情報収集
「ここが王都か……」
「うむ。妾も何度か来た事がある。間違いなくここが王都じゃ!」
あの後、街を出た俺はエルザを故郷に連れて行く為本気を出して走った。抱えたエルザが呼吸出来なくなるという小さな問題が起こったが、僅かな時間で王都へと辿り着くことが出来たのだ。
今目の前には巨大な門がそびえ立っている。その門の向こう側からは煙が立ち上がっている。もしかしたら、鍛冶屋などが盛んなのだろうかと思いながら門の手前で検問している兵士達の元へと並ぶ。
時間が掛かると思っていたが、思いの外早くに自分の番が回ってきた。適当な質問を受けたあと、巨大な門の下にあった小さな門から王都へと入る。
遂に王都へと足を踏み入れた。王都の街並みは今まで見た王都と大した差は無かったが、一番目立つのは城が建っている大きな山だ。山の中腹辺りに城が建っているのだが、安全なのかと考えるが俺には関係ない事なのですぐに考えるのをやめた。
しかし、あちこちで煙が上がってるなぁ。
やっぱり、鍛冶屋かな?
まずは、見て回るか。
「エルザ、ちょっとその辺見て回らないか?」
そう言って振り返るとエルザはどこにもいなかった。
「エルザ!?」
うっそだろ、おい!!
マジかよ!
はぐれたのか!?
いやいや!!
一緒に入って来たんだからはぐれる訳が無い。
なら、答えは一つだ。
「逃げたか……」
恐らくだが王都まで来た事でエルザは安心したのだろう。そして、きっと王都から故郷までは近いのだろう。だから、エルザは俺の元から逃げ出した。そう思うと納得出来る。
ならば、エルザを追い掛ける事はせず俺自身の目的を果たす為に王都を見て回ろう。ツヴァイを探すという目的は王都を歩きながら情報を集めよう。何かしらの異変が起きていればツヴァイが絡んでるに違いないからな。
さてと……
まずは鍛冶屋だ!!!
うっひょおおお!!
煙が立ち上がっている方向に向かい、鍛冶屋を探す。やはり、男の子にとって刀剣の類はいつまで経っても憧れであるのだ。ましてや、今の俺は難なく扱えるのだから尚更である。
さてさて〜!
どんな剣があるのかな〜!
槍でもいいぞー!!!
最近は素手で戦うことばかりだからな!
久しぶりに剣を振るいたい!
しかし、煙が立ち上がっている場所に来たと言うのに鍛冶屋らしき建物は存在しない。それどころか、宿屋のような建物の方が多い。むしろ、宿場町だ。右も左も宿で人々が出入りしている。
そして、よくよく観察していると宿屋に出入りしている多くの人間が浴衣を着ていた。
「浴衣だと……じゃあ……まさか……」
導き出される答えは一つ。
「温泉だ!!!」
すぐ近くの宿に入り、受付の女性に話を聞くと王都には地下からお湯が湧き出すというのだ。とても有名らしく隣国からもVIPの方々が遠路はるばる温泉を求めに来るそうだ。
そりゃそうでしょうよ!!
俺だって来ますわ!!
受付の女性に詳しく教えて貰い、一番の温泉宿を目指す事にした。
よっしゃあ!!
温泉だぁっ!!!
はっ!!
違う、違う!!
ツヴァイを探すんだろうが!!
馬鹿か、俺は!
危うく目的を忘れるところであった。己の頬を叩いて気を取り直して道行く人々に何か変わったことが無いか質問をしていく。
しかし、特に何か変わったこともなくいつも通りだと言う。一向にツヴァイの情報が集まらない。一旦、休憩をしようと適当な場所を探していたら足湯を見つけたので足湯に足をつかせる。
はふぅ……
気持ちいいなぁ〜
ぼーっと上を見ていたら横に座った二人組みの客が気になる事を喋っていた。
「おい、聞いたか? 最近、地震が多いって話」
「ああ、聞いたぜ。なんでもここ最近は繰り返して起こってるんだろ?」
「噂じゃ火山が噴火するって話だぞ。そうなったら、ここもやばいな」
ふーん。
地震ね……
ツヴァイと関係してるか?
うーん……
ここ最近って話してたから恐らく間違いなさそうだ。
思わぬ所でツヴァイに関する情報が手に入ったので足湯から出るが、どこへ行けばいいのか分からず最初の場所に戻ってきてしまう。
「情報が手に入っても地震が頻繁に起こってるだけじゃあな……」
しかし、火山とか言っていたな?
じゃあ、火山に向かってみるか。
その辺を歩いてる人に火山の場所を聞くと、お城の方を指さして教えてくれた。なんでも、お城が建っている山は大昔に噴火した事のある火山だそうだ。
そんな場所に城建てるとかアホちゃう?
噴火したら終わりやん。
王様何考えてるん?
「その噴火とかしたらどうするんです?」
「ああ、噴火なら起こらないよ。まあ、そう言われてたんだけど最近は地震のせいで皆不安に思ってるがね」
「あー、そうなんですか」
なるほど。
噴火するはずのない山だと言われていたのに、ここ最近頻繁に起こる地震。
ツヴァイの狙いは火山を噴火させて王都を滅ぼす事か?
いや、アイツの能力ならもっとエグい事が出来るはず。
じゃあ、なんだ?
「おい、兄ちゃん。言っとくけど、あの山には竜達が住んでるから人は近付けねえぞ」
「えっ?」
「もしかして知らなかったのか?」
「えっ、あっ、まあ。その竜達が住むって話を詳しく聞かせてくれませんか?」
さらなる情報を得る為に俺は詳しく聞くことにした。
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