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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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意外な絡まれ方

 今日の飯代も無くなってしまった俺達は、一先ず冒険者ギルドを目指す事にした。最優先事項は今日の宿代、飯代を確保する事。幸いな事に俺の冒険者ランクはAだから、すぐに稼ぐ事も出来る。



 早速、ギルドを見つけた俺はエルザと共に中へと入る。ギルドの中は賑やかで冒険者同士が仲良く話し合ってたり、食事をしていたり飲んだりとよく見る光景であった。



 エルザはキョロキョロしているが、時折俺と冒険者達を見比べていたりする。何か意味でもあるのだろうかと思ったが特に気にせず依頼を受けるために受付に向かう。



 テンプレ展開は起きる事なく受付に辿り着いてしまった。少し、期待していたのに残念だったが落ち込んでいても何も無いので受付嬢に話し掛ける。



 「すいません。依頼を受けたいんですがAランクの依頼ってあります?」


 「Aランクの依頼ですか? 少々、お待ちください」



 受付嬢は奥の方で仕事をしている他の受付嬢に声を掛けて話し合う。しばらく、待っているとエルザが暇だったみたいで俺に話しかけて来た。



 「のう、ショウよ。ここにおる者達はそこそこ強いが何者なんじゃ?」


 「ん? エルザ、お前冒険者を知らないのか?」


 「むっ? 知っておるぞ。父上から聞いたことがある。無謀な者達だとな!」


 「ん〜、まあ、生半可な実力でドラゴンに挑めばそう言う印象になるか」


 「じゃが、油断ならない相手とも言っておった。冒険者の中にはドラゴンを倒す者もごく稀にいると聞いておる。実際、お主がそうなのじゃろう?」


 「俺はドラゴンなんて……いや、似たような魔物は倒したことあるけど本物のドラゴンは倒したことないぞ」


 「なに? そうなのか。しかし、お主のその強さ……父上に負けず劣らずじゃぞ」


 「ほう……てか、俺の強さってお前知らんだろ。いや、お前まさか魔力とか見えてるのか?」


 「うむ。ドラゴンはほとんどが敵の実力などを見抜ける瞳を持っておるぞ」



 ああ、そうか。


 だから、あの時のドラゴンは俺を見ても襲ってこなかっんだな。


 納得の理由だ。



 「お待たせしました」



 エルザと話していたら、ちょうど受付嬢が依頼書を持って戻ってきた。



 「こちらがAランクの依頼になります。この中からお選びください」



 渡された紙の束をペラペラと捲り、中身を確認していき比較的簡単そうなやつを選ぶ。手頃な討伐依頼書を見つけると、受付嬢に依頼書を渡す。



 「こちらのグリフィン討伐依頼ですね。それでは、ステータスカードの提示をお願いします」


 「はい」



 受付嬢に言われた通りステータスカードを提示すると、受付嬢が確認する。確認を終えると、ステータスカードをしまい依頼書を受け取る。



 「はい。確認終わりました。それでは、ご武運を」


 「行くぞ、エルザ。晩飯と宿代を確保しに」


 「うむっ!」



 エルザを連れてギルドを出て行こうとすると、出入口を他の冒険者に塞がれてしまう。まさか、このような展開になるとは思ってもいなかった。エルザの手を引っ張って出入口を塞ぐ冒険者を避けて通ろうとしたら、別の冒険者に止められる。



 「待ちな、兄ちゃん」


 「断ると言ったら?」


 「力づくでも止めてやるよ。お前……その子を囮に使う気なんだろ?」


 「えっ?」



 思わずポカーンという表情になってしまう。まさか、この冒険者達は俺がグリフィン退治にエルザを囮に使うと思っているのか。これは、逆に驚きの展開だ。変に絡まれるかと思ったが、エルザの心配をして絡まれるとは思わなかった。なんだか、俺が悪者みたいで冒険者の方達が正しいみたいだ。



 「いや、そういうつもりじゃ……」


 「ああん? じゃあ、どう言うつもりでそんな女の子をグリフィン退治に連れて行く気なんだよ?」


 「返答次第じゃこっちも黙ってねえぞ」


 「この子は――」


 「なんじゃ、お主ら! 妾がか弱き乙女にでも見えるのか!?」


 「ややこしくなるから黙ってなさい。あのですね、この子は見た目と違って――」


 「妾は偉大なる竜王の娘、エルザリオン・ドラグニルじゃ!!」



 あちゃー。


 言っちゃったよ〜。


 どうすんだよ、この後……


 絶対、面倒臭い事になるって……



 「ハハハハハ。面白いこと言うお嬢ちゃんだ。もしかして、この兄ちゃんに何か言われたらそう言うように脅されたのかな?」


 「妾が嘘をついてるとでも申したいのか!? 無礼者め!」


 「おいおい、お嬢ちゃん。俺達は君の事を思ってだな」


 「妾の事を思ってなら、これ以上は口出しせんでもらおうか。それにじゃな、妾はお主達よりも強いぞ」



 流石に今の発言は気に触ったのか、エルザを宥めていた冒険者の眉が僅かにピクリと反応した。しかし、そこは大人の余裕を見せる冒険者。



 「ははっ、じゃあ、お嬢ちゃんは俺よりも強いってわけだ。そりゃ心強いな〜」


 「その言い方は信じておらぬな。良いぞ。妾がお主よりも強いと言うことを証明して見せよう」


 「へぇ〜。どうやってだ?」


 「無論、ころ――」


 「腕相撲ね! 腕相撲!! ほら、あそこの空いたテーブルでやりましょう! ねっ!?」


 「おい、こら、ショウ。何を勝手に話を」



 エルザに拳骨を落とす。ゴンッと鳴り響き周りの冒険者達が驚いてこちらを睨んでくる。しかし、そんな事を無視してエルザを抱き寄せて他の冒険者に聞かれないように小さな声で話す。



 「このバカが。お前、さっき殺し合いとか言いそうになったろ!」


 「痛いではないか! だいたい、それの何がいけないのじゃ?」


 「いけないに決まってるわ! いいか? 腕相撲も極力手加減をするんだぞ!」


 「うっ〜……分かった」



 本当に分かってくれたのかとても不安だが、ここはエルザを信じるしかなさそうだ。

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます


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