VSアレイスト
一斉に魔法が飛竜隊へと飛んでいったが、飛竜隊には直撃することは無かった。飛竜隊はアレイストのドラゴン以外はワイバーンである為、移動速度はかなり速い。だからと言って、アレイストの乗っているレッドドラゴンが遅いという訳では無い。むしろ、アレイストのレッドドラゴンの方が速い。
どれくらい、速いかと言われたらエンフォリオから王都までは馬で十日ほどかかる。ワイバーンだと、一日もかからない。速度が人と自動車くらい違うのだ。
さて、そういう訳なので、飛竜隊のワイバーンに跨った兵士達には魔法は全く意味を成してないのだ。大体、飛んでいるものに魔法を当てるのはある程度の予測をしなければならない。ゲームでしかやった事がないから分からないが、ヘリコプターなどの飛んでいる物体に当てるのには計算が必要だった。
つまり、何が言いたいかと言うとこっちの攻撃は全く当たっていないのだ。
「怯むな! 魔法を打ち続けろ!」
ブライアンが指示を出すが、兵士達の顔は優れない。どれだけ魔法を撃っても当たらないからだ。それに、まるで向こうはこちらを嘲笑うかのように、ただ魔法を躱しているだけなのだ。
次第に反乱軍の兵士達は疲れが溜まり、肩で息をしはじめる。
「……ブライアンさん。このままじゃ」
「ああ……ショウ、ここは任せていいか?」
「別にいいけど?」
「すまん。頼むぞ!」
ブライアンはそう言い残すと、外壁から飛び降りて飛竜隊へと単身特攻を仕掛ける。荒野を駆け抜けてワイバーンに向かって跳躍すると、腰に差してある剣を抜きワイバーンの首に振り下ろした。
しかし、ブライアンの剣はワイバーンに届かなかった。あと少しの所でワイバーンは身体を翻して剣を避けた。
ブライアンは着地しようとしたが、別のワイバーンに攻撃を受ける。空中では身動きの出来ないブライアンは攻撃をモロに受けて吹き飛び、荒野を転げ回った。
それを見た反乱軍の兵士達がブライアンを助けようと、外壁から飛び降りていく。しかし、飛竜隊がそれを許すはずもなく兵士達はワイバーン達に翻弄される。
このままでは、不味い。こちらの攻撃は一切通用しないのに、負傷者が増えていく。俺も出ようかなと考えたが、こちらを眺めて動かないアレイストが気になって仕方がない。
もしかして、向こうも俺が動くのを待ってるのか?
それとも、別の目的があるのか?
それに、何で攻めてこないんだ??
あー!!
やめだ、やめ!!!
もう、突っ込む!!
「コニー!」
「どうした!?」
「俺も突っ込む。万が一の時は任せた!」
「はあ!? あっ、おい!!」
コニーが何か言おうとしていたが、俺は無視して外壁から飛び降りる。そして、荒野を走りワイバーンの攻撃を掻い潜り、アレイストのドラゴンへと飛び掛る。
「何を考えてるか知らないが、貰ったぞ!」
空中に障壁を張り、それを足場にアレイストへと跳び蹴りを放つ。だか、俺の蹴りはアレイストに簡単に防がれてしまう。すると、アレイストがポツリと質問をしてきた。
「君は……君がアイツの言っていた勇者か?」
「アイツって誰か知らないが、俺は勇者なんかじゃねえよ!」
「そうか。なら、君に用はない!!」
アレイストは背中に背負っていた大剣を、抜くと同時に俺へと振り抜いた。咄嗟に物理障壁を張って大剣を防ぐ事に成功したが、衝撃により地面へと激突する。
「ぐっ!」
すぐに態勢を整え直して、アレイストを見上げる。なんと、アレイストはドラゴンから飛び降りてきた。
「おいおい、ドラゴンから降りていいのか?」
「ああ。今ので理解した。君はアイツよりも弱いと」
「なに? さっきからアイツって言ってるが誰なんだよ」
「そうだな。僕に勝つことが出来たら教えてあげるよ」
「はっ………舐めんなよっ!」
異空間から剣を取り出して、一気に間合いを詰める。下段から剣を振り抜き、アレイストを切り裂こうとしたが剣はアレイストに止められる。
「この程度なのかな?」
「ふん!」
「おっと」
転ばせようと足を払ったが軽く飛んで避けられてしまう。そして、アレイストは大剣で叩き割るように振り下ろしてくる。少し身体を捻り大剣を躱して、アレイストの脇腹に拳を叩き込む。
「それじゃダメだ」
確実に拳を叩き込んだはずなのに、アレイストは全くの無傷だ。それに加えて、本来ならアレイストの鎧は凹んでもおかしくないはず。それだけの威力で俺は殴ったのだから。
こいつ、マジか……
「はあっ!」
「がっ!?」
動揺して固まっていた所をアレイストに殴り飛ばされる。
「くっ……」
久々に殴られたな……
殴られた頬を擦りながら、立ち上がる。アレイストはこちらを見て、心底がっかりしたように溜息を漏らした。
「はあ……ダリウスを倒したと言うから期待していたと言うのに、君には失望させられたよ」
「なんだと……」
「すまない。気分を悪くしてしまったなら謝るよ」
「てめぇ……舐めてんのか?」
「そんなつもりはないんだけどね。でも、そうだな。僕が出向くまでも無かったって所かな」
どうやら、俺を怒らせたいみたいです。
ええ、そちらがそのつもりなら答えましょう。
「なら、その言葉を訂正させてやるよ」
「君が?? できるのかい?」
縮地でアレイストの懐に踏み込む。これにはアレイストも反応が遅れてしまい、驚きの声を上げた。
「なっ!?」
「まずは、一つ!」
俺はアレイストの顎を掌底で打ち上げた。




