仲間に加わった
ジンが俺に振り返り、疑問形で話して来る。その間も容赦なくキャサリンは攻撃の手を緩めない。見えない衝撃波がジンを襲い続ける。
「いや〜、参ったなぁ〜。仲間になってくれそうに無いわ〜」
「随分と余裕ね〜、元隊長〜?」
「元隊長にこの仕打ちは酷くね?」
「だってぇ〜、上からの命令だし〜」
「お前、それで良いのか?」
「何が〜?」
「そうやって上の連中に犬の様にこき使われてて良いのかって。お前はそういう風に縛られるのが嫌な奴だろう? こっちに来た方が楽だし面白いぞ」
「ん〜、そうだけど…………でも、そっちについてもメリット無いよね〜。こっちに入ればお給金貰えるし〜。それにここで隊長達を倒せば事実上私が最高戦力になるじゃ〜ん? って事は〜、お給金も増えるしで万々歳じゃん」
「むっ……確かに」
「そんな訳で〜……死んでくんない?」
見えない衝撃波の威力が増したのか、ジンが僅かに後退し始める。どんどん後ろへと追いやられて行き、俺の眼の前まで下がってきた。
「おい、コラ。こっち来んな! 今の俺はか弱い乙女並みの弱さなんだぞ!」
「か弱い乙女とお前を一緒にすんな!! 気色悪いだろうがっ!!」
「例えだアホめ!」
「テメェ、俺がここから離れても良いのか!?」
ジンがもしもここから離れてしまえば、確実にキャサリンの攻撃が俺に襲い掛かる。そうなってしまえば、何の力も持たない今の俺ではバッドエンド間違いなしだ。そんなの絶対にごめんだ。
「すいませんでした。どうか、私めをお助けください」
「お前にはプライドと言うものが無いのか!」
「バカヤロー! 命とプライド、どっちを取ると聞かれたら俺は断然命を取る人間だ!! 下らないプライドを選んでまで死にたくは無いね!」
「お、おお……」
あまりの気迫にジンが若干引いている。だが、俺はプライドなんかよりも命の方が大切なのだ。よく、プライドを優先して死んだりする奴がいるが俺は違う。どんなに卑しかろうと生きる方が良いに決まっている。
「とりあえず、キャサリンをどうにかしろよ!」
「チッ。仕方ないか! キャサリン、最終警告だっ! 俺達の仲間になれ!! さもなくば、叩き潰す!」
さあ、どんな反応を示すんだ?
「…………嫌〜、死んで!」
「残念だ……」
ジンが防御態勢を解くと、俺と戦った時に使用したバスターモードを使う。
「バスターモード!!」
ジンの身体が光り輝く赤い粒子に包まれる。次の瞬間、ジンの身体がブレる。どうやら、残像を残して高速移動したようだ。これでキャサリンもお終いだろう。何せ、この俺でさえ、俺でさえも苦戦したのだから。大事な事なので二回言わせてもらった。
「うげえっ!?!?」
見えない衝撃波が突如として俺に襲い掛かり、派手に後方へと吹き飛んだ。後方にいたドレイクが俺を受け止めてくれた。
「おいおい……死にかけてないか?」
「……ひゅー……ひゅー……」
呼吸がおかしい。まともに息が出来ない。目も霞んでいるのかドレイクの顔がボヤける。ちょっと、冗談抜きでやばい状態だ。
まさか、キャサリンがジンの残像だと気付かずに衝撃波を放って来るとは思ってもいなかった。いや、初見ならあのジンが残像だと見破れなかったのだろう。だから、普通に攻撃をして来た。そして、残像だからすり抜けて後ろの俺に衝撃波が直撃したのだ。
くそっ……
気付かなかったのは俺の方か……
「デュ、デューク!! こ、これ、俺的にやばいと思うんだけどっ!!」
ドレイクは俺の容態が危ないと分かっているのか分からないが慌ててデュークに話し掛ける。
「……これは……早く……手当て……を……しなければ……死ぬぞ」
「うおおお!? 俺的に回復魔法は使えないんだよ!」
「俺……も……だ」
「お、おい!! 兄さん! あんた、まだ魔法使えないのか!?」
バ、バカヤローめ。
使えたらとっくのとうに回復しとるわ!
ぐっ……
くそぅ……
声も出せやしない……
お手上げだぜぇ……
そんな時、ドサッと誰かが倒れる音が聞こえた。僅かに首を動かして音のした方を向いて見ると、そこにはキャサリンが倒れていた。そのすぐ側にはタバコを吸っているジンが立っている。
「ほれ、キャサリンなら使えるぞ」
「うっ……うぅ……あんなの聞いてないよ〜……」
「あったりめえだ。アレはお前らにも教えてない俺の奥の手だからな。負荷が相当かかるが短い時間なら大した事はない。それよりも、キャサリン。そこのアホの身体を治してやれ」
「い……嫌――」
「嫌だ、なんて言わせねぇぞ? 断るならお前を殺す。俺の家族の恩人をお前は殺そうとしてるんだからな」
そうよっ!
その調子よ!
もっと言っておやりっ!!
「ゴホッ! カハッ!」
心の中で調子着いたのが悪かったのか、吐血してしまった。これは本格的にヤバくなって参りました。早く、早く回復魔法を施してくれ。このままでは三途の川を渡ってしまう羽目になってしまう。
「うっ……」
「キャサリン。こいつを救ったらお前も助けてやる。だから、な?」
「…………」
キャサリンは黙って俺に回復魔法をかけてくれた。身体の傷が治っていき、完全に回復した。
「マ、マジで死ぬかと思った〜!」
「ふぅ。間に合ってよかった。さてと、それじゃあキャサリン。お前も俺達とついて来い!」
「えっ? な、なんで? わ、私、隊長達を殺そうと――」
「知らん! 第一お前一人に俺がやられる訳が無いだろ! 普通に考えりゃわかんだろ!」
「あうっ……」
「それに、まあ、アレだ。お前は俺の大切な部下だからな。やっぱり、敵になって欲しくないんだよ」
「奥さんいんのに、浮気してますわよ?」
「本当ね〜。私的にアレは無いわねー」
「アタシも……そう……思う」
「ショウ、ドレイク、デューク。テメェ等、バスターモードでボコボコにしてやるからなっ!!!」
ジンは怒鳴り散らすがそれだけで何もしてはこなかった。そんなやり取りを見てキャサリンは笑い出した。キャサリンの目からは涙が流れている。笑って泣いたのか嬉しくて泣いたのか、よく分からんが仲間になってくれたので良しとしよう。
「さあ、あと少しだ!!」
更新遅くなり申し訳ございません。
不定期更新ですがこれからもよろしくお願いします。




