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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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領主の私兵

 俺は領主が来る前にエルザの元へと向かった。エルザは現在冒険者達が保護しているとのことで冒険者ギルドにいる。冒険者ギルドに行くと、エルザは冒険者達にチヤホヤされていた。



「あの野郎……呑気にしやがって」



 その光景に少々イラついてしまったが、とにかく領主が来る前にエルザへ聞いておかねばならないことがある。



「エルザ!」


「むっ!? ショウか! 妾に何か用か?」


「少し聞きたいんだが、お前が竜王の娘である証拠ってあるのか?」


「ないぞ」


「は? お前……よくそんなので竜王の娘だとか言えたな!」


「事実だからじゃ! だいたい、そんなもの必要なのか?」


「まあいい。じゃあ、お前が竜だという証拠はあるか?」


「それはあるぞ。じゃが、おいそれと見せる訳にはいかぬ」


「なんでだ?」


「そ、それは……恥ずかしいからじゃ……」


「はあ? 恥ずかしいって竜だという証拠を見せることがか?」


「う、うむ……」



 エルザは赤面してモジモジと身体を揺らせている。はっきり言えば、エルザの羞恥心なんてどうでもいい。今必要なのはエルザが竜王の娘だという証だ。しかし、エルザは持ってないというのだ。だが、竜である証拠は持っていると言う。



 ならば、さっさとその証拠とやらを見せてもらおう。エルザが恥ずかしがろうが知ったことではない。むしろ、エルザには丁度いい罰になる。元はと言えば、エルザが問題を起こしたのだから。



「その証拠とやらをさっさと見せろ」


「ダメじゃ! いくら、ショウの頼みと言えどもそれだけは聞けん!」


「悪いがお前に拒否権は無い。竜である証拠はどこにあるんだ?」


「お、教えるものか!」


「ならば、身体に聞くだけだ」


「なっ!? 何をする気じゃ!」


「ふっふっふ……」



 怪しい笑みを浮かべながら俺はエルザに一歩一歩と近づいて行く。ちなみに冒険者達はエルザを助けようとはしない。理由はよく分からんが、みんな俺に近付こうとしないのだ。



「おい、どうする?」

「いや、あのエルザちゃんが恐れる相手に近づけるか?」

「ああ……きっと奴はエルザちゃんよりも強いに違いねぇ……」

「助けてやりてえが……俺達じゃ無理だ」



 何かごちゃごちゃと言っているな。


 まあ、関係ない。



 後ずさりして逃げようとするエルザの肩を捕まえる。エルザは恐怖に顔を歪めて真っ青になっている。しかし、どうしてここまで怯えるのか。



 「なあ、エルザ。もしかして、竜である証拠は恥ずかしい場所にあるのか?」


 「……っっっ!!!」



 ビクリと肩を震わせるエルザ。どうやら、俺の予想は当たりだったらしい。



 「ふむ……どこにあるんだ?」


 「……」


 「教えないと……分かるな?」


 「……お」


 「お?」


 「お尻の上にある鱗じゃっ!!!」


 「お、おう……それはすまんかった。とりあえず、女性を呼んでくるから待ってろ」


 「うぅ〜……」



 エルザは大声で叫んだ後、顔を真っ赤にして俯いてしまった。申し訳ない事をしてしまったが、とりあえず竜である証拠がある事が判明したので良かった。



 俺はギルドの受付嬢に事情を説明してエルザの鱗を確認してもらう。エルザは受付嬢と共にギルドの奥へと消えて行く。しばらくすると二人が戻ってくる。エルザは顔を真っ赤したまま服の裾を握り締めている。



 「あの確認出来ました。彼女は竜で間違いありません」


 「うっうぅ〜……このような辱めをよくも……妾ほ絶対に忘れんぞ」


 「まっ、まあ、なんだ。許せ」



 涙目でエルザが睨んでくるが俺は気まずくて目を逸らしてしまう。



 「おい! 領主の所の兵士が来たぞ!」



 ある意味でナイスタイミングだ。俺はエルザを連れてギルドを出て行き、領主の私兵共に会いに行く。ギルドの外へ出ると徒党を組んだ領主の私兵らしき甲冑を纏った男達が待ち構えていた。



 「貴様は?」


 「ただの冒険者です」


 「ふむ。そうか。実は私達はある女の子を探しているんだが……君の子かね?」


 「俺の子ではないが恐らくお目当ての子で間違いない」


 「おい。連れてこい」


 「はっ!」



 目の前で話していた男が横にいた男に指示を出すと、別の男達を連れて来た。何故か顔が青く腫れてるのだが、間違いなくエルザにぶっ飛ばされた私兵だろう。その男はエルザを見ると嫌らしい笑みを浮かべてエルザを指差しながら叫んだ。



 「そうだ。こいつだ! このガキが俺に手を出てきたんだ!」


 「あぁ? 俺が聞いた話じゃ先に手を出そうとしたのはお前らだと聞いてるが?」


 「デタラメ言うんじゃねえ! 証拠はあんのか?」


 「無い。だが、お前も同じ事が言えるだろ」



 俺がそう言うと男の顔はますます歪み、まるで勝ち誇った顔をしている。こいつの自信はどこから来るものなのか。一つ見てみることにしよう。



 「証拠ならあるぜぇ……この街の住人が目撃してる。誰でもいいから街の住人を連れて来てやるよ」


 「目撃証言だけじゃ確かな情報とは言わんだろ」


 「いや、それは無い。目撃証言だろうとそれは立派な証拠になる」



 俺が話をしていたら最初に話をしていた私兵が口出しをしてきた。どうやら、奴の自信はここから来たようだ。領主の私兵であるこいつらに聞かれたら、住人共は何と答えるか予想が着く。



 なるほど。


 確かに勝ち誇れるわな。 

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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