ぶつかり合う力と力
爆煙が晴れると、そこには大きなクレーターが出来上がっていたが、サードの姿は無かった。どこにいるのか気を探ると、背後の地面からサードが飛び出してきた。
振り向いて、サードを見ると所々から血を流して怪我を負っていた。そして、肩で息をしており先程の攻撃が大分効いた事が見て分かる。
「ハアハア……クハハハ。さっきのは効いたぜ……俺様も死ぬかと思ったぞ」
「……」
「クハハハッ! いいねぇ。油断も慢心も微塵に感じない闘志に満ち溢れた表情だ。やっぱり戦いってのはこうでなくちゃけねえ」
なんだ……
この違和感……
いやな感じだ。
「それに殴られて分かったが、お前のそれは【魔力化】だろう。しかも、今までのような二種類なんてちゃちなもんじゃない。全属性を混ぜ合わせてるな?」
気付かれたか。
いや、気付いて当然か。
「ああ、そうだ。お前の言うとおりこの力は【魔力化】で間違いない。そして、全属性でもある」
「その爆発的な魔力は反発する属性を無理矢理混ぜたからか……クハハハハ。とんでもない事をするな。下手すりゃ暴発して死んでたぞ?」
「覚悟の上さ。それに今こうやってお前をぶん殴れてる」
「ククク……だからこそ、俺様も燃えるってもんだ」
「なに!?」
いきなりサードの魔力が膨れ上がった。予兆も無かった突然の事に驚きの声を上げる。陽炎のようにサードの周囲が歪み、莫大な魔力を感じる。
それこそ、全属性の魔力化に気と魔力を合成させた俺の力に匹敵するほどに。純粋な魔力だけでサードは俺と同じ領域へと踏み込んだ。
「認めるぜ。お前は先代勇者を超えた。だから、ここからはリベンジじゃねえ。俺様はお前を倒す為に戦う。行くぜ、ショウ!!!」
サードが宣言を終えると、俺の時と同じように魔力の柱が立ち上がり天を突いた。
「がっ!」
気付いたら頬を殴られていた。勢い良く吹き飛び、岩山に激突する。岩山にめり込んでしまい抜け出そうとしたら、サードが現れ拳打を叩き込まれる。なんとか防ぐが、岩山を粉砕し蹴り飛ばされてしまう。
空中で体勢を整え、迫りくるサードに魔法を連発する。ガトリング銃のように何百発と魔法を放つが、サードは全て弾き飛ばして距離を詰めてくる。
「ちぃっ!!!」
大きく舌打ちして、至近距離にまで来たサードを迎撃するべく拳を放つ。拳に魔力を収束させ魔力砲をサードの顔面目掛けて撃つが、容易く避けられ懐に侵入を許してしまう。
懐に侵入してきたサードを引き離そうと、魔法を地面に打ち込む。爆煙が舞い上がると周囲を包み、その隙に距離を取ろうと地面を蹴ると足を掴まれる。
「なんだと!」
「どこに行くつもりだ!!!」
「ぐがあっ!」
足を掴まれ、強引に引き寄せられて顔面に拳を叩き込まれて地面に落とされる。掴まれた足を自分で切り飛ばして引き離し、魔法を叩き込む。
【魔力化】をしているおかげで足を切り飛ばしてもすぐに形成させることが出来る。しかし、あまり取りたくはない戦法だ。魔法を撃つよりも吹き飛んだ足や腕を形成する方が何倍も魔力を削がれる。短期決戦なら有用だが、互角の相手、ましてやサード相手には使いたくない。
愚痴を言ってる余裕なんて無いか……
引き離したはずのサードは既に魔法を掻い潜って、距離を詰めてきていた。ゼロ距離まで近付くとお互いに魔力を込めた拳打を放ち、ぶつけ合う。
轟音が響き渡り、周囲の地面が吹き飛び、大地が割れる。何度も拳をぶつけては爆発と衝撃波で地形を変えていく。
「おおおおお!!!」
「はああああ!!!」
ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れてを繰り返し、空中で、大地で交わり争う。技量は同じだが、僅かにサードのほうが押してきている。
理由は単純で火力に差がではじめているのだ。純粋な魔力のサードと色々混ぜ合わせた俺では消耗が激しいのは後者だ。必然的に火力が落ち始めるのは俺で、長引けば長引くほど不利になる。
それがどうした!!!
なら、限界を超えれば良い!!
「はあああああああ!!!」
絞るように魔力と気を高める。押し負けていた力が拮抗し、遂には押し返しはじめる。
「ここに来てまだ強くなるのか! なら、こっちも負けてられるかっ!!!」
俺が強くなると呼応するようにサードの魔力も高まり、押していた力も拮抗の状態に戻された。
互角の勝負を繰り広げ、距離が離れると同時に魔力砲を放つ。蒼い閃光と紅い閃光がぶつかり大爆発を巻き起こす。爆炎が舞い上がり、周囲を明るく照らす中、俺とサードは激突して拳打をぶつけ合わせる。
防御を捨てて、攻撃のみに集中させる。時折、俺の拳がサードに直撃し、反対にサードの拳が俺に直撃する。意識が飛びそうになる一撃を受けながらも攻撃の手を緩めない。
攻撃こそ最大の防御とは良く言ったものだ。この殴り合いの応酬に防御など無粋。攻撃こそ華と言えよう。
頬を打ち抜かれ体勢を崩しながらも、サードの腹部を殴りつける。倒れそうになるが踏ん張って留まり、大地を揺らす勢いで踏み込みサードの頬に拳を放つ。サードは腹部を殴られ浮かびそうになっていたが、踏み込んで俺の腹部に拳をめり込ませた。
相打ちで俺の拳はサードの頬を打ち抜き腹部を殴られた。サードは頬を打ち抜かれ、腹部に拳を叩きこんで後ろによろめく。俺は殴りつけられた腹部を押さえながら後ろに下がる。
「がっはぁ……はあ……はあ……」
大量の息を吐き、サードを睨み付ける。サードは口の中を切っているらしく赤い唾を吐き捨てながらこちらを睨んでいた。
「楽しいぜ、ショウ……もっと、もっと俺様を楽しませてくれ」
こいつ!!!
魔力が膨れ上がった!?
まだ強くなるのかよ……
「ハハッ……くそったれめ」
弱音を吐いてる場合じゃない。
こいつに勝つんだ。
なら、俺の全てをぶつけるんだ!
「はああああああああ!!!」
「おおおおおおおおお!!!」
お互いの力が一段と高まり、螺旋を描き一つに纏まって光の柱が大空へと向かって立ち上がる。
「おおおおおお!!!」
「らあああああ!!!」
地を蹴り、同時に飛び上がり拳をぶつけ合い激突する。衝撃波は雲を吹き飛ばし、大地を削った。
「俺は!!!」
「俺様は!!」
『お前に勝つっっっ!!!』
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