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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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四人に会う

「はあ、わかったよ。最後にもう一度だけ顔を出してみるが向こうが会わないと言ったら会わないからな」


「それでも構いませんから、彼女達には声を掛けて下さい」



 アテナに念押しされて部屋を出る。頭を掻きながら廊下を歩く。向かう先はシエル達がいる部屋だ。扉の前まで来たが、いざノックしようとすると緊張してしまい部屋を通り過ぎてしまう。



 仕方が無いので先にキースの部屋に行くことにした。キースのいる部屋に辿り着くと扉をノックもせずに蹴り開ける。



「うおっ!?」


「いつまでウジウジしてやがる! さっさと出て来やがれ!!」


「いや、お前、唐突過ぎるだろ。もうちょっと、こう優しくするとかさ?」


「俺がそんな器用な人間に見えるか!?」


「見えねえけど……」


「だろ! だから、もう俺は言わせてもらうけどめんどくさいんだ! お前らは散々悩んでるんだろうけど、俺は気にしてない。だから、もう気にすんな!」


「お前はそう言うけどよ……俺達からしたら――」


「ウダウダうるせえ!」



 俺は勢い良くキースの頬を殴った。殴られた衝撃でキースが吹き飛び、ベットに倒れ込む。キースは殴られた頬を抑えるとこちらを見てくる。



「これで許す!」



 キースは頬を抑えたまま口を開けている。まるで、何を言ってるか理解出来てないかのような顔だ。ポカーンと呆けた表情しているキースに追い打ちをかけるように喋る。



「今の一発で全部許す! だから、お前ももう気にすんな。次に変な発言するなら、さっきよりもキツい一発をお見舞するからな!」



 殴られて呆けていたキースは抑えていた頬を撫でながら、ようやく我に返ったのか突然笑い声を上げ始めた。



「ははっはははは!」



 強く殴りすぎたか!?


 殴られて笑うなんて!



「頭おかしくなったか?」


「なってねえよ!! ただ、まあ、なんだ。お前らしいなって思ったんだよ」


「そうか……」



 一先ず、俺がツヴァイを追いかける事を説明するとキースからもシエル達に会うように説得された。キースに伝言を頼んでみたが断られてしまい、自らシエル達のいる部屋へと向かう。



 キースのように力技でどうにか出来るような相手では無いので非常に悩む。どうすれば彼女達が納得するか分からないのだ。しかし、悩んでばかりはいられないので意を決して扉をノックする。



 この瞬間が堪らなく緊張する。何と声を掛ければいいのか分からないが、とにかく出来る限りの努力はしよう。返事を待つこと数秒が過ぎた時、一旦出直そうとしたら扉が開かれた。



「あっ」


「……」



 扉を開けたのはルネだった。気まずい空気が流れる。しばらくお互いに無言だったがルネが部屋の中へと案内してくれる。



「とりあえず、中に入って」


「はい……」



 ルネの後ろを着いていくように部屋の中へと入る。



「ルネ、誰が来た……ん……だ……」


「どうもっす……」


「ショウさん……」



 ファラ先輩にシエルは俺の顔を見て固まってしまう。俺としても何を言えばいいのか分からないので、部屋の中は四人もいるのにとても静かだ。



 やはり、出直した方がいいと思い足を動かそうとした時にファラ先輩が声を出した。



「ショウ……君は私達を恨んでいるか?」


「そんな事無いっすよ。今回は敵の能力が非常に厄介なだけでファラ先輩達にはなんの罪もありませんって」


「しかし! 私達は操られていたとはいえ君を傷つけてしまったことには変わりないんだ!!」


「あー、いや、まあ、俺は全く気にしてないんで」


「君はそうは言うが……」



 やっぱり、彼女達は納得しないだろうな。予想はしていたが困ったものだ。俺に彼女達を癒す言葉なんて掛けられないし。



「あのショウさん……」


「ん?」


「どうしてここに?」


「……俺はツヴァイを追い掛ける。だから、いつまでもここにはいられない。本当なら今すぐに出て行こうとしたんだがアテナとミカエルに言われてな」


「ミカエルがですか……」



 あまり、褒められた言い方では無い。自らの意思で来たわけじゃないのだから。他人に言われてようやく来たような男なのだ俺は。



「ショウ……」


「どうした、ルネ?」


「はっきり言っていい?」


「ああ。何を言うのか知らんが言いたいことがあるならはっきり言ってくれ」


「私、あんまり気にしてない。操られてショウを傷つけちゃったけど、ショウなら許してくれるかなって気持ちでいた」


「なっ!?」



 その言葉に反応したのは俺ではなくほか二人だ。二人が驚いてる中、俺はどうしても堪えきれなかった。



「くっ……くくく……ははははははは!!」


「えっ?」



 驚いていた二人は、突然笑い声を上げる俺に振り向き、さらに驚き困惑する。ルネは俺がどんな反応するのか分かりきっていたのか、胸を張ってドヤ顔をしている。



「いやー、流石ルネだな。俺の事を分かってるよ」


「惚れた?」


「くっくく……今だけはな。そんな所嫌いじゃないぜ」


「やった。じゃ、付き合って」


「ちょ、ちょっと待ってください!!」


「なに、シエル? 今、いい所なんだから邪魔をしないで」


「いい所なんだからじゃありません! ルネちゃんだって私達と一緒に落ち込んでたじゃありませんか!」


「アレは二人が物凄く落ち込んでたから。一人だけ平然としてたら怪しいかなって……」


「ははははははは!! 笑わしてくれるな、ルネ! うん! でも、そういう所はホントに嫌いじゃないぜ。それに俺は全く気にしてないからな。むしろ、そっちの方が気が楽だわ」



 ルネのおかげで二人を納得させるのも問題ないかもしれない。

ここまでお読み頂きありがとうございます

不定期更新ですがこれからもよろしくお願いします

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