街へと着いたら
「それで、貴様らは何故縛り付けられてるのだ。答えよ」
「……」
「なんだ、答えられないのか? さほど難しい質問はしてないのだがなぁ……ふんっ!!」
「うぎゃああああああっっっ!」
なっ!?
あの野郎、縛り付けられてる兵士を斬りやがった!!
「さあ、早く答えよ。また、うっかり手が滑ってしまうぞ?」
「ひっ……」
俺は飛び出そうかと考えたが、足を止めてしまう。あの兵士達は俺にとっては敵で助ける義理など無いのだ。しかし、このまま黙って見過ごすのも後味が悪い。折角、生きたまま兵士達を縛り付けておいたのに、皆殺しになんてされたくない。
そう!
俺の労力が無駄になってしまう!!
うんうん!!
俺は兵士達を助けようと決意し、物陰から勢いよく飛び出す。
「そこまでだぁっ!」
突然、現れた俺に驚く男と兵士達。まさか、俺がいきなり現れるとは予想も出来なかっただろう。
「貴様、どこから! いや、何者だ!?」
「ふっ、名乗る名など無い!!」
「くっ、貴様らは後回しだ!! あのふざけた奴を捕まえろっ!」
男は周りにいた兵士に命令を下す。兵士達が一斉に動き出し、俺を捕まえようと迫ってくる。建物の上へと飛び上がり、兵士達から逃げる。
「建物を破壊しても構わん! 魔法を放て!!」
「はっ!!!」
兵士達が一斉に魔法を放つ。俺は建物から建物へと飛び移り魔法を躱していく。
住民の皆さん!
ごめんなさい!!
建物壊れちゃったけど許してね!!
心の中で謝りつつ、兵士達の魔法から逃れる為に建物の上を駆け抜けていく。次の建物へと飛び移ろうとしたら、建物は既に全壊だった。諦めて、地面に着地すると周りを囲まれてしまう。どうやら、これが狙いだったようで無闇矢鱈に魔法を撃ってた訳では無かったらしい。
うぬぅ、なかなかやるではないかっ!
「よし。そのまま包囲しつつその男を捕まえよ!」
「はっ!!!」
一斉に魔法を放ってくるかと思われたが、数人が魔法を放ち他の数人は詠唱している。魔法を躱して逃げ出そうとしたが、詠唱を終えた数人が手を振りかざすと光の鉄格子が現れた。
「なにっ!?」
光の鉄格子はガシャンガシャンと音を立てると、俺の四方八方を塞いだ。これで完全に逃げ道は無くなり、兵士達の格好の的になってしまった。
「ふふふ。どうだ、これでもう逃げる事は出来んだろう」
「それはどうかな?」
「ほう、いつまで強気でいられるかな? この男は死にたいようだ。全員、問答無用で撃てっ!!」
男の命令に従い、兵士達が魔法を放つ。四方八方からの容赦ない魔法が襲ってくる。夥しいほどの魔法がぶつかり爆炎を上げると俺の姿を消してしまう。
「ふふっ……跡形もなく死んだか」
「誰が死んだって?」
「何っ!? 馬鹿な!! あれだけの魔法を同時に受けていながら何故無傷でいられる!!」
「バーカ。この光の鉄格子は俺を捕まえるだけで大した効果が無いから障壁を張れたんだよ。だから、全部の魔法を防いだのさ」
「くっ! ならば、障壁が張れなくなるまで魔法を撃ち続ければいいだけだ」
「やってみな!」
「奴が障壁を維持できなくなるまで魔法を撃ち続けよ!」
兵士達が再び魔法を撃ってくる。先程と同じように障壁を張り魔法を防ぐ。どちらが先に魔力切れを起こすか我慢比べといこうか。負けるつもりは全くないので、俺は障壁を張り続ける。
どれくらい経ったのだろうか。段々と魔法の量が減ってきたのだ。どうやら、兵士達の何人かが魔力切れを起こしたようだ。このままいけば全員が魔力切れを起こすのも遅くないだろう。大体、俺と兵士達じゃ魔力量に差がありすぎるはず。
まあ、兵士達の平均レベルが幾つか知らないけど俺より下なのは明らかだよね!
余裕のある俺は欠伸をしてしまう。それから程なくして魔法が止まる。どうやら、終わったようだ。あれだけの数がいても障壁を破壊する事が出来なかったのは悔しい事だろう。
「なっ……そんな馬鹿な……あれほどの量の魔法を全て防ぎ切ったというのか?」
「見てわかるだろ? それじゃあ、こっちの番だな」
光の鉄格子を掴み、力任せに破壊した。それを見た男は驚愕の表情を浮かべる。
「さあ、少しは楽しませろよ?」
「ひっ……だ、誰か。この男を取り押さえろ!」
しかき、誰1人として返事はしない。それもそのはずだ。何せ、兵士達は魔力切れを起こしておりまともに立っている者が1人もいないのだから。唯一、立っている者と言えば俺の目の前にいるこの男だけだ。しかし、偉そうな事ばかり言ってはいるがこの男、大したことは無さそうだ。
これなら、最初に来た槍使いの隊長の方が歯ごたえがあった。こういう男はほんの少し脅せば腰を抜かして、尻餅をつくだろう。
「覚悟しやがれっっ!!」
「ひぃぃっ!」
本当に腰を抜かして尻餅をついてしまった。男の情けない姿を見て兵士達は何を思うだろうか。チラリと兵士達の方を振り向いてみると、男を置き去りにして逃げ出そうとしてる兵士ばかりだった。
誰一人として上司を助けようとする者はいなかった。やはり、この国の兵士達は想像通りに腐っているようだ。1人でも上司を助けようとは思わないのか。
俺は男の顎を蹴り上げて気絶させると、逃げ出そうとしている兵士達を少しビビらせながら縛り付けた兵士達の元へと向かう。
はあ……連携だけは凄いのに根性がなぁ
不定期更新ですが、よろしくお願いします




