勇者達の護衛
喫茶店での出来事から数日が経った。ヒュドラを召喚した男は騎士団により連行された。セラさんから聞いた話だとあのヒュドラを召喚した男は黒いローブの男からヒュドラを召喚した石を貰ったらしい。
なんでもローブの男に話かけられ魔物が入った石をただで貰ったとのこと。アホかなのかと思う。普通そんな怪しさMAXの男なんか信じれるかと。
ローブの男か……
気の所為だろう。
最近、騎士団がよく街を徘徊している。街中にいきなり魔物が現れたから警戒しているようだ。俺にはあまり関係ないのでいつも通りギルドに向かう。
「あっ! ショウさん!」
「なんすか、セラさん?」
「はい。国から依頼が来てるんですが受けて見ませんか?」
「国からなんの依頼が?」
「えっと、勇者達の護衛ですね」
「俺以外は?」
「現在Aランクはショウさんだけしか居ないんです。それとこの依頼一人だけらしいですよ。なんでも騎士団も護衛に入りますから冒険者から一人だけということです」
「マジですか……」
「マジです」
こうして俺は勇者達の、つまり俺のクラスメイト達の護衛になることが決まった。面倒なことにならなければいいがと思うが、きっと無理だろう。
◆◇◆◇
時は移りショウが依頼を受ける前日のこと。学園の方ではショウを見掛けたクラスメイトが大慌てで鉄人の所へと向かっていた。
「鉄人、大変だ!!」
「先生と呼べといっとろうが!」
「それどころじゃ無いんです!」
「何かあったのか?」
「実は俺達山本を見たんですよ!」
「何ぃっ!!??」
あの日喫茶店にたまたま居合わせた四人が陣内鉄也にショウを見たという報告をする。その報告を聞いて驚きの声を上げる陣内鉄也。それもそのはずショウは行方不明となっていたからである。
何故、ショウが行方不明になっているかというと初心者用ダンジョンにウル・キマイラが現れ、それを一人で戦っていたからである。
ウル・キマイラは倒されていたがそこにはショウの姿がどこにもなかった為に行方不明となったのだ。
「今すぐに探しに行きましょう!」
「そうです! そうしましょう!」
クラスメイト達が鉄人を引っ張り連れて行こうとする。だが、鉄人はいい返事をしなかった。
「今すぐに行きたいのだが明日のことがな……」
「明日って……あっ!」
「確かダンジョン探索が……」
明日はダンジョン探索があるのだ。学園の授業の一環である為受けなければならない。流石にサボるわけにはいかないと真面目な鉄人には出来ない。
「ダンジョン探索が終わったらすぐに探しに行こう!」
鉄人は明後日探しに行こうと提案したのだ。その言葉に生徒達も頷く。探すのは明日が終わってから。ショウを探しに行くことはクラスメイト全員に伝わった。もちろん桐谷大輝にも。
桐谷大輝は、以前にある事件でショウに命を救われていた。彼はそのことを謝りたいのと感謝をしたいと思っている。
だが、ショウにとっては厄介払いをしたに過ぎないため感謝などされても困るだけだ。そんなことは彼は知らない。
そうして、一日が終わりダンジョン探索が始まる。
◆◇◆◇
どうするか?
流石に素顔のまま行ったらバレてしまう。それだけは避けたい。もしバレてしまえば連れ戻されて自由がなくなってしまうから、そんなのは絶対嫌だ。
俺は今の生活が楽しいのにそれを壊されるのだけは嫌だ。ていうか、あんな灰色の青春時代に戻りたくない。
俺は仕方なく適当な仮面を作って俺だと言うことをバレないようにしてダンジョンへと向かう。そして、勇者達の待つダンジョンへと辿り着いた。まずは依頼主の騎士団のところへと俺は向かう。
団長久しぶりだな……
「本日の護衛の依頼を受けた冒険者です」
俺は仮面を付けローブを深く被り素性を隠しながら団長に挨拶をする。
「君が今回の護衛の依頼を受けてくれた冒険者か? 何故顔を隠す?」
「以前に魔物との戦いで顔に深い傷を負ってしまい人前に触れさせたくないのです……」
「そうか。それは失礼した」
「いえ、わかっていただいてありがたいです」
そう言って俺は団長との挨拶を終える。俺は団長の元から去ろうと振り返り歩き出したら団長に引きとめられる。
「待ってくれ。今回の護衛なんだが勇者達とは言っていたが学園の生徒もいる。五人一組のパーティなので君に護衛してもらいたいパーティは彼らだ」
俺が団長の差した方を向くとそこには見知った顔がいる。桐谷大輝達だった。それに姫様もいやがる。確か名前はクリスだったな。どうやらあいつもリア充グループの一人になったか。
少しは強くなってんだろうな?
俺は桐谷達の元へと歩いていく。とりあえず挨拶をしておく。
「今回君達の護衛の冒険者だ。よろしく頼む」
「はい! よろしくお願いします!」
俺は桐谷と軽く挨拶を済まして離れようとしたら姫様が絡んで来た。
「お待ちください。護衛というのならお顔を拝見させては貰えないでしょうか?」
「ふむ、クリスの言う通りだな。仮にも私達を守ってくれるのなら顔くらいは確認しておきたい」
チッ、こいつら面倒臭いな……
「二人ともやめろよ。この人にも何か事情があるんだ」
「しかし……」
桐谷の一言により二人は押し黙る。まあ、惚れている相手にそう言われたら従うしか無い。
「でも、大くん顔を隠してるなんて、なんか怪しくて信用できないよ」
くそっ!
こいつ正論言いやがった。
確かに、今の俺は仮面を付け顔を隠しローブを深く着ていて俺だと言うことを隠している。見た目だけで言うなら、怪しいただの不審者だ。捕まってもおかしくない。
「確かにそうだな。すいませんが仮面をとっては貰えませんか?」
やはりこうなるか……
仕方ない……
団長と同じように適当に騙すか……
「すまないが仮面を取ることはできない。以前に魔物との戦いで顔に深い傷を負ってしまってその傷を隠しているんだ」
「そ、そうだったんですか。すいません。失礼なことをしてしまって」
「いや構わない。確かに怪しいのは事実だからな」
そう言うと桐谷達は苦笑いをする。気まずいので俺は桐谷達から離れることにして少し遠くから見るようにした。
「さて、これよりダンジョン探索を行う!各自準備は良いか? それでは開始!」
こうしてダンジョン探索が始まり俺の勇者達の護衛が始まった。
改訂済み




