歓迎会
「はっ!?」
いつの間にか、寝ていたようで枕が涎で濡れていた。口元についた涎の跡を拭いて、部屋を出てトイレへと向かう。トイレを済ませて部屋へと戻り、もう一度ベッドで横になろうとしたらドアがノックされる。
「どうぞー」
「失礼するぞ」
「なんか、用すか?」
「食事の用意が出来た。食堂に案内するから付いてこい」
「ふぇーい」
ブライアンが部屋を出て行き、その後に続いて部屋を出る。もう、夕食時なのかと思い時計を確認しようとしてしまった。ここには時計などない上に窓も無いから、夜か昼かも分からない。
寝ていたから、分からないが食事の用意が出来たと言っていたのだから今は夕方を過ぎた辺りだろう。それに、今が夕方だろうと夜中だろうと大して俺には関係ない。
「ここだ。既に他の反乱軍の仲間達が待っている」
「なんか、まるで歓迎会みたいだな」
「何を言っている。お前の歓迎会に決まっているだろう。新しく共に戦う仲間になるのだから」
「えっ、マジ?」
ブライアンは返事と言わんばかりに食堂の扉を開いた。すると、大歓声とまではいかないが俺を歓迎する拍手と歓声が上がった。
「待ってたぞー!」
「よっ、期待の新人!!」
「ブライアンさんを倒したってホントかー!?」
「あっ、それ私も聞きたい!」
「俺も俺も!」
「早く席につけよー!」
「折角の料理が冷めちまうよー!!」
お、おおお!?
意外と食堂は広く、反乱軍の人達も予想以上にいたので驚いてしまった。軽く、百人は入るであろう食堂に沢山の人達が片手にグラスを持ち、俺の到着を待っていてくれたようだ。まだ、グラスには並々と注がれた酒が入っている。どうやら、準備は万端らしい。
俺が空いてる席へと招かれ座ると、全員が静まりある一点に視線が集中する。その視線の先には、相変わらず暑苦しそうな甲冑を着た反乱軍のリーダーが立っている。リーダーはグラスを高く上げると歓迎会の始まりを告げる。
「それでは、これより我等の新たなる仲間、ショウの歓迎会を行う! 皆の者、今宵は無礼講である。存分に飲め、食え、そして楽しめ!! それでは、乾杯!!
『乾杯!!』
カチンとグラスとグラスがぶつかる音が聞こえてくる。子気味良い音は、鳴り止む事はなく次々に聞こえてくる。そして、音が鳴り止む頃には反乱軍の人達の笑い声が俺の耳に届く。
「なぁなぁ! ショウはどうやってブライアンさんに勝ったんだよ?」
「ショウは旅人だって聞いたんだけど、どっから来たんだ?」
「使い魔にケット・シーと契約してるんだよな!?」
「レベルいくつだ?」
「何歳なの??」
「どこの国の出身なんだ?」
「好きな子のタイプは?」
休む暇もなく質問攻めされる。答えることの出来ない質問もあれば、そんな事を聞いてどうするんだというような質問まである。
ああ……
悪くないな、こういうのも……
久々に酒を飲んだ俺は高揚していたのか、俺は反乱軍の人達と肩を組み笑いあっていた。ひとしきり楽しみ、小便に行きたくなったので食堂を抜けてトイレへと向かう。足元が少しふらつきながらもトイレへと辿り着く。
「ははっ、面白い奴らだ」
小便を済ませて、トイレを出ようとしたら人にぶつかってしまう。
「っと……すいません。大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫」
「なんだ、コニーか」
「なんだよ、俺だったらいけないのか?」
「そういう意味で言った訳じゃない。お前、酒弱いのか?」
「ヘヘッ。まあ、あんまし強くねえな」
「おい、大丈夫かか? かなり、ふらついてるぞ?」
「大丈夫だって……ほら、呂律だってちゃんと回ってるだろ?」
「いや、呂律がちゃんと回ってるからって酔ってないとは言い切れないだろ?」
「別にいいだろ! そんな事より、漏れそうなんだ。どいてくれ」
「あ、ああ。悪かったな」
コニーはふらつきながらも、トイレへと入って行く。俺はそれを見届けると食堂に戻ろうとしたが、トイレの中からコニーが倒れる音が聞こえて来たので引き返す事にした。トイレの中ではコニーが倒れていた。
「おい、コニー」
「うっ……うぅ……」
「ほれ」
コニーの手を掴んで無理矢理立たせる。コニーは肩を貸さないと立っていられなくなっていた。仕方なく、コニーの肩を貸してトイレから出ようとしたら、コニーが話しかけてきた。
「なぁ……ショウは反乱軍の奴らをどう思った?」
「ん? まあ、明るくていい人達だとは思ったけど、それがどうしたんだ?」
「そっか……昔はさ……この国の人達も皆あんな風に笑ってたんだよ……でも……国王が変わってからはショウも知ってる通りだ」
「そうだな。初めてこの国に来た時は驚いたさ。みんな、今にも死にそうな顔をしてたからな」
「やっぱりかぁ……」
「やっぱりって、お前なぁ。多分、この国に初めて訪れた人は皆同じ感想言うと思うぞ」
「そうだよなぁ……だからこそ、俺達は必ず王都を奪還して国王を倒さなきゃいけないんだ………そのさ……えっと……」
「なんだよ、モジモジして気持ち悪い! 言いたいことがあるならハッキリ言えよ!」
「気持ち悪いって、お前! いや、そうだよな。気持ち悪いよな。なあ、ショウはさ何で関係ない俺達の仲間になってくれたんだ?」
「お前らが誘ったからだろ。それ以外に何があるんだ」
「いや、誘ったのは誘ったけどさ……」
なんだ?
まだ、何か言いたいのか??
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