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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第八章 世界を駆ける

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認めさせる

 真っ白な神殿へと一歩踏み込むと、何やら物騒な気配を感じる。俺の横にいたエルレインも感じ取ったらしく怯えながら俺の腕に抱き付いてきた。



 おっぱいが!!


 おっぱいが当たってますよ!!!


 これは不味い!!!



「あ、あのミカエル様……神殿の様子がいつもと違う気がするのですが?」


「そうですか? 私は別にいつもと同じように感じますが。エルレインの勘違いでは?」


「そうでしょうか……」



 それっきりエルレインは言葉を発すことはない。沈黙した三人と一匹は神殿の中を突き進む。エルレインは相当怯えてるようで腕を掴む力が増した。勿論、身体の密着度も増したので俺もある意味危険な状態だ。




 やばい!


 おっぱいが! おっぱいが!!!


 柔らかい! マシュマロ!!!


 なんかエルレインって良い匂いする!



「ショウ……もしかして迷惑?」



 何故、そんな事を聞いてくるのか疑問に思ってしまう。特に文句や不満などはない。むしろ、役得なので有り難いです。



「どうして、そんな事を聞くんだ?」


「だって、さっきからショウ、眉間に皺が寄ってるよ?」



 どうやら、顔に出ていたらしい。幸いな事にエルレインは俺が迷惑そうにしていると思ってくれた事だ。頭の中はエルレインの胸のことしか考えていないのに。



「いいや。これから会う女神様はどんな人かと思ってな。ちょっと、考えてたんだよ」


「そうなんだ。女神様は良い人だよ。きっと、ショウも好きになるから」


「エルレインは女神様の事が好きなのか?」


「うん! 大好き!」



 眩しい笑顔だぜ!!!



「二人とも、もうすぐ女神様のいる部屋に着きますよ。エルレインはいい加減彼から離れなさい」


「はい……ミカエル様」



 うおわああああ!?


 俺の天国があああ!!



 渋々とエルレインが離れていき、心地の良かった感触はもう味わう事は出来ない。せめて、女神に会うまではくっついていても問題なんて無かったのに。



 しかし、いつまでも悲しんでいる場合ではない。目の前に大きな扉が見え、扉の向こうからは息苦しくなるほどの威圧感を感じる。どうやら、物騒な気配の原因はここからだったようだ。チラリとミカエルに目を向けると涼しい顔で扉の方を見詰めており、対するエルレインは若干だが顔が青褪めている。



 扉の前まで辿り着くと、扉が勝手に開き部屋の中へと踏み込む。部屋の中に入った瞬間、俺に向かって複数の魔法が飛来する。当たれば致命傷どころか即死も免れない威力の魔法が俺へと迫る。



「随分と物騒な歓迎だな」



 全ての魔法を叩き落して、部屋の中にいた三人の天使と玉座に座る女神を見据える。男の天使二人に女の天使が一人。そして、中央の玉座に女神。



「三人共、これで問題ありませんか?」



 女神が立ち上がると、両脇にいた三人の天使を問い質す。両脇にいた天使は跪くと頭を垂れて、女神の問いに答える。



「しかし、アテナ様。やはり、人間の彼が救世主とは思えませぬ。先程、我々の攻撃を見事に防いだ実力は認めますが……」


「信用できないと?」


「率直に言いますと、その通りで御座います。ガブリエル、ウリエルも同意見かと」



 女神は喋っている天使から視線を外して、他の天使を見詰める。他の天使も同意見らしく首を縦に振り、肯定の意を示した。



「では、どうすれば貴方達は彼を認めると?」



 女神がそう問いかけた時、俺の肩に乗っていたクロが飛び降りて女神に提案を出した。



「なら、戦えば良い。偉大なる四大天使達が人間風情に遅れを取るわけないもんな~?」



 おい! 馬鹿!!!


 そんな事言ったら!!!



