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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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もう一匹

不定期更新ですが、これからもよろしくお願いします


 戦闘態勢に入ろうとしたが、ウォルテクスの首が予想よりも素早くて態勢を整えることが出来ない。



「くっ!」



 あのドデカイ図体でなんて素早さだ。こちらが攻撃を仕掛けようとする前に首が伸びてくる。大きな口を開けて、俺を丸呑みにしようとする。



「ッッ!!」



 後ろに飛んで口から逃れる。大きな口を閉じて、首を元に戻すウォルテクス。こちらを睨みつけてくる。



「強いと言う割には手を出して来ないのだな。逃げるだけでは俺に勝てんぞ?」


「はっ。今から反撃すんだよ!」


「そうか。ならば、死ね」



 ウォルテクスの言葉と同時に影に覆われる。後ろを振り返ると、尻尾が高く振り上げられていた。橋の反対側にあった尻尾をウォルテクスが振り下ろす。



「うおおおっ!!」



 横に飛んで躱すが、尻尾の衝撃は凄まじいもので吹き飛ばされてしまった。幸い、大した怪我は負わなかったが直撃していれば無事ではすまなかった。



「余所見をしている余裕があるのかっ!」


「なっ!!」



 尻尾に気を取られ過ぎていた俺はウォルテクスの口に捕まってしまう。



「このまま飲み込んでやる!」



 口を閉じようとするウォルテクスの口の中で俺は両手両足を使い口を閉じさせないように踏ん張る。



「ぐぅおおっ!!」


「足掻くな、人間め!」



 口を閉じる力がさらに増す。次第に口が閉じていき、伸びきっていた足も腕も曲がり、屈むように身体が縮こまる。このままだと、本当に飲み込まれてしまう。腹の中からぶち破るという手もあるが、リスクが大きい。だから、なんとしても今ここを脱出しなければいけない。



「ぐっ……くくっ……」



 完全に口が閉じてしまう。だが、まだ飲み込まれてはいない。しかし、最早時間の問題となってしまった。飲み込まれるわけにはいかない俺は魔力化を施す。



「はああああっ!!!」



 勢い良く両手両足を伸ばして口をこじ開ける。



「ぬわっ!」



 一瞬だけ怯んだ隙に口から飛び出す。橋に着地すると、同時に振り返り魔法を放つ。



「雷龍弾!!」



 雷の龍がウォルテクスの喉に突き刺さる。



「ぐわっ!」



 魔法が効きにくいと思っていたが、そうでもなかったようだ。ウォルテクスはかなり苦しんでるようだ。追撃を仕掛け、魔法を連発するがウォルテクスは海の中へと潜ってしまった。



 逃げたのかと思い、橋の上から海を覗いてみる。ウォルテクスらしき影はどこにも見当たらない。覗くのをやめて、橋の中央に戻ると、ウォルテクスが水の壁で塞いでいた橋が通れるようになっていた。



 今の内に先に進んでしまおうとした時、背筋に悪寒が走った。辺りを見回すが何も見えない。勘違いかと思われたが、巨大な魔力の接近を感じた俺はその方向に目を向ける。



「なっ!?」



 眼前に迫っていたのは青白い閃光。今からでは到底避け切れないと判断した俺は障壁を張り巡らせた。何重にも重ねた障壁は次々と砕かれていく。



「くっ……あぁぁあああああああ!!!」



 魔力を最後の一枚に込める。何とか、青白い閃光を防ぐ事に成功したが、大分魔力を消費してしまった。もう一度、先程の青白い閃光が来たらまずい。俺は魔眼を開放して魔力の発生源を探す。



「ちっ。そこか!!」



 どうやら、ウォルテクスが離れた場所から撃ってきてるようだ。奴は逃げたのではなく、確実に仕留める為に敢えて逃げたように見せて離れただけだった。今も、口には大量の魔力が集束している。もう一度、先程の攻撃を仕掛けて来るのだろう。



 だが、わかりさえすればどうという事は無い。



 魔力の充填が出来たようで、ウォルテクスは口から魔力砲を撃ってきた。しかし、来る方向も分かっている俺には脅威ではない。



 異空間から斬魔を取り出して、魔力砲を切り裂く。そのまま、橋を飛び降りて魔力障壁を空中に展開する。魔力障壁を足場にしてウォルテクスの元まで空を駆けて行く。ウォルテクスの目の前まで来るとウォルテクスが驚いていた。



「な、何故ここが分かった!?」



 こいつは馬鹿なのかな?


 攻撃された方向で大体の予想はつくのに。


 まあ、俺には魔眼やら道具やらで居場所なんてすぐに突き止められるけど。



「細かいことはどうでもいい。俺も少し手加減をしすぎた。決着をつけるぞ!!」


「くっ! 殺してやる、人間風情があっ!」



 ヤケクソになったのかウォルテクスは真っ直ぐ俺を噛み殺そうと口を大きく開けて首を伸ばしてきた。俺は横に飛び、ガラ空きになった首を切り落とそうと斬魔を振り上げた。



「おしまいだっ!!」



 斬魔を振り下ろそうとした時――



「ちょい待ちっ!!」



 懐かしい声が聞こえた。俺は首を切り落とす寸前で斬魔を止めて声のした方向に顔を向ける。そこには、もう一匹のリヴァイアサンことエドラドスがいた。



「エドラドス、まさか助太刀にでも来たのか?」


「ちゃうちゃう。そんなアホなんて助太刀せえへんわ。でも、この世でただ一匹の同類やからな」


「……そう言ってるぞ、ウォルテクス」


「くっ……殺すなら殺せ」


「だとさ。殺していいか?」


「いやいや、ワイが止めた意味が無いやんけ!」


「じゃあ、どうする?」


「少し、ワイに時話す間をくれへんか?」


「別にいいよ。いくらでも話せばいい」


「ありがとな、ショウの兄ちゃん」



 俺はウォルテクスとエドラドスを二人きり、いや、二匹きりにして橋へと戻った。そういえば、クロはどこに行ったのか探していたら、バイクのシートで寝ていた。あれだけの戦闘があったというのに、気楽なものだ。いや、よく被害に巻き込まれなかったのが正しいか。



 とりあえず、クロをどかしてバイクのエンジンをつける。走り出そうとしたら、エドラドスとウォルテクスが戻ってきた。



「ショウの兄ちゃん。一つだけ頼みを聞いてくれへんか!?」

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