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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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天界騒乱 終

 俺の言葉に怒ったツヴァイは洗脳した三人に命令を下す。



「貴方達、自爆しなさい」



 予想を遥かに上回る命令に俺は度肝を抜かれる。ツヴァイの命令を受けた三人の魔力が膨れ上がりる。このままでは自爆をされて三人は死んでしまう。



 多少、強引だが力づくで自爆を阻止する。抱えていたシエルを気絶させて、三人へと一瞬で近付き気絶させていく。



 ギリギリであったが間に合ったようだ。三人は自爆をすること無く意識を失った。床に倒れ付す四人を見回してツヴァイを睨み付ける。



「覚悟は出来てるんだろうな?」


「きゃー、こわーい。誰か助けてー」


「誰も助けに来るかよ!」



 わざとらしい演技をしているツヴァイへ一気に突っ込み、拳を握り締める。例え、ミカエルの身体であろうと関係ない。ただ、今はこの怒りをツヴァイへとぶつけたいのだ。



 俺の拳がミカエルの顔面に当たろうかという瞬間にミカエルが消えた。いや、ミカエルが消えたのではなく、俺自身が別の場所へと瞬間移動したのである。



「この魔法は!」



 一度だけだが一瞬で別の場所へと移動する魔法を見た事がある俺は周囲を見渡す。そして、見つける。傷だらけになりながらも、優雅に宙を浮かぶ女神アテナの姿を。



 彼女の右手には自身の身長を上回る大杖と左手には光り輝く白い盾。まさに、女神と言えるような装備だろう。さすがは俺達の世界を模倣しただけの事はある。こちらの世界の女神像にピッタリ当てはまる。



「アテナ……」


「……」



 名前を呼ぶが何の反応も示さない。変わりに大杖を天高く振り上げると、巨大な魔法陣が描かれる。そして、大杖を俺に向かって振り下ろすと魔法陣から極光が放たれる。



 障壁を張り巡らせて防ごうとした時、ツヴァイが現れる。ツヴァイは意識を失っていたはずのシエルを抱えている。そして、シエルの首へと手を添えた。



 どうやら、防ぐことは許されないようだ。張り巡らせていた障壁を解除して極光を待ち受ける。まともに受ければひとたまりもないだろう。



 舐めるなよ……



 極光に飲み込まれた俺を見て、ツヴァイは笑い声を上げる。



「アハハハハハハッ! いい気味ね! 塵一つ残すこと無く消えちゃうなん――」


「そうだな。大分キツいけど、サードと戦った時に比べたら大したことは無い」


「嘘っ!? いつの間っ……カッ……はっ……」



 極光を正面から受けた俺は満身創痍になりながらも極光の中を進み、ツヴァイの背後へと回り込んだ。笑い声を上げていたツヴァイは突然背後に現れた俺に驚き目を見開く。



 驚いて固まった所に腹部へと拳を叩き込む。身体をくの字に曲げて大きく息を吐き出すツヴァイ。その間にシエルを自身の方へと抱き寄せてかかと落としを決める。



 ツヴァイは真っ逆さまに神殿に落ちて行き激突する。シエルはツヴァイから引き離した時点で意識を失っており、一旦神殿の屋根の上に寝かせる。屋根を突き破って神殿の中へと落ちて行くツヴァイを追い掛けていく。瓦礫を吹き飛ばしてツヴァイを見つけ出す。



「うっ……貴方、分かってるの? この身体はミカエルのものなのよ? ミカエルごと私を殺す気?」


「そうする以外に方法が無いならな」


「冗談でしょ……」


「悪いな。お前らを逃がしたりすると余計に厄介な事になるって学んでるからな」


「っ……」



 ミカエルの顔が恐怖に歪む。僅かに肩が震え、ゆっくりと後ろへと後退るが服の裾を踏み付けて逃げれないようにする。向こうからしたら血を流してる男が服の裾を踏み付けているので恐怖以外の何物でもないだろう。



「どうした? 命令でもしてシエルでも女神でも呼べばいいだろう?」


「呼んだところで貴方に勝てないでしょ。それに、私が命令を出そうとした時点で貴方なら私を殺す事なんて簡単でしょ?」


「当然だな。例え、自爆なんて命令でも言い切る前に殺せる」


「なら、こうするしかないわねっ!」



 突然、ツヴァイは俺に向かって抱き着いてこようとするが顎に膝蹴りを入れて弾き飛ばす。後ろに仰け反って倒れるツヴァイはピクリとも動かなくなる。引き起こそうとした時、ツヴァイの目が見開かれる。



「うっ……ぁ……」



 様子がおかしい。


 まさか……!



「ミカエル! ミカエルなのか!?」


「ぐぅ……ぁぅ……」



 呻き声を上げるだけで精一杯なミカエルは再び目を閉じてしまう。だが、明らかに先程までのミカエルとは様子が変わっていた。



「くそっ!!! いつだ、いつ逃げた!!」



 気絶したミカエルに回復魔法を施して、その場に寝かせると神殿内を走り回る。自身には回復魔法を掛けて無いので走る度に血が床に落ちていく。意識した訳じゃないが血痕が目印になっているおかげで、どこを通ったか丸分かりだ。



 勿論、自分がどこを通ったかだが。



 怪しい人物は見当たらない。キース達三人も見当たらない。結局、ミカエルの元へと戻ってからミカエルを抱き上げて神殿の外へと向かう。神殿の外へと出ると、そこには満身創痍のアテナが待ち構えていた。



「お待ちしてました……」


「その様子だと洗脳は解けたみたいだな」


「ええ……そちらもお疲れ様です……」


「すまん。逃しちまった……」


「そうですか……ミカエルは?」


「ああ、ミカエルはちょいとやり過ぎたけど、なんとか無事だよ」


「ミカエルを救って頂きありがとうございます」


「……ミカエルを救えただけでも喜ぶべきか」



 何とも言えない結末になってしまった。


ここまでお読み頂きありがとうございます

不定期更新ですがよろしくお願いします

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