功労者
逃げていった兵士達が残したテントの中を確認してみると、剣や弓矢といった装備品が置いてあった。放置しておくのも勿体無いと思い、アジトに戻ってコニーに相談すると反乱軍総出で回収に向かった。
俺は今回の功労者ということでアジトに待機することになった。部屋でゴロゴロしていると、足音が聞こえてきたので回収し終えて帰ってきたのだろう。
話でも聞こうかと考えたが、話すことが何も浮かばないので結局部屋から出ずにベットの上でゴロゴロする。暇なので、久しぶりに武具創造で新しい武器を創ろうとベットから下りる。今度はどんな武器を創ろうかなと楽しく考えていたら、ドアがノックされる。
人が折角、ノリノリになってきた所なのに邪魔をするとは許せん。俺は、イラついた感じに返事をしてからドアを開けた。
「なんだよ!」
「あっ、す、すまない。何か作業してたのか?」
ドアを開けたら、俺がイラついた返事をしたせいで僅かに怯えているリーダーが立っていた。反乱軍を束ねるんだから、この程度で怯えないでほしい。
「なんか用?」
「ああ。今回、国王軍を撃退してくれた功労を讃えたいと思って……な?」
「あー、そんなんいらんから」
「いや、しかし、そういう訳にもいかないんだ」
「なんで? 俺がいらないって言ってるんだからそれでいいんじゃないの?」
「こちらのメンツも考えてくれ。一人で数百人もの軍勢を退けた者に何の報酬も与えない、血も涙もないリーダーと私を呼ばせたいのか?」
「あぁ……そういう事か」
「そういう事だ。分かってくれたか?」
「はぁ……それで、何をしてもらえるんだ?」
「うむ! まずは、祝勝会だ! そして、次に君の功労を讃えて勲章の授与式をだな」
「ちょ、ちょっと待て。大袈裟だ! そんなにいらんから、適当に祝勝会だけ上げてくれればいいから」
「むっ? しかし、君の功績を考えるとまだ足りない気がするのだが」
「別にいいから。そんなに欲しくないし、てか報酬目当てで戦ってる訳じゃないんだよ」
あくまで!!
俺は!!!
彼女欲しさに戦ってます!!
出来れば勲章なんかよりも女の子を下さい!!
コリンちゃんでもOKです!!
「君は名誉や地位には興味が無いのか?」
「ない!!」
何度も言いますけど!!
俺は、名誉や地位よりも!!
栄光や賞賛よりも!!
彼女が欲しいんでぇぇぇす!!!
「……あなたのような人がいるのね」
へあっ!?
おネエか、こいつ!!!???
「言っとくが、男には興味無いからな」
「な、なんの話をしているんだ! 大体、私は男色家ではない!!」
「だって、お前がオネエ言葉で喋るから!」
「オネエ言葉??」
「女言葉だよ!! さっき、小さい声だけど呟いただろうが!!」
「えっ、あっ、あれは!! その、あれだ! たまたまだ! たまたまポロっと出ただけだ!」
「それがお前の本性か! てめぇ、仲良くして欲しいって言ってたのはそういう意味だったのかよ!! 言っておくが、身の危険を感じたらリーダーだろうと関係なく蹴り飛ばすからな!!」
「襲うわけないだろ!! も、もういい! 祝勝会についてはコニーに報告させる!!」
リーダーは激怒してドアを思い切り閉めた。バァンッと大きな音が部屋中に響き渡る。これだけ大きい音を鳴らすと隣だけじゃなくアジト全体に響いたのではと思い、ドアを開けて少しだけ顔を覗かせて廊下を見回す。幸い、誰もこちらを見ている様子は無かったので一安心だ。
しかし、困ったことになった。まさか、リーダーがオネエだったとは。オッサンの癖に妙に抱き着いて来たり、タメ口で話すように言ってきたりした辺りから怪しいとは思っていたが、まさか本当にオネエだったとは。
これは注意しないといけないな。いくら、俺が強いと言っても寝込み襲われたり、食事に一服盛られたりなんかしたらすぐにヤられてしまう。本人は否定しているが、ポロっと出るあたり最早言い逃れのしようがない。
お尻に視線を感じたら即座に蹴り上げよう!
うん!!
絶対、そうしよう!!
◆◇◆◇
「何よ、何よ、何よ!!!」
「ひ、姫様!? いかがなさいましたか?」
シルヴィアは乱暴に兜を地面に叩きつけて、地団駄を踏みながら文句を言う。乱暴に投げられた兜をコリンが拾いながら、シルヴィアが怒っている理由を聞こうと歩み寄る。
「ショウが私のことを男色家呼ばわりしたのよ!!」
「はあ……それが何か?」
コリンはまるで分かってない様子だ。しかし、コリンからすればこの勘違いは嬉しい誤算だ。何せ、反乱軍のリーダーが女性であり、姫と呼ばれているシルヴィアだとバレる恐れが極端に下がったからである。だから、コリンにとってはさほど問題ないように思えてしまうのだ。
だからこそ、コリンはシルヴィアがどうして怒っているのか理解出来ずに疑問に思ってしまったのだ。
「普通、少し女性のような口調で喋ったくらいで男色家呼ばわりする!? しないわよね! ねっ!!」
「そ、そうですね。普通はしないと思います」
鬼気迫るものを感じるシルヴィアの勢いにコリンは後ずさりながらもシルヴィアの意見に同意する。半ば、無理矢理な感じではあるが。
「絶対に許さないんだから!」
「私としてはこのまま勘違いしてくれてた方が……」
「何か言った!?」
「い、いえ。何も」
流石のコリンもこればかりはどうしようもない。今もブツブツとショウに対して文句を言っているシルヴィアには誰の言葉も通用しそうにない。
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