決着、ツヴァイ
「させぬ……っ！」
この声は！？
「エルザか！？」
「ぐっ……妾の身体でショウを殺させたりなど絶対にさせぬぞ！」
「驚いたわ〜。完全に身体の支配権は奪ったつもりだったのに。まさか、まだ抵抗出来るなんて」
エルザとツヴァイが交互に喋っている。身体を乗っ取られたらよくある展開みたいになっている。まさか、この目で見ることになるとは思わなかった。
しかし、エルザのおかげで希望が出てきた。もしかしたらツヴァイだけを倒せるかもしれない。
「エルザ！ ツヴァイを身体から追い出せないのか！？」
「ぬぅ……それは無理じゃ。なんとか動きを止めるのが精一杯で妾にはこれ以上何も出来ぬ……すまぬ」
「腹立たしいわね。動きを止められるだけでも十分邪魔なんだけど」
「くそっ。なんとかツヴァイだけでも倒せたら……」
「ショウッ！ 妾に構わずこやつごと殺せ！」
「あなた、馬鹿じゃないの！？ 自分ごと殺せって頭おかしいわよ！ それに仮に彼がこの身体を剣で突き刺しても死ぬのはあなただけよ」
「ふん。ショウならば妾ごと貴様を殺せる術があるはずじゃ！」
そんなものは無い。
「ショウ。妾はお主の手でならば死んでも良い。元よりお主に救われた命じゃ。お主の為に使いたい。それにこれ以上お主を傷付けるのは嫌じゃ……
妾はお主が好きじゃ。愛しておる。どうして、愛するお主を傷付けれようか。例え、妾ではなくとも妾の手でお主を傷付けた事がどれほど自身を憎んだことか。妾が油断していなければ身体を乗っ取られずに済んだのに……
だから、ショウ。妾の為にも、そしてお主の目的の為にもここで妾ごとツヴァイを殺すのじゃ」
「ちょっと何ペラペラと喋ってるの〜。言っておくけど、どれだけ愛を囁いても彼はあなたを殺さないわ〜。だって彼の事は私達がよーく知ってるもの」
ツヴァイの言う通りだ。どれだけ、エルザに殺せと叫ばれても俺はエルザを殺せない。殺したくない。俺の事を好きと愛してると言ってくれる女をどうして殺せるのだろうか。
俺の目的は確かにツヴァイを殺す事だが俺の最終的な目的は可愛い彼女を作ってイチャラブする事だ。それにもう二度と俺は見捨てたりしない。
「頼む、ショウ……」
「エルザ。悪い……ツヴァイの言う通りだ。俺はお前を殺さない、殺せない」
「なぜじゃっ！！！ 妾を殺さないとお主が死ぬ事になるんじゃぞ！」
「……」
悔しさに歯軋りをする。エルザがいつまでもツヴァイを抑えれるかは分からない。確かにこの機会を逃せばエルザは身体の支配権を奪われ、ツヴァイにより俺は殺されてしまうかもしれない。だけど、それでも俺はどうしてもエルザを殺せない。
殺したくない！
死んで欲しくない！
どうすればいい！！！
「うふふ〜。葛藤してるようね〜」
「ぐっぐく……」
「エルザ！？」
「完全に身体の支配権を取り戻しつつあるわ〜。あとは時間の問題ね〜」
「ぐぅ……お願いじゃ、ショウ。愛するお主を妾の手で殺したくない！ 死んで欲しくないのじゃ！ だから、妾を、妾を殺してでも止めてくれ！」
「〜ッ！！！」
エルザの泣き叫ぶような願いが俺の覚悟を決意を揺さぶる。ここまで女に言わせておいて男の俺が何も答えないのは駄目じゃないのかと思うが、どうしても俺の覚悟が決まらない。
何か無いのか！！！
なにか打つ手は！！！
何かあるはずだろう！
諦めるなっ……
考えろ……
以前のようにチートがあればツヴァイだけを斬ることは出来ただろう。過去にジンの体内にある爆弾だけを取り除いたような事が出来ればいいのだがあの時は武具創造というチートがあったからこそ出来た芸当だ。とても今の俺では出来そうにない。
いいや！！！
なんで出来ないと決め付ける！！
この世界は俺達がいた世界の漫画やゲームやアニメを模倣した世界なんだろうが！！！
そうだ、そうだよ！！！
出来ないはずがない！！！
今の俺なら……
「魔法はイメージだ」
「ん？ ついに壊れちゃったのかしら〜？」
ツヴァイが何やら言っているようだが無視だ。今はただ一つの事をイメージするんだ。集中してエルザの中にいるツヴァイという存在だけを斬る魔法を創り上げるんだ。
そうすればエルザを救える！！！
不可能では無い。一度やった事があるのだ。ならば、その時のことを思い出してもう一度再現すればいいだけの話だ。集中しろ。研ぎ澄ませ。エルザの中にいるツヴァイだけを斬るイメージを。
「何よ、ソレは！」
目を瞑り集中している俺には何も聞こえない。余計なことは考えないように視覚も聴覚も触覚も嗅覚も遮断してイメージを形にするんだ。より鮮明に、より正確に、より精密に。
目を瞑っていた俺の視界に光の剣が現れる。目を見開き、握り締めている光の剣を見て確信する。
「ツヴァイ。これで決着だ」
「嘘よ嘘よ嘘よ！！！ そんなデタラメ許されるはずない！！ そんな反則まがいな力！」
「消えろ、ツヴァイッ！！！」
「ふざけるなぁ！！！ 管理者代理―終末の使徒―ツヴァイの名に――あッ……ぁぁ！！」
ツヴァイが最後に抵抗しようとしていたが、それよりも早く俺の振るった剣がツヴァイを切り捨てた。そして、エルザの中からツヴァイは消えていなくなった。
「ようやく終わったかぁ……」
思わず地面に座り込む。思い返せば、天界での騒動から真竜との激闘と長い間ツヴァイに引っ掻き回された。しかし、それも今終わった。
疲れたなぁ〜。
不定期更新ですがよろしくお願いします
ここまでお読み頂きありがとうございます
