姫様の提案
ショウが部屋に戻っている時、コニー、ブライアン、そしてシルヴィアがいる部屋にショウと交代したかのように入ってきたコリン。
「姫様……ようやくなのですね」
「ええ。これからが大変だけれど、皆付いて来てくれるかしら?」
「私は元よりそのつもりです、シルヴィア様」
「俺もですよ、シルヴィア様」
「勿論、私もです」
シルヴィアの前に跪く三人。シルヴィアはそんな三人を見て、不甲斐ない自分に忠誠を誓い、ここまで着いてきてくれた三人に心の底から感謝する。
「ありがとう、三人とも。私は幸せ者ね。貴方達のような部下がいてくれて……」
「これも全て姫様の人徳あってのこそ。我々は死ぬまで姫様と共にあります」
「わかりました。では、これからについて話しましょうか」
「はい!」
三人は立ち上がると、テーブル席に座る。
「それで、一つ提案があるのだけど」
「提案とは?」
シルヴィアは席に座ると、小さく手を挙げながら発言する。その発言に一番に反応をしたのはコリンだ。シルヴィアの提案ともなれば、とても重要なものだと思い、コニーやブライアンもシルヴィアに目を向ける。
「えっと……その……」
しかし、シルヴィアは躊躇っているのか、遠慮しているのかモジモジとして提案を話そうとはしない。流石に、痺れを切らしたコリンがシルヴィアに言及する。
「姫様。何を迷ってるか分かりませんが、姫様がどんな提案をしようと私達は聞き入れる所存ですよ」
「そ、そう? じゃあ、言うけど……ショウに私の正体を打ち明けようと思うのだけど」
「却下です」
「えっ、さっきはどんな提案でも聞くって」
「姫様。例外はあります。確かにどんな提案でも聞くと言いましたが、その提案は聞けません」
「で、でも、流石にずっと騙し続けるのも疲れてきたし、それにショウには沢山助けられてるのだから、そろそろ正体を明かしても……」
「いいえ、ダメです!」
バンっと机を叩きながら、勢い良く立ち上がる。勢いが強すぎたせいでコリンが座っていた椅子は後ろに倒れてしまった。これには、コニーもブライアンも驚いている。
当然、提案を反対されたシルヴィアも驚いている。しかも、コニーやブライアンよりも驚いていた。何せ、コリンがズイっと顔を近づけて威圧していたからだ。
「いいですか、姫様? 仮に姫様の正体をショウに明かしたとしましょう。きっと、あの変態は今までの態度から180度変わり、姫様に迫るでしょう。そして、最終的には姫様を……」
「そんな事はないと思うけどな〜」
「甘いですよ、コニーお兄様!」
「うえっ!?」
「男なんて皆考えてる事は一緒なんです! どうせ、スケベなことを考えてるに決まってます! 姫様の正体を知った暁には、人気のないところに連れ込んで……姫様を……」
「コリン。妄想はそのくらいにしたらどうだ?」
「ブライアン殿まで!! もしかして、ショウの肩を持ってるのでは!?」
「……姫様を見ろ」
「へっ?」
言われてから、コリンはシルヴィアに顔を向ける。シルヴィアの顔はほんのり紅く染まっており、コリンの妄想を聞いて自分でも妄想しているのかブツブツと呟いている。
「あの……姫様?」
「えっ、あっ、何コリン?」
「ショウに正体を打ち明ける理由を聞きたいのですが?」
「えっ? さっきも言った通り、ショウには沢山助けられてるし、信用も出来るからいいかなって」
「他意はないのですか?」
「ええ。その、コリンが言っていたような事は……その、ええっと……無いわ」
シルヴィアが顔を紅くしている時点で怪しいのだが、コリンはそれ以上追求しなかった。だが、コリンの心配は必要ないのだ。何故ならば――
(確かにショウには助けられてばかりだけれど、そんな気はないし……大体、ショウってあまりカッコよくは無いし……強いのは強いけど、恋愛対象にはならないわよね。それよりも、コリンが言っていた事ってその……アレよね? エッチな事よね? 興味があるかないかで聞かれれば、興味はあるけれど……でも、そう言うのはまだ早いし!! そもそも、お互いの事をよく知ってからじゃないと! ていうか、まずはお付き合いからよね! 付き合って、ようやくお互いの事が少しずつわかって、それで……キャー!! はっ! いけないわ。変な事を考えてしまっては。今は国の事を考えないといけないのに)
純粋過ぎるからである――
そして、悲しきかな。姫様とのルートは限りなくゼロに近いものらしい。シルヴィアにとって、ショウは強いだけであって恋愛対象にすら入っていない。この先、ショウは彼女の恋愛対象に入るのは困難を極めるであろう。
「今後についてたが、エンフォリオを拠点に各都市を制圧という形でいいか?」
「そうですね。まずは、各場所に散らばっている反乱軍のメンバーを集める方針でありますね?」
「うむ。だが、国王軍は必ずエンフォリオを取り戻しに、いや、攻め落としに来るだろう。だから、これからやるべき事は守りを固める事だな」
「そうっすね。でも、まあこっちにはブライアンさんにショウもいる。それに、ダリウスや国王軍の兵士も捕まえてあるし、残りの三騎士も来ても安心ですしね!」
「だが、最後の一人は……」
ブライアンの言葉に全員が俯いてしまう。そして、コリンがポツリと呟く。
「三騎士、最強の竜騎士アレイスト……」




