残りの内の一人
機甲兵がわらわらと押し寄せてくるが、最早全く意味のない事になっている。何故なら、突撃するドレイクにその後ろから援護射撃をするデューク。二人の快進撃により機甲兵は破壊されていく。
その後ろでは欠伸をして余裕綽々のジン。そして、体力が切れかけて荒い呼吸をしている俺。
「ぜぇ……はぁ……ちょっ、マジ無理……」
「いや、お前。さっき、休憩したばっかりだろ?」
「はぁ……はぁ……俺は素の身体能力なんだぞ……お前らみたいに……はぁ……はぁ……魔法で強化してないんだよ……ぜぇ………はぁ……」
「そうは言うけどな。これでも大分ペースを落としてやってんだぜ? 本当ならとっくのとうに着いていてもおかしくないんだぜ?」
「ぜぇ……はぁ……それは……わかるが……はぁ……でも、マジで無理なんだって……ゲホッゲホッ……」
「はぁ……仕方ないか。ドレイク、デューク!! 一旦休憩に入るぞ。ショウがこれ以上走れないそうだ!」
走る事を止めた俺はその場に倒れた。これ以上は歩く事すら出来やしない。立ち上がる体力さえ残ってないのだから無理もない。
「大丈夫か?」
「……ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……マジ、死ぬ」
「大丈夫そうだな」
「ち、ちくしょう……はぁ……はぁ……ぜぇ……」
ドレイクとデュークは倒れている俺を守るように辺りを警戒している。本当にこの二人には感謝の気持ちしかない。なんとか言葉で伝えたいのだが、喋るのも苦しいから出来るだけ寝ていたい。
「異常……なし……」
「こっちもだ!」
「……あいつ……なんで……こんなに……体力が……無いんだ?」
「んー、なんでも隊長助ける為にスキル使用したら代償でステータスが激減したらしいぜ」
「……そう……なのか……」
周囲の安全を確認した二人は会話を続ける。自然と耳に会話の内容が入って来るが、正直なところどうでも良い。今はとにかく身体を休めて体力回復に努めたい。
しばらく、床に寝続けて体力を回復する。ジンは壁に背をもたれ掛けて腕を組んで欠伸をかいている。ドレイクは暇を潰すためにスクワットを始めた。デュークは銃の手入れを始めていた。
ようやく、体力が回復した俺はゆっくりと立ち上がり筋肉を伸ばすようにストレッチをした。体力は回復したと言っても疲労は着実に溜まっている。早く、ステータスが元に戻って欲しいものだ。
ステータスカードを確認してみるが、依然とステータスは激減したままである。ざっと一時間以上は経っているのだが、元に戻らない所を見る限り数時間は戻らないと予想が出来る。
「ようやく回復したか」
「ああ。でも、回復したと言ってもまたすぐに体力が切れる思うわ。だから、もう少しペース下げてくんない? お前らに置いてかれないように走るのめっちゃキツイんだよ」
「俺的に、そんなに走って無いんだけどな」
「俺もだ……」
「お前が遅すぎるのがいけねぇんだよ、バーカ」
「なっ! バカとはなんだ、バカとは! 第一お前を助けた所為でこうなったんだぞ! いわば命の恩人なのにバカ呼ばわりするとかテメェぶっ飛ばすぞ!」
「ほほう? ぶっ飛ばす? 俺をか? 今のお前にそれだけの力があるのか??」
「くっ……ぐぬぬぬぬ!」
「隊長ー! あんましからかってると敵が来ますよー」
「もう……来てる……」
「わぁお! 俺的にはベストタイミングだぜ!」
俺とジンが口喧嘩をしていたら、いつの間にか機甲兵に囲まれていた。ドレイクが機甲兵に突撃して次々と破壊していく。一方デュークは、銃を構えようとした機甲兵を次々と撃ち抜いていく。
あっという間に俺達を囲んでいた機甲兵は一体も残る事なく破壊される。
「……もう、ジンはいらなくね?」
「はぁっ!? いや、お前、俺がいなきゃこいつら仲間にならなかったろうが!」
「ああ、いや、まあ、そうなんだが。今回はジン、役に立ってなくね?」
「テメェだって役立たずだろうがよ!」
「俺は仕方ないだろうが!! 一般人と同等かそれ以下になったステータスの俺にどうしろって言うんだよ!」
「そんなもん気合いでどうにかしろよっ!」
「無茶言うなっ!!」
再び俺とジンが口喧嘩を始める。そして、それをやや離れた場所から見守るドレイクとデューク。
「……仲が……良い……」
「俺的に新特殊機甲部隊って感じだな!」
口喧嘩の末、無駄に体力を使った事に後悔をする俺とジン。
「……喧嘩は止めよう……無駄に体力を使うだけだ」
「そうだな。腹も減るしで良い事なしだ」
俺達はハンナ救出に向けて歩き出した。迫り来る機甲兵はドレイクが破壊するかデュークが撃ち抜いているかだ。後ろからも前からも来るが大した意味はない。狙撃でもすれば良いのにと思うがこちらにデュークがいるので狙撃も出来やしない。
ただ、不安があるとすればまだ見ぬ特殊機甲部隊の二人だ。以前倒した相手ではあるが、今の俺では瞬殺間違いなしだ。お願いだから後の二人も仲間になって欲しい。
フラグが立ちそうな予感がするのでお願いは無しだ。
「おっと!」
突然、ジンが俺達の前に飛び出した。ジンが防御体勢に入ると目には見えない衝撃がジンを襲った。この技は見た事がある。あまり考えたくないが、どうやら残りの内の一人が出てきたようだ。
「キャサリンかぁ〜。仲間になってくれっかな?」
「俺に聞くなよっ!!」
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