同化
「何か良い案とか無い？」
「……無い！」
「ウンディーネたん……使えないね」
「たん言うなっ！！」
マジで本当にやばい。
なんたって障壁を数十枚張り巡らせてるもの。
だけど最悪な事に、一発で破壊されてる。
先程からずっと障壁を張り巡らせている。
魔力が底をつきそう。
「もう少し耐えれるか？」
「なんとかね〜。ウンディーネたん、早く本題に入っておくれ」
「たん……うむ……」
全神経を障壁に注ぎ込み、クレアの魔法を防ぐ。その間にクレアの秘密をウンディーネに話してもらう。
「あの者が何故、何もない場所から魔法を放てるのか。それは簡単な事だ」
「前置きとかいいから、手短に！！ 障壁を張る速度よりも早く魔法を撃ってきやがるから！！」
「ちっ……」
「おい、今舌打ちしたよねっ！？」
「知らん。まあ、簡単に話せばあの者は精霊王達と同化しているのだ」
「精霊王と？ それって七大精霊王？」
「そうだ。その七大精霊王達の私以外があの者と同化しており、魔法を行使しているのだ」
「強いのは分かったけど、なんで何もない場所から魔法が撃てるのかが分かんないんだけど？」
「精霊王は魔力そのもの。すなわち、空気中、いや、世界に満ちている魔力を行使出来る。故に何もない場所からでも魔法を繰り出す事が出来るのだ。しかし、本来ならば同化した程度では使えるような代物ではない」
「じゃあ、なんで使えてんの？」
「推測ではあるが……今あの者は本能で戦っておるだろう？ つまり、同化している精霊王達にもその影響が反映されて使えているのだろう」
「うーん……いや、でもクレアは普通の状態でも使ってたぞ？」
「ふむ。それは私も覚えている。確かあの時は私達精霊王の意思が一つになり上手く扱えたのであろう」
「……その話が本当なら今のクレアは精霊王そのものって事で良いの？」
「そうなる」
「なるほど……所で、なんで精霊王達はクレアと同化してんのよ？」
「うむ……それは……」
「それは？」
ちなみに、今も尚、機関銃のようにクレアが魔法を乱射しています。冷静に話をしておりますが、実は必死に障壁を張り巡らせております。若干ではありますが、汗を掻いております。
「間を置かなくていいから早くっ！」
「もう少し焦るお前が見たかったのだが。まあ、いい。あそこにいる男によって捕まってしまったのだ」
ウンディーネが、指をさした方へと顔を向けると案の定クワトルがいた。
「だいたいわかったけど……一体いつ捕まったんだ？」
「お前と会った数日後に捕まってしまったのだ……情けない話だが慢心していてな。精霊王たる私が捕まるとは思ってもおらず、軽く蹴散らしてやろうとしたら……」
「はいはい。どうせ、変な装置で魔法が使えなくなって簡単に捕縛って訳でしょ？」
「なっ！？ 見てたのか！？！？」
「そんなもん見てなくても簡単に想像出来るわっ！」
しかし、クレアのあの尋常ではない魔力量に何もない場所からの魔法も全て分かった。わかったはいいが対処法が何一つとして思い浮かばない。
使いたくないが……太陽の鎧でゴリ押し！
これ決定や！！
「そこで一つ提案がある」
「えっ？ 提案？ 使えるの？」
「お前は私をなんだと思ってるんだ！」
「ポンコツ幼女精霊王ウンディーネたん」
「き、貴様は一度痛い目を見なければならないようだなぁ……！」
「まあ、落ち着け。早く提案とやらを教えておくれ」
「ぐっくくく……はぁ……。目には目を歯には歯をだ」
「…………まさか、ウンディーネたんと同化をしろって事か？」
「そういう事だ」
断りたいが、太陽の鎧を使わなくていいなら……
よしっ！！
「オーケーだ。ウンディーネ！ 同化しようぜ！」
響きがいやらしい。
幼女に向かって同化しようぜ！ ってなんかいけない事してるみたい。
「ちなみにだが、私達はあの者と無理矢理同化させられたのだ。故に本来の力を満足に使えなくなってしまったがな」
「ん？ って事は今は本来の力が使えてるって事か？」
「ああ。だから、今も障壁を張り巡らせて持ち堪えてるお前は既に精霊王にも匹敵する程の力を有している。誇りに思うといいぞ」
「マジか！ そいつは嬉しい情報だな！」
「それでは力を抜け。同化を始める」
「…………いやいや！ 今力を抜いたら障壁を全部壊されてしまうやん！ そんなのダメじゃん！」
「ええい！ なんとかしろっ！」
「無茶言うなよ！！ ウンディーネたんも精霊王なら少しは反撃でもして見せてよ！」
「したとしても雷属性で返り討ちだ」
「使えねぇ！！ マジでポンコツ幼女じゃねぇか！」
「ポンコツ、ポンコツ言うなっ！ いい加減泣くぞ！！ いいのか泣いても！？」
「目尻に涙を浮かべるな！！ 精霊王ならもう少しメンタルも鍛えておけよ！」
「くぅうう！！ もういい！！ 多少、痛みを感じるが同化するぞっ！！」
涙を拭ったウンディーネが俺の身体へと触れる。すると、ウンディーネの身体が溶け出して俺の身体へと飲み込まれていく。ウンディーネの身体全てが俺の身体へと飲み込まれた。
いでででででっ！！！？？？
ちょっ！！！
シャレになってない！！
がぁあああ！？！？
ぐっぅうううう！！
（ふっ。ざまぁみろ）
この声は！
ウンディーネたん！！
（貴様は頭の中でさえも私を……はぁ……もういい。怒るのも疲れた）
おおう。
てか、ヤヴァイわ。
多分、障壁全部壊れる。
（何いっ！？！？）