 突如、跪いていた天使達からおびただしい魔力が放たれ部屋の中に竜巻が発生した。ミカエルは、全く動じていないが横にいたエルレインは震え上がり今にも倒れそうだ。このままではエルレインが倒れてしまいそうなので、俺も負けじと魔力を放った。



 互いの魔力が相殺し、部屋は静まり返る。跪いていたはずの三人の天使は立ち上がり、こちらを睨みつけてくる。



 なんだ……


 こいつらは強い……


 だけど、サード程じゃない。



「何を笑っている?」



 誰が言ったのかは分からないが、俺は自分の口を押さえた。どうやら、感情が顔に出ていたらしく、笑っていたみたいだ。



「いや~、別にあんた達の事を笑っていたんじゃなくてだな――」



 それは一瞬の出来事だった。誤魔化すように笑いながら、言い訳を述べている途中に女の天使が切り掛かって来たのだ。



「ッッッ!?!?」



 女の天使はきっと確実に仕留めたと思ったのだろう。だからこそ、今自分が逆に追い詰められている事が理解出来ていない。



「なるべくなら、美人は傷つけたくない。剣を納めてくれると有り難いんだが」



 女の天使の首筋に手刀を添えながら、剣を納めるように促す。天使は素直に言う事を聞いてくれて剣を納めた。鞘に剣が納まるのを確認してから手刀を離して、天使から距離を取る。



「馬鹿な……ウリエルの剣を人間が避けただけでなく背後に回りこんだだと?」


「信じられん……天使最速のウリエルよりも速いと言うのか」



 残りの天使は驚愕の色を表して、女の天使ウリエルについて語った。天使最速なのは驚きだが、サードと比べると格段に遅い。



 いかんな……


 なんでもかんでもサードと比べたがる。


 基準が高いのは良くないな。


 慢心してるのが良く分かる。


 気を引き締めないと。



 カツンと音がした。すると、周りの景色が変わり、最初に見たどこまでも続く雲海の上に立っていた。だがそれは、俺だけじゃなく女神や天使たちも同様に雲海の上に立っていた。部屋の景色が変わったのかに思えたが、どうやら転移させられたらしい。女神を見たら、先程までは持っていなかった自分の身長よりも大きな杖を手にしていたから。



 おいおい、マジかよ。


 油断してた……


 これが転移じゃなくて攻撃だったら……



「勝手な行動は控えなさい、ウリエル。私はまだ戦闘の許可を出していません」


「申し訳ありません、アテナ様」


「ラファエル、ガブリエル。貴方方も戦うと言うならここで戦いなさい。ですが、彼を認めるのならば戻りますが、どうしますか?」



 認めるわけないよな。


 だって、もう臨戦態勢じゃん。



「ウリエルの初撃を防いだのは素直に称賛しますが、まだ認めたわけではありません」



 片方の天使が女神に抗議しながら、槍を召喚して穂先を俺に向けてくる。



「このラファエルの槍を受けて、五体満足でいられたならば認めてやろう、人間」



 明らかに挑発だが、肌を刺すようなプレッシャーを感じる。はったりではない事だけは確かで、言葉通りラファエルの槍を受け切れば認めてくれるのだろう。



 話が早くて助かる。



 俺は腰を落とし、ゆっくりと拳を握り締めて構えを取る。俺が構えるのを見て、ラファエルも槍を構えた。



「安心しろ。殺しはせん。ただ、腕の一本や足の一本は覚悟しろ!」



 ラファエルの姿が消えると、既に目の前まで踏み込んできていた。握り締めた槍からは炎が噴出しており、突き刺されれば火傷どころじゃ済まなさそうだ。



「はっ!!!」



 渾身の一突きをラファエルが放つ。俺の右腕を狙ったその一撃は、ラファエルの実力を明確に示した。



 悪いが、負けるつもりはない!

不定期更新ですがよろしくお願いします

ここまでお読み頂きありがとうございます

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