任務遂行!
勢い良く放たれた矢は綺麗な放物線を描き、外壁の上を巡回していた兵士達に襲い掛かる。兵士達は突然の事に驚きの声をあげる。
「う、うわぁぁぁ!!?? て、敵襲、敵襲!!」
兵士達は矢が飛んできた方向に目を向ける。そこには、当然俺達反乱軍がいた。
「あれは、反乱軍か!! おのれっ、暗闇に乗じて奇襲とは卑怯者どもめ! だが、残念だったな。この街には今、三騎士の一人であるダリウス様がおられる! 貴様らには万に一つの勝ち目もないわ!!」
えらく、喋る奴だな。
まあ、こちらとしては都合が良いけど。
「手を休めるな。矢を打ち続けろ」
「はっ!」
俺の指示を聞き忠実に従う部下達。次々と矢を打ち続け、兵士達を翻弄する。しかし、こちらの数は僅か15名で、さらに弓兵は3名しかいない。その3名が懸命に己の役割を果たしてくれている。
勿論、敵もただ矢を受けてるだけではない。敵も弓矢を持ち出し、こちらへと矢を放ってくる。当然、飛んでくる矢を防がなければならない。ただでさえ、少ない人員だが2名を防衛に回している。その2名は飛んでくる矢を障壁を張り防いでくれている。
「よし、お前らここが踏ん張りどころだ! ハシゴを持て!! 出るぞ!!」
弓兵三人と障壁を張る二人を残して、残りの十人に梯子を持たせて外壁へと走る。敵は、弓兵から的を変えて梯子を持って外壁へと走っている俺達に矢を放つ。だが、こちらには俺が付いているので弓矢など恐れることはなく、外壁へと辿り着く。
「梯子をかけろ!」
俺の号令と共に部下達が外壁に梯子をかける。梯子は敵兵が外そうと試みるが、こちらの弓兵達が邪魔をして梯子を外す事が出来ない。
そこに、俺が梯子を使い一気に駆け上がる。槍を持った兵士が梯子を登る俺を突き刺そうとしてくるが、俺は飛び上がりそのまま外壁に降り立った。
「くっ! 敵はたった一人だ!! 数で押し潰せ!」
「ふっ。テメェら雑魚がどれだけ集まろうが俺に勝てるかよ!」
近くにいた兵士が腰に差してある剣を抜き、切りかかってくる。
「やああっ!!」
「遅いっ!」
兵士の顔面に蹴りを食らわせる。
「うげっ!」
蹴られた兵士は勢い良く吹き飛んでいく。死んではいないが、鼻の骨が折れて鼻血が吹き出していた。完全に戦闘不能になり、もう立つ気配はない。他の兵士達はそれを見ても、恐れることはなく襲い掛かってくる。
やはり、熟練度の高い兵士達は連携が上手くお互いのスキをカバーし合っている。だが、それでも俺の方が強い。一人、また一人と着実に倒していく。
「くっ、おのれぇ!!」
「自棄になるなよっ!」
自暴自棄になり突撃してきた最後の一人を倒す。しかし、これで終わりではない。最後の一人を倒し終えた後、カンカンッと金属のようなものを叩く音が聞こえる。その音の方に目を向けると兵士が小さな鐘を叩いていた。
どうやら、あの鐘で敵襲があった事を伝えるようだ。鐘の音が街に響き渡り、明かりが付いていなかった街に明かりが灯る。
そして、外壁の内側の下を除くと兵士達が外壁の階段を駆け上がって来ていた。
「ふむ。どうやら、今の所順調っと」
一人つぶやくと、外壁の外側にいる仲間達に向けて指示を出す。
「各員、撤退準備! 後は、俺一人で――」
「俺達もやります!」
「そうですよ、隊長!」
「水臭いこと言わないでください!」
うーん。
嬉しいんだけどなぁ……
でも、正直足手纏いだからなぁ。
「ダメだ。これは隊長命令だ。各員、撤退。リーダーの所まで撤退し、指示を待て」
「な、何故ですか!」
「お前達、全員を守りながら戦うのは流石に厳しいからな」
「バカにしないでください。私達は死ぬ覚悟などとうの昔に出来ています!」
「それがダメなんだ」
「どうしてですか!? 死ぬ覚悟も出来てない兵士なら兎も角、私達は――」
「死ぬ覚悟よりも生き抜く事が大事なんだよ。例え、王都を奪還しても死んだら意味がないだろう。だから、お前達は戻れ」
「………納得いきません! 確かに、隊長の仰る通りかもしれません! でも、何よりも、私達の国を私達の手で取り戻したいのです! 隊長はお強い事は分かります。でも、隊長はこの国の人間ではありません。そんな隊長が命を掛けてくれているのに私達だけ撤退なんて出来るはずがありませんっ!!」
いや、別に命は掛けてないよ。
命は大事だからね!
「その通りだな。でも、ダメだ」
「ッッ!! なんで――」
「お前等に死んで欲しくないから。ただ、それだけだ。分かったら、さっさと撤退しろ」
くそぅ!
臭いセリフだぁ!!
恥ずかしぃぃぃ!!
消えて無くなりたいよぉぉぉ!!
「隊長……」
くそっ!
なんで、男達にそんな熱い視線を向けられなきゃならんのだ!!
女ならいいぞ!!
もっと、俺を熱い視線で見て!!
やる気出るから!
「分かりました……命令に従います」
「ああ。それでいい」
部下達は、渋々ではあるが撤退を始めた。部下達が無事に森の中まで撤退するのを確認してから、振り返る。振り返ると、そこには数え切れない敵兵が待ち構えていた。
「ふっ、勇ましい事だ。だが、この数を相手にして生き残れると思ってるのか?」
「さあな。でも、まあ、やれるだけやるさ」
「笑わせてくれる。貴様を倒した後は、逃げていった連中も貴様と同じところに送ってやるさ」
「やれるものなら、やってみな」
「その余裕、どこまで持つかな。総員、かかれ!」
いっちょ、派手に暴れますかぁっ!!
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