呪術を解呪しよう
「……」
「…… 」
お互いに沈黙してしまい、気まずい空気が生まれる。やはり、変な事を聞かなければ良かった。しかし、今更どうする事も出来ないので、フォーンの返答を待つばかりだ。
「……その、あの時は逃げるのに必死だったから………貴方に特別な感情がある訳じゃないわ」
ですよねぇ!!!
期待してすいませぇぇぇん!!
「そうか。それだけ聞きたかった」
俺はファーンの檻の前から移動しようとしたら、ファーンが声をかけてきた。
「待って。私も聞きたい事があるんだけど?」
「なんだ?」
「あの時、動揺してたけどもしかして童貞なの?」
あああああああああっ!!!!
バレてるぅぅううううう!!
きゃぁぁぁああああああ!!!
お、おおおお落ち着け……
この手の質問は冷静に答えるべきだ。
うん!!
よし、落ち着いた!!
「そんな訳ないだろ」
よぉぉぉしっ!!!
完璧な答えだっ!!
全く動揺すること無く、答えたぞ!!
声も震えてない!!
まさに完璧っっっ!!!!
「そう。童貞なのね」
あいぇぇぇぇえええええ!?!?
なんで!?!?
さっきの受け答えじゃ童貞だってバレないはずなのに!!
もしかして、カマを掛けたのか?
いや、違うっ!!
じゃあ、なんだ??
一体、どうやって童貞だって判断したんだ?
「証拠がないだろ」
「ふふっ、貴方の態度で丸分かりよ。隠してるつもりでも分かる人には分かるのよ」
な、なんだってぇぇぇ!?
そ、それじゃ俺の努力は一体なんだったんだ!!
「私が聞きたいのはそれだけ。もう用はないんでしょ?」
「……納得できん。なんで、俺が童貞だと分かったんだ」
「それは秘密。でも、そうね。一つ教えるとしたら変に取り繕わない事ね」
「……助言感謝する」
俺は、それだけ言うとファーンに背を向けて檻の前から移動した。その時の俺の顔はきっと酷いものだったと思う。本当に聞かなければ良かったと心底後悔した。
俺は、コニーとブライアンの様子を見にマックスの檻の方へと向かう。檻の中では、多少揉めていたが俺が来たことにより口論を止めてこちらへと振り向いた。
「なあ、ショウはどう思うよ!」
「何がだよ……」
「何がって、マックスとファーンにはこれからも反乱軍の一員として働いて貰うんだとよ!」
「まあ、いいんじゃないか??」
「いいんじゃないかって、お前分かってるのか!?」
「何が?」
正直、今の俺はコニーの話をまともに聞ける状態ではない。先程のファーンとの会話が頭の中を埋め尽くし、コニーの話が頭に入ってこない。考えないように、考えないようにするが余計に考え込んでしまう。悪循環な思考におちいってしまう。
「コニーはこの二人をどうしたいんだ?」
「勿論、死刑だ!」
「そうか。でも、反乱軍は戦力不足だろ? 二人も失っていいのか?」
「関係あるかよ!!」
だめだ。
頭に血が上ってやがる。
こっちの話を聞きゃしねえ。
「なぁ、ブライアンさん」
「言うな。こうなったコニーを落ち着かせるのは時間がかかる」
「はぁ……」
とにかく、一度コニーを連れて地下牢から離れよう。そうでもしないと、コニーはずっとこちらの話しを聞かないだろう。そうと決まれば、さっさとコニーを連行しよう。これ以上、喚かれても鬱陶しいだけだからな。
俺とブライアンはコニーを宥めながら、地下牢から上がった。一番近くのブライアンの部屋に行き、コニーを落ち着かせる。
「落ち着いたか?」
「……落ち着いたけど、納得はしてない」
「そうか……」
俺はいなかったから、二人がどういう話をしたのかはわからない。分かることと言えば、ブライアンは二人をこのまま反乱軍として働かせることだけだ。そして、コニーはそれに猛反対。
俺としては、別に二人をこのまま反乱軍として働かせるのはアリだと思う。しかし、その前にまずやらなければ行けない事がある。
「ブライアンさん。まずは、話し合いの前にマックスとファーンに掛けられた呪術をどうにかしましょうか」
「ああ。そうだな。確かに先にそちらをどうにかしておかねばならないな」
「けっ、そんなの放って置けばいいだろ」
「そういう訳にもいかねぇよ。ある程度人を操る事が出来る呪術だが、もしかしたら呪術を掛けられた者の居場所を特定出来るかもしれないだろ?」
「そんな訳……ないとは言い切れないのか?」
「言えんな。だから、早めに呪術を解呪しないとめんどくさい事になるかもしれん」
「そうだな。もしかしたら、ショウの言う通りここを特定されているやもしれん」
「くそっ! 迷惑な奴らだぜ」
「ブライアンさん。反乱軍に呪術とかに詳しい奴はいるのか?」
「もちろん、いるぞ。先に地下牢へと降りていてくれ。私は呼んでから行く」
「わかった。コニー、お前はどうする?」
「……いかない。顔を見たら、また切れちまいそうだからな」
「そうか」
賢明な判断だろう。今のコニーが地下牢に来ても大して役に立つことはないし、むしろ下手をすれば邪魔になるかもしれない。
俺は、ブライアンの部屋を出て行き一人で地下牢へと降りていく。看守がまた来た俺に首を傾げるので、軽く説明するとすぐに通してくれた。
「よう、元気か?」
「さっきも会ったろ。何の用だ」
「まあ、そう警戒するな。ちょっと、お前らに用事があって降りてきたんだよ」
「言っておくが、喋ることはないぞ」
「お喋りしに来たわけじゃないから安心しろ」
「あぁ、そうかよ」
さて、ブライアンが来るまで待ちますか。
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