」
「ち、ちが――」
違うと最後まで言い切る事が出来なかった。思い切り頬を殴られてしまい壁に激突する。クラスメイトはさらに攻め立てて来るが俺はどうしようもなく逃げ出してしまう。
「待て!!! この!!!」
背中に魔法が迫る。魔法を避けて、大通りに出てしまう。ここで騒ぎになるのは不味いと判断して建物の上へと避難する。屋根から屋根へと飛び移り逃げていると先程のクラスメイトが追いかけてくる。
くそくそくそ!!!
どうすりゃいいんだよ!
攻撃すれば認めてしまうようなものだ。それでなくとも、こうして逃げている時点で言い訳のしようがない。どれだけ、弁明しようとも向こうは聞いてくれそうにない。
「聞こえるか。マーニさん」
「はい。聞こえております。転送でしょうか?」
「頼む」
「かしこまりました」
数秒後俺はマーニのいる施設に戻ったが気分は最悪である。
「何かあったんですね」
「ああ。いつのまにか俺が悪役さ」
「他の方々は?」
「会ってないけど、多分敵対する事になると思う」
「ということはお一人で世界と戦うつもりですか……」
「先輩達と違って一人ぼっちなのは辛いけど、今までしてきたことと変わらないさ」
「私もいますよ」
「うん。そうだな。とにかくこれから忙しくなると思う。どういう風に世界が滅ぶのかは分からないけど、出来るだけのことはしよう」
マーニがいるだけでも心強い。それにここの施設を上手く活用すれば移動も早いし、いざという時の逃げ場にもなる。
さて、まずは何から始めるか。
不定期更新ですがよろしくお願いします
ここまでお読み頂きありがとうございます




