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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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竜王

 エルザと共に山道を進んでいくと、集落のようなものが見えてくる。元の世界で見た事のあるテントのようなものが住居らしく人が出入りしていた。



 ここは竜が住んでるんじゃないのか?


 なんで人が?



「ここが妾の故郷じゃ」


「そうか。ここが竜達が住む……てか、なんで人がいるんだ?」


「む? ああ、アレは人化の術で人間に変身してるだけじゃ」


「あー、はいはい……」



 はい、出ましたー。


 人化の術。


 元の世界でも漫画なんかにありましたわ〜。



 「アレはエルザ様……?」


 「えっ、エルザ様?」


 「おいおい、嘘だろ?」


 「いや、エルザ様だ……」



 続々と人が集まってきた。いつの間にか人集りが出来ており、その中心に自分達がいた。このままだと先に進めそうにないなと思っていたら、突然大きな声が響き渡る。



 「何をしている! これはなんの騒ぎなのだ!」



 聞こえてきたのは野太い男の声だ。俺は特になんとも思わなかったが、横にいたエルザはビクリと身体を震わせており周囲にいた人達も驚いて声のした方向に振り返っている。



 もしかして、お偉いさんが現れたのかな?


 それにエルザの反応を見る限りじゃ、竜王あたりか?



 「通してもらうぞ」



 人混みを掻き分けて俺達の前に現れたのは明らかに周辺の者達とは違う雰囲気を纏った初老の男性だ。髭を生やした厳つい顔をしており、その鋭い瞳は眼光だけで他者を黙らせそうなほどだ。



 あぁ……この人だ。


 この人が竜王だ。



 「ち、父上……」


 「エルザ……か? 生きていたのか……」


 「その……妾は……」


 「……話は帰ってからだ。着いてこい」


 「……はい」



 竜王はエルザを見てホッとしていたが、すぐ様王としての威厳を取り戻して周囲の人達を家や職場に帰らせていた。俺はと言うと何も言われなかったのでエルザの後をついて行くことにした。



 竜王が先導して大きなテントに入る。俺とエルザはそれに続いて中に入ると、竜王は座ると俺達にも座るよう促してきた。



 「座れ」


 「……」


 「まずはエルザ。お前の話を聞こう」


 「はい」



 エルザは事の顛末を全て話した。竜の儀を逃げ出した事、人間の罠に引っかかり捕まった事、そして俺にここまで連れて来てもらったこと。それら全てを竜王に正直に語ったのだ。



 「ふむ……そうか……」



 おっ?


 意外と優しいのか?



そう思った次の瞬間、竜王の目が見開き周囲を圧倒する程の威圧感が放たれた。



 「この馬鹿娘がぁっ!! 恥を知れっ!!! 貴様は誇り高き竜でありながら臆して戦わず逃げ出した挙句の果てに人間の罠に引っかかっただと!? よくもまあおめおめと顔を出せたものだな!」


 「ごめんなさい……」


 「謝れば済む話ではないわ! 貴様なんぞ娘でもなんでもない!! 今すぐにこの里から出て行け! 次に顔を見せようものなら貴様の首はこの竜王が噛みちぎってやる!」


 「そんな……せめて、母上や姉上や兄上達にも会ってから――」


 「貴様の言い分なぞ聞いておらんわ! 殺さないだけでもせめてもの慈悲としれ! 早々に消えよ!」


 「うっ……うぅ……」



 エルザは涙を拭いながら立ち上がるとテントから飛び出してしまった。そして、俺は一人竜王の前に取り残されてしまう。気まずい空気が流れる。俺もエルザについて行こうかとした時、竜王が話しかけて来る。



 「待たれい。ショウと言っていたな。少し、話がしたい」


 「えっ、いや、でも、俺はそのぉ〜」


 「ありがとう」


 「へっ?」


 「君が娘を救ってくれたのだろう?」


 「えっ、あっ、まあ、はい」


 「ならば、父親としてお礼を言うのが当たり前であろう?」


 「まあ、確かに。でも、さっきの態度は父親としては酷いんじゃないんです?」


 「ああ。そうだな……父親としては最低だったろう。だがな、私は父親である前に竜王なのだ。であれば王としての務めを果たさなければならない。君も娘から聞いているだろう、竜の儀についてを。エルザ以外にも逃げ出した者は過去にはいるんだよ。しかし、その者達は二度とこの里に帰ってくる事は無かった。それは何故だか分かるか?」


 「……まさか、さっきのエルザみたいに?」


 「正解だ。竜として認めず里から追い出したのだ」


 「でも、エルザは貴方の娘じゃ……」


 「娘だからと言って贔屓していれば不満が出るだろう。娘だからこそ厳しく当たらなければいけなかった……」


 「エルザは生きてる事を貴方に伝えたがってたんですよ。あれじゃあんまりにも……」


 「出来ることならば! よく無事に帰ってきたと抱き締めてやりたかった! だが、私の立場がそれを許さなかった……それだけの話だ」


 「そう……ですか」



 これ以上竜王と話していても意味は無いだろう。竜王にも曲げられないものがあるのだ。部外者である俺がこれ以上口にするのは良くない。



 「君に頼みがあるんだ……竜王としてでは無くエルザの父親として頼みたい。あの子が独り立ち出来るまで見てくれないか?」


 「えっ!? いや、それは」


 「私の見たところ君は恐らく私と同等の強さをもっている。そんな君だからこそ頼みたいんだ」


 「買い被り過ぎですよ。俺じゃあ」


 「それにエルザは君に懐いてるみたいだからな。申し分無いだろう」



 人の話聞けよ。


 なんで勝手に進めてんだ!

ここまでお読み頂きありがとうございます

不定期更新ですがよろしくお願いします

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