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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第二章

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大ピンチ

 どういうことだ。俺達は確かに帰還用の魔法陣に乗ってダンジョンの外へと転移した筈だ。四方を壁に囲まれた、何処かの部屋かはわからないが閉じ込められている。



「何あれ……」



 清水沙羅が何かを見つけたのか指を差す。その方向に俺達は顔を向けると、そこには巨大な何かがいた。



 ちっ!


 暗くてよく見えない!



 俺がそう思った途端に部屋に明かりがついた。よく見ると蝋燭のようなものが部屋の壁についている。そして、部屋の中にいたのは巨大な魔物だと判明した。



「エル・カローン……!」



 姫様がそう呟いた。桐谷達が姫様にあの魔物のことを聞いている。



「クリス! あれは一体なんなんだ?」


「あの魔物は……」



 姫様は震えている。答える余裕がなさそうだ。だが、姫様は小さい声で魔物について話し始める。



「厄災の骸龍……伝説の存在です……」



 厄災の骸龍?


 あれがか?


 確かに見た目は骨だけど皮はあるぞ?



 龍に見えなくも無いが、寝ているせいでよくわからないな。もっと近くによる必要があるかと思ったが、ここは桐谷達の会話を聞いておくべきだろう。



「クリスお願いだ。説明してくれないか!?」


「厄災の骸龍。この龍は竜族ではなく魔物に分類されます。遥か昔この魔物によって一国が滅びました。でも、あれは御伽噺のようなものだったんです……」


「国が滅びた……」


「そんな……」


「嘘……」



 全員、姫様の言葉に顔を青くする。もしその御伽噺が事実ならばウル・キマイラの時以上の絶望感だろう。あの時はまだ退路があった。だが今は広いだけでどこにも隠れる所も逃げる通路も無い。まさに八方塞がりと言うことだ。



 まだ、あいつは寝てるがいつ目を覚ますかわからない!!



 俺は何か無いかと周りを見渡す。すると、骸龍の後ろに僅かだが蝋燭とは違った明かりが見えた。



 もしかしたらあれは出口では無いのか。だがもしだ、違ったらどうする。余計なことを考えてしまう。



 他に道はないか……


 試してみるか……



 だが、その為にはこいつらの協力が必要だ。俺は諦めている五人に近づき話しかける。



「君達まだ諦めてはダメだ」



 俺がそう言うと桐谷以外の女性陣が俺に食って掛かる。



「何よ、なんとかできるんですか!!」


「そうですよ!! 少しは考えてください!!」


「そうだ!! さっきの話を聞いていただろう!! 無責任なことを言わないで欲しい!!」


「冒険者なら一番わかってるんじゃ無いんですか!?」



 えらい言われようだな……


 つうか、こいつら骸龍にやられる前に俺がやったろうか?



「みんな落ち着け。何か考えがあってああ言ってくれたのかもしれない」



 桐谷に助けられたか……


 それにしてもこいつら桐谷の言うことなら聞きやがる!!


 マジでぶっ殺してえ!!!


 ふう……落ち着け俺!


 冷静になるんだ!



「実は、あの骸龍の後ろに僅かだが蝋燭とは違った明かりが見えるんだ」



 俺が指差すとその方向に全員が目をやると、確かに蝋燭とは違う明かりがある。どうやら全員信じてくれたようだ。作戦を話すとしよう。



 俺は簡潔に全員に説明をした。奴は今は、眠ってるがいつ目を覚ますかわからない。だが、今なら奴の後ろに回りこむことが出来る。



 俺が奴の正面にいる。もし、奴が目覚めたとしても俺に注意を引き付ける。その隙に後ろの明かりが、何なのかを確認する作戦だ。



「頼めるか?」


「はい! どのみち、やらなきゃ生きてられませんから!」



 桐谷がそういうと他の四人も同じように頷く。こいつら本当桐谷が大好きだよな。



「作戦開始だ」



 おおー!!と奴を起こさないように小さい声で叫ぶ。桐谷達が後ろに回りこむように骸龍の方へと向かった。



 さて、俺は俺の仕事をこなすか!!



 桐谷達が骸龍の後ろに回ろうとした時、骸龍が起きた。最悪の展開。だが桐谷達には向かせない。その為に俺がいるのだから。



 起きたことにより桐谷達が全員立ち止まってしまった。予想外の事で頭がパニックを起こしているに違いない。



 何してんだ!


 あいつら!!



「立ち止まるなぁ!! 走り抜けろ!!」



 俺は叫ぶと同時に黒蓮と白夜を取り出し骸龍に撃ちまくる。



「グルルルルアアアアアアアアア!!」



 しかし、全く効いていない骸龍は起き上がり俺に向かって爪を振り下ろす。



 うおっ!!


 あぶねえ!



 その一撃で地面が抉れる。地面だけだと思ったら壁まで崩れた。恐ろしいほどの威力だ。俺はなんとか避けたがローブが少し切り裂かれている。



 掠っただけでもアウトというわけか……



「これならどうだ! ディヴァインバレット!!!」



 俺は光属性の弾丸を眉間に向かって放つ。しかし骸龍に当たるもののダメージは無かった。



「くそっ! なら、来い! グングニール!」



 グングニールを取り出す。こいつは何度も俺の戦いに貢献している。恐らく今までの戦いで一番使用している武器だ。



 さぁ、貫け!!



「グングニールゥゥゥウウウ!!!」



 全力で骸龍にグングニールに投げる。これなら貫く筈だと確信していた。だが骸龍はグングニールを避ける。しかし、完全には避けきれず肩を貫くこととなった。



「ガアアアアアアアア!!!!」



 骸龍が痛みを負って叫ぶ。口が光り出すと、その光りが俺に降り注がれる。



「アイギスの盾!!」



 俺は咄嗟に防御をするが骸龍が放った光はとても防げるものではなかった。俺は完全に防ぎきれずダメージを負ってしまう。


「あが……」



 なんて威力だよ……



 全身の筋肉が骨が悲鳴を上げている。ローブの男と戦って以来だ、この感じを体感するのは。俺はなんとか立っているものの内心焦っている。時間稼ぎが精一杯だと。



 あいつらは無事に辿り着いたんだろうな。



 俺が余所見をした瞬間に骸龍が尻尾を振るい吹き飛ばされる。



「グオオオオオオオオオオオ!!!」


「がっ……!」



 そのまま俺は壁に叩きつけられた。その攻撃で、俺が付けている仮面が砕けて壊れる。だが、仮面のことなど気にはしていられなかった。内蔵が潰れたのではないというほどの攻撃を貰ってしまった。



 口から血を吐く。どうやら本当に内蔵がやられたみたいだ。



「げほっげほっ!」



 ビチャビチャと血を吐き出す。口の中に鉄の味が広がる。



 久々に死にそうだわ……



「ゴアアアアアアアアアアアアア!!」



 勘弁しろよ……


 全く……



 俺は壁が崩れるのと一緒に落ちる。意識が朦朧としていた俺は、意識を繋ぎとめる事も出来ずに目を閉じる。



 過去最大の大ピンチってやつだな……


 はぁ……こんな依頼受けなきゃよかった!

改訂済み

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