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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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童貞のまま死ぬのは嫌だ

 精神面をズタボロにされた俺は、四つん這いの状態になっている。立ち直れないほどの言葉を受けた俺に立ち上がる力はない。



「童貞の何が悪いんだよ……ちくしょう……」



 ジンが懐から取り出した銃を俺の頭に突き付ける。



「おいおい、マジかよ。まさか、言葉だけでこんなになるなんて……まっ、楽でいいか。それじゃ、これで最後だ。しかし、残念だったな――童貞のまま死ぬなんて」



 ピクリと耳が反応する。とある言葉に敏感に反応する。脳の処理速度が今までで一番早いのではないかと言うくらいに、その言葉を解読した。



 童貞のまま死ぬ?


 そんな事…………


 そんな事!!!


 そんな事許せる訳ないじゃないか!!


 童貞のまま死ぬなんて!!


 俺は…………


 俺は!!!!!



「童貞のまま死んでたまるかっ!! 絶対に卒業してみせるっっ!!!!」


「なにっ!!??」



 ジンが引き金を引こうとした瞬間、ジンの手を掴んで引き金を引かせないようにした。そのまま、力任せにジンを投げ飛ばす。



「うおっとっと」



 着地をしたジンが体勢を整える。ジンは体勢を整えると俺の方へと顔を向ける。



「ハハッ。分かりやすい性格してんなぁ〜」


「俺は…………童貞のまま死にたくはないっ!」


「まあ、一度は女を知っておいた方が良いからなぁ」


「あんたは知ってんのかよ……」


「一応、妻子持ちだ」



 本日一番の衝撃的事実。身体中を駆け巡る電流。脳がその事実に処理がついていかずに焼け焦げた。



「あばば……ばばばば?」


「落ち着け。一応つったろ?」


「いびゃびゃびゃ??」


「…………話せば長くなるさ」


「うぺー」


「俺を倒したら教えてやるよっ!」



 勝手に話が進んで行き、ジンを倒すと詳しく聞かせてもらえる事に。ジンは両手から刃を出して俺へと向かって走って来る。対する俺は両手の刃に対抗するように異空間から干将・莫耶を取り出して待ち構える。



 ジンが間合いに入り、両手の刃を使って攻撃してくる。干将で右手の刃を受け止め、莫耶で左手の刃を受け止める。弾き返し、振り下ろし、受け止められ、また弾き返しと両の剣で攻防を繰り広げる。



 お互いの剣術は同じレベル。いや、実際は俺の方が上なのだがジンは戦闘経験が豊富なのか俺の剣と互角に渡り合っている。これが経験の差というものだろう。



 だが、俺だって負けてはいない。


 思い出せ。


『剣戟』と戦った時の事を!


 あの時に入ったゾーンを……


 もう一度、今……



 集中して徐々にジンを押し始める。ジンも負けじと両手の刃で激しく攻め立てる。



 徐々に、徐々に視界がクリアになってくる。世界が変わり、全てがスローモーションになる。ジンがどのように、どう振るって来るのかが手に取るように分かる。



 雑念は捨てろ……


 この一撃で!!



 ジンの攻撃を先の先まで見通し、全て受け流す。ジンも俺の変わり様に驚き、一旦距離を取ろうと一歩後ろに引こうとする。その瞬間を見逃さず、ジンの腕の刃を斬り落とした。流石に腕を斬り落とす事は出来なかったが十分な成果である。



「くっ……」



 ジンは刃を斬り落とされた事で表情を歪めると大きく後ろに跳び退く。



「雰囲気が変わったな。遂に本気って訳か?」


「元から本気だっ!」



 軽口を叩くジンの元に詰め寄り、干将を振り下ろす。ジンが干将を両腕を交差させて受け止める。莫耶で胴体を斬りつけようと振るうが足で受け止められてしまう。



「流石に片足じゃバランス悪いだろっ!」



 片足立ちになっているジンを蹴り、転ばせようとして蹴りを放とうと足を上げる。しかし、ここでジンの腹から機械音が鳴ると、何かの発射口が出てきた。



 ちょっと待って。


 それって……なに?



「オメガキャノン!! 発射!!」



 うひょおおおおおおお!?!?



 ジンの腹から発射された密度の高いエネルギー弾を間一髪のところで躱す。遥か地平線の先に着弾し、大爆発を起こすのかと思えば、辺り一帯を吸収するように消滅させた。



 なにそれ!?


 超怖いんですけど!


 てか、俺に当たってたら自分も消えてたよね?



「そんなん持ってるとか聞いてねえぞ!」


「まあな。一応、奥の手の一つだ」


「どんだけ奥の手があんだよ!」


「さあ?」


「馬鹿にしてんのか!」


「そう思ってんならそうなんじゃね?」



  ムカつく。


 腹立つ。



「上等! こっちもやってやるよ!! 陽炎焼天かげろうしょうてん!」



 手を上に翳し、空から超巨大な熱線をジンの頭上に降り注がせる。



「魔法ならッッ!?」



 ジンは魔法だと思い込み、左手で吸い込もうとしたが吸い込めず手が焼けると、慌てて熱線を避ける。しかし、焼けたというよりは鉄に熱が加わったら赤くなる様にジンの手も赤く染まっているだけだった。



「まさか、ただの太陽光とはね。どうりで吸収できなかったわけだ」


「ちっ。溶けないのかよ」


「かなりの熱耐性があるからな」



 そう言ってジンは赤くなった鉄の手を冷やすように右手から冷気を噴出した。急激に冷ますと鉄は脆くなるはず。だが、ジンの身体は鉄ではなかった。この世界の鉱石で作られた身体なのだから俺の知識は大して意味がないだろう。



「ふう……さあ、続けようか」

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