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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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抵抗

 後方へと退却を始めた俺は、その途中にエルザと合流する。



「エルザ!」


「ショウ! これは一体どういう事じゃ! 何がどうなっておる!?」


「詳しく説明してる暇はねえ! 兎に角、俺に着いて来い!」



 慌てて詰め寄ってくるエルザを俺は担ぎ上げて逃げ行く人々と同じ方向へ走る。



「着いてこいと言う割には、何故担ぎ上げるのじゃ!?」


「そっちの方が早いからだ! いいか、よく聞けよ。今、街はドラゴンの群れに襲われてる。上を見てみろ」


「なっ!?」



 俺に言われてエルザは上空を見上げる。その光景に驚きの声を上げた。エルザとしては信じられないのだろう。ドラゴンの群れが無闇矢鱈と街を襲う事が。



「何かの間違いじゃ……皆が街を……アレは!?」


「どうした!?」


「そんな……父上……」


「ちっ! 竜王までいるのか!」



 肩越しに確認してみるが、俺にはどれが竜王か分からない。しかし、エルザが言っているのだから間違いなく竜王がいるのだろう。ならば、俺が出るべきなのだが今の俺ではむしろ足でまといだ。



 魔力さえ回復すれば!!


 回復薬もチート装備もない俺には自然回復しかない。


 だけど、回復しても数時間じゃ微々たるものだ。


 それに、竜達相手には長くは持たないだろう。



「あ……ぁぁ……母上、姉上、兄上達まで……」


「全員集合かよ。エルザ、はっきり言ってこの国の兵士達だとどれくらい持つ!?」


「良くても数分程度じゃ……」


「はあ!? 一時間ももたないのか!?」


「無理に決まっておろう! 竜を一匹相手取るだけでも人間達は数百人規模の兵士を連れて行くのに! アレだけの数の竜に数分持つだけでも十分と言えよう!」


「くそ!!! これじゃ、バッドエンド一直線じゃねえか!!!」



 盛大に愚痴を吐きながらエルザを担いだまま、街の中を駆けて行く。時折、爆音が背後から聞こえてくる。助けに向かいたいが、助けるだけの力がない。



 歯痒いものだな!!!


 くそっ!!!



「ショウ! 何故逃げておる!」


「……魔力がほとんど無いんだ」


「なにっ!? 何故じゃ!? お主の魔力量は相当なものじゃろう。何があったのじゃ!?」


「お前が寝てる間に噴火を食い止めたり、竜達の一斉咆哮を受け止めてたんだよ!」


「なっ! そんなことが……しかし、それなら納得じゃ。だが、どうするのじゃ? このまま、逃げていてもその内、お主がやられるぞ」


「わかってる。今は逃げ回って、兵士達が魔力回復薬を届けてくれるまで耐えるしかねえ」


「間に合うのか?」


「お前から聞いた話じゃ間に合わんだろうよ。このまま竜達に攻め滅ぼされてお終いだ」


「じゃあ、どうするのじゃ!」


「どうするもこうするもねえよ。魔力回復薬が間に合わなくても、俺はやるだけだ。最後の最後まで抵抗してやる」


「ショウ……お主は……」


「エルザ。もしもの場合はお前だけでも逃げろ」


「わ、妾も戦うぞ! お主一人だけ戦わせは――」


「足でまといだ。お前じゃ戦力にもならん」


「なっ……」


「そういう訳だから、お前はここからは一人で逃げろ」



 俺はそう言うとエルザを降ろす。エルザは特に文句を言うことも無く、その場に立ち尽くしている。言うことは言ったので、俺はUターンして兵士達の方へと向かう。



 残っている魔力量だと複数の竜ならば難なく倒せるだろう。しかし、竜王相手だと恐らく厳しいものになる。しかも、竜王だけでなく竜王の娘や息子を相手にすると考えれば無理であろう。



 だけど、やるしかない。



 気で身体強化を施して建物の屋根に飛び上がり、一気に竜達目掛けて駆け抜けて行く。竜達の前に辿り着くと建物の屋根を突き抜ける程の踏み込みで飛び上がると一匹の竜をかかと落としで地面に叩き落とした。



 俺が竜を叩き落とした事で他の竜達が俺に釘付けとなる。先程まで兵士達を蹂躙していた竜達が俺目がけて一斉に突撃してくる。手間が省けて丁度いい。



「おおおおらぁああああああ!!!」



 気と魔力を合成させた身体強化を施し、突撃してきた竜達全てを叩き落とす。もう、街はめちゃくちゃだが許してもらいたい。竜達を倒すのに精一杯で他のことに気を使う余裕などないのだ。



「も、もう少しこちらにも配慮してくれないか!」


「ん? あんたはさっきの! 悪いが倒すのに精一杯で他のことに配慮出来る余裕なんて無いんだ。それよりも、魔力回復薬は?」


「直に届く! しかし、それまで持つか!?」


「はっきり言って無理だ。だって、見てみろよ。竜王とその家族がこっちを睨み付けてるんだからな」


「くっ……まさか、竜王までもが……」


「全力を出す。だけど、正直勝てる見込みは無い。今の魔力量じゃ数分と持たねえ」


「すまない……私達が弱いばかりに君一人に任せてしまって」


「気にしてないさ。それに、どの道俺が相手をしなきゃならんからな」



 さあ……


 いっちょやりますかぁ!!!



 今出来る事を全力でやるのみ。気と魔力を合成させた身体強化に加えて全属性の魔力化を施す。天界での一戦から少しだけレベルアップした俺は全属性の魔力化を危なげなく出来るようになった。



 さて、竜王に通用するといいが…… 

ここまでお読み頂きありがとうございます

不定期更新ですがよろしくお願いします

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