憐れなりアホの子
第三者視点です
ショウがベットにダイブして、眠っている間にブライアン、コニー、コリンの三人は反乱軍のリーダーの部屋へと向かっていた。三人は、全員が揃うとリーダーの部屋へと入って行く。
部屋の中には先程までいた全身甲冑のリーダーではなく、幻想的な白い髪の美少女だった。そして、部屋の奥には先程ショウと会った甲冑が飾られている。つまり、彼女が甲冑の中の人物だったのだ。
「失礼します」
「来たわね………あの人はいないようね?」
「ショウなら、部屋に案内した。今は疲れてるのかベットでぐっすりと眠っている」
「ふん。信用してないって言う割にはぐっすりと眠りこけるなんて大した度胸ですね。それとも、やはりただの馬鹿なのでしょう」
ブライアンがリーダーに説明をすると、横にいたコリンが悪態をつく。まるで、先程までのコリンとは思えない変わりようだ。
「コリン、あまりそういう事を言わないの」
「しかしですね、シルヴィア様。あの男は私が少し色目を使うだけであっさりと自分の意見を変えるような不埒な男ですよ? それに、私が気付いてないと思って胸ばかりを凝視してくるような変態です」
彼女の名はシルヴィアと言うようで、コリンはシルヴィアにショウという男の感想を述べる。
「まあ、あの人も男なんだしね?」
「シルヴィア様! いけませんよ! あのような男、信用してはなりません!!」
「コリン。あまり、目くじらを立てるな。お前の言う通りなのかもしれんが、実力だけは本物だ」
「ブライアン殿まで……」
「とにかく、今は様子見でいいんじゃねえか? あの様子だとシルヴィア様を疑ってはいるけど詮索する様な動きはないし」
「コニーお兄様! 万が一という事もあるのですよ! もし、姫の身に何か起きたら責任を取れるのですか!!」
「もう、コリン! 大袈裟よ!」
「いいえ!! 大袈裟ではありません! 姫はもう少し男という生き物について危機感を持って下さい! ここにいる、ブライアン殿やコニーお兄様のよう男ばかりではないのですよ!」
「そ、それは分かってるけど……」
物凄い剣幕でシルヴィアに迫るコリン。姫と敬っている割には容赦がない。これでは、本当に敬っているのか疑わしいがシルヴィアにも敬語を使っているあたり、彼女にも敬意を払っているのだろう。
「でしたら、もう少し男という生き物には警戒するべきです! いいですね!?」
「は、はい……」
「今後、もしもショウと話すような機会があれば私達の誰かと同席なさるように! 分かりましたか?」
「はい……」
「心配し過ぎだと思うのだがなぁ……」
ブライアンがボソリとつぶやく。その、呟きをコリンは聞き逃さなかった。
「ブライアン殿! ブライアン殿は気付いてなかっでのでしょうが、あの男は私が泣き付いた時、どさくさ紛れに背中に手を回して来たのですよ!? 演技とはいえ、抱き付くのも躊躇ったのに……今思い出すだけでも鳥肌が立ちます!!」
哀れなり、ショウ。彼は結局、騙されていたのだ。女性というのは恐ろしいものである。いや、女性が恐ろしいのは当然ではあるが、ショウが騙されやすいという事の方が問題なのである。このままでは、ハニートラップにより命を落とすのは明白であろう。
しかし、残念な事に彼はこの事を知らないのである。彼は見事にコリンに騙されてしまい、まんまと嵌められてしまったのだ。非常に悲しい事ではあるが、コニーのフラグは完全に消滅した。この事実を知った時、彼はきっと暴れ狂う程怒るだろうが、そんな度胸はない為心の中でヒッソリと怒るだろう。
「ショウは可哀想になぁ……まさか、コリンが反乱軍一の諜報部員だったなんてな」
「話を聞いた時は、期待したのに………あの様な変態だったとは私にとって一生の不覚!」
「気にするな。変態だとしても実力はある。戦力になれば問題なかろう?」
「背に腹は変えられませんが、姫にもしもの事があればその時は……」
そこから先は言わなかったが、コニーとブライアンは知っていた。以前、シルヴィアの湯浴みを覗いた男がコリンによって死ぬよりも酷い目にあった事を。二人は、心の中でショウに同情して手を合わせたのであった。
「それよりも、これからはずっとこのペンダントと甲冑を着てなきゃいけないのよね?」
「勿論です! その声を変えてくれるペンダントと甲冑は必ず着用してください。私達、反乱軍は姫の事を把握してはいますが、あの変態だけは別ですから。姫の正体を知られる理由にはいきませんからね」
もはや、名前すら呼ばれなくなったショウ。彼は変態のレッテルを貼られ、二度と剥がされる事はない。ショウのいない所では、きっと永遠に変態呼ばわりが当たり前となるのは決定事項だ。
「でも、いつかは教えてもいいわよね?」
「あの変態が信用するに値のある男になればですね。まあ、一生無いでしょうが」
「そんな事ないかもしれないわよ? もしかしたら、案外コリンの方が」
「断じて有り得ません」
「は、はい」
コリンに鼻と鼻がくっつく距離まで詰め寄られたシルヴィアは有無を言わせないコリンの迫力に負けて頷くしかなかった。
「まあ、コリンの理想はショウとはかけ離れてるもんなぁ」
「当然です! あんな変態を好きになるはずがありませんから! まだ、コニーお兄様の方が百倍マシです!」
「そこまで言うのかよ……ハハッ、ショウの奴、可哀想に」
「私たちではどうする事も出来ん。コニー、私達がショウにしてやれることは拝んでやる事だけだ」
「ブライアンさん……そうっすね。それくらいなら俺らでも出来ますね」
「ああ」
そう言うと二人はそっと両手を合わせて、この場にいないショウを憐れんだのであった。
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