地下牢でのこと
「うっ………ここは?」
目が覚めたら、全く色気のない岩肌が広がっていた。起き上がろうとしたら、酷い頭痛に襲われる。
「ぐっ……頭が……くそっ……昨日の酒か」
どうやら、二日酔いのようだ。俺は、どれだけ酒を飲もうと記憶を無くすことは無い。だから、ハッキリと昨日の事を覚えていた。しかし、ここで疑問がある。俺は昨日と思っているが、ホントに昨日なのかという事だ。
もしかしたら、意識を失ってから三日くらいは経過してるんじゃないかと感じる。何故、そう感じるのかと言われたら上手く言えないが、何となく感じるのだ。
そして、最も疑問に思ったのが――
どうして、俺は地下牢に閉じ込められてるのでしょうか。
「くくく」
隣の牢屋から人を小馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。俺は勿論、声の主が誰だか分かっている。
「何がおかしいんだ、マックス?」
「いや、あまりにも滑稽でな」
「そうか」
「焦らないのか? 眠ってるお前を奴等はここに放り込んだんだぞ?」
「別に焦ることは無いさ。それに、大体理由も分かるしな」
「けっ、強がり言いやがって」
「まあ、その内分かるだろうよ」
マックスはそれ以上何も言ってこなかった。兎に角、俺は二日酔いが酷いので回復魔法を使い、二日酔いを治そうとしたのだが、魔法は発動しなかった。
忘れていた。この牢屋は魔法を封じるんだった。魔法を封じられ、二日酔いを治せないと分かった俺は眠ることにした。気持ち悪いが眠れない事はなかったので、すぐに眠りについた。
それから、どれだけ時間が経ったのか分からないが、俺はとある人物によって起こされる。
「起きるであります」
「んんぅ? コリンか?」
「やっと起きたでありますね」
「ああ。おかげさまでな。それで、何の用だ?」
「昨日の事は覚えてるでありますか?」
「当然だろ。俺はお前と飲み比べで負けた。そして、盛大に吐いたあと、意識を失った。それで、目が覚めたら今に至るってわけだ」
「どうやら、ホントに覚えてるみたいでありますね。少し付け足すなら、貴方が意識を失った後はブライアン殿が貴方をここまで運んだのであります」
「ふむ。なんで部屋じゃなくて地下牢に?」
「変態にはここが相応しいかと」
鋭く冷たい視線が刺さる。やはり、昨日の事は根に持っているようだ。最早、俺の評価は地の底で覆る事は皆無だろう。
「そういう事か」
「おや、少しは文句でも言うかと思いましたが意外な反応でありますね。まだ酔っているのではありませんか?」
「いいや。酔ってないさ。でも、昨日した事を考えたら当然だと思ってな」
「なら、もう少しそこで頭を冷やす事でありますね」
コリンはそう言うと、踵を返し背中を向けて歩き出す。コリンが地下牢からいなくなると、マックスが話しかけてきた。
「なんだ、お前。酔っ払って何かしたのか?」
「大したことじゃないさ。ただ、一気飲みの勝負でコリンの服を一枚一枚剥いだだけだ」
「ぶっ、ははははははは!! なんだ、それ! 面白いことやってんだな!」
「ああ。楽しかったぜ?」
「ははは……俺も参加したかったな」
「お前が裏切り者じゃなかったら参加してたさ」
「……だな」
マックスは暫く黙ると、弱々しい声で俺に尋ねてきた。
「なあ、俺はどうしたらいい?」
「そんな事、俺に聞くな」
「冷たい奴だな。少しは励まそうとしたり、慰めようとしたりするだろ」
「俺とお前はそんな関係でもないだろ」
「ははっ、それもそうか。お前に聞いたのは間違いだったか」
「大間違いだ、バカヤロー」
「へへっ……」
力なく笑ったマックスはそのまま喋らなくなった。死んだのかと思ったが、どうやらただ黙ってるだけのようだ。俺も特に喋ることは無いので、そのまま寝る事にした。寝てばっかりだが、やる事がないので仕方ないのだ。
しばらく、寝ていたが人の気配がしたので目が覚める。起きて牢屋の外を見るとリーダーが来ていた。わざわざ、リーダー自らが出向くとは驚いたが、俺は慌てること無く話しかける。
「リーダー自ら来るとはな。何かあるのか?」
「ああ。コリンから話を聞いてな。昨日は折角の祝勝会なのに、私のせいで台無しにしてしまってすまない。今、ここから出してやろう」
「いやいや、リーダーが謝ることは無いだろ。悪いのは悪酔いした俺だ」
「いや、私……そうだな。ショウが悪い」
「はあっ!? お前、ここは私だとか言ってお互いに譲らなくて平行線になる流れだったろ!?」
「ふふっ。何を言う? ショウ、君が自らの非を認めたではないか」
「いや、そりゃそうだけどよ!! ぐっ……ああ、もういい! それで、ここから出してくれるのか? 出してくれないのか?」
「そう焦るな」
リーダーはそう言いながら、牢屋の鍵穴に鍵を差し込むとガチャリと音が鳴る。すると、牢屋の扉が開き、リーダーが牢屋の中へと入ってきた。
「ほら、私に感謝するんだな」
なんだろう。
凄くムカつく。
ベットに寝ていた俺にリーダーは手を差し伸べてきた。渋々ながらも、俺はその手を取り立ち上がった。
「感謝してやるよ」
「どういたしまして」
くそぅ!!
これがカリスマってやつか!!
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