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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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特殊機甲部隊のジン

 一刻の猶予もない状況で、策を練るも焦りが思考を鈍らせる。残り時間は三十分。今の方法では列車は止められない。何かもっと列車を止められる方法では無いと間に合わない。



「あああっっ! くそっ!!」



 列車を少しでも止めようと剣を地面に突き刺し、グレイプニルで巻き付け固定するが列車の勢いに負けてすぐに剣が抜けてしまう。ほんの僅かに列車の速度を落とすのがやっとなのに。



 残り三十分で、列車を止めなければいけないとか無理ゲーだ。こんな時、頭のいい奴がいたら話は別だろうが。ハンナは頼らないし、おっさんはよく分からんし。



 どうすりゃいいんだよ!!


 こんなのどうにも出来ねーぞっ!!



「ぬぐっ!」



 バランスを崩しかけ吹き飛びそうになるが、何とか踏ん張り体勢を直す。後ろを振り返ると、小さくだが街が見えていた。もう、目と鼻の先といったところだろう。



 このままでは列車はイスカンテに突っ込み、大災害を招いてしまう。そうなれば、ここまで頑張った俺の努力が無駄になってしまう。折角、速度を落としたと言うのに。



 こんなにも苦労したというのに。


 こんなにも頑張ったのに!!!



「そんなん許せるかぁああっ!!!」



 魔力の出力を上げて列車を止めようと押し返す。剣の数を増やそうとするが、やはり魔力が保たずに気絶しそうになってしまう。速度は落ちてはいるが、止まる気配は無い。諦めて逃げ出したくなるが、ここまで来た以上は最後までやってやる。



「オォォラアアアアアアアア!!!」



 雄叫びを上げて列車を止めようと押すものの、勢い変わることなく進む列車。



 こりゃ無理ぽ。


 おいたん、疲れた。


 僕ちん帰りた〜〜い。


 お家帰りたいよ〜〜



 気を緩めた瞬間、列車の速度が増して一気に体勢が崩れて倒れると列車にはねとばされた。



 うひょぉおおおおおお!!??



「ぐえっ!」



 およそ、数十メートルを舞った俺は地面に頭から落下してしまう。魔力化を施している為、骨折などはしないが気持ち的に痛く感じてしまう。



 首を鳴らして起き上がり、列車へと向かう。一旦、列車に乗り込み、先頭車両へと向かいハンナとおっさんに何か作戦が無いか聞いてみる。



「二人共っ! 何かいい作戦とか無いか?」


「ショウさんが思い切り逆方向に引っ張ったらどうですか?」


「いや、それだと列車がもたなくて特殊燃料をばら撒くことになる」


「なら、さっきの方法は?」


「さっきのは速度を落とせても止めるまでいけない。だから、聞いてるんだよ!」


「うっ、すいません」


「おっさん、あんたは何かないのか?」



 沈黙を続けるおっさんに少し怒気の含んだ声で話をふっかけると、おっさんがゆっくりと口を開いた。



「凍らすってのはどうだい?」


「凍らす? この列車をか?」


「そうだ。具体的には特殊燃料だけでもいい。要は、特殊燃料や特殊物質が飛び散らなければいい話だからな」


「ふむ」


「君なら出来るんじゃないか?」


「凍らすか……確かに可能だけど」


「だけど?」


「列車を壊す事になりますよ?」


「それくらい問題ないだろう。このまま列車がイスカンテに突っ込んで特殊燃料と特殊物質をぶちまけるよりかは、遥かにマシだ」


「それも、そうですね。なら、早速やりましょうか。ハンナは俺と行くぞ。おっさんはどうします?」


「俺も出るよ。この列車と最後を共にするなんて出来ないからね」



 おっさんが先頭車両から飛び降りて、その後をハンナを抱えて飛び降りる。ハンナを抱えたまま走り出し、列車を追い越して線路の上に立ち、ハンナを下ろす。



「それじゃあ、ハンナ。少し離れてろ」


「わ、わかりました」



 ハンナが離れて行くのを見て、深呼吸をする。呼吸を整えて列車を見据える。魔力を高めて行き、列車を凍らす魔法をイメージする。



 俺に出来るイメージ……


 氷……


 マイナス……


 氷点下……


 厨二病!!



 列車が手の届く範囲に来た瞬間、列車に手を伸ばし触れると魔法を発動する。



絶対零度アブソリュート・ゼロ



 触れていた手をゆっくりと引き戻す。列車は見事なまでに凍りつき動きを止めた。



 やっぱ魔法すげぇわ。


 あの列車を一瞬で凍らせるとかどんだけだよ。


 いや、でも、それを成した俺がすげぇなっ!!


 へへっ!


 やってやったぜ!!



「は?」



 ハンナの方へと振り返った時、胸に一発の銃弾が撃ち込まれた。駆け寄ろうとしていたハンナも何が起きたのか理解出来ておらず、その場で固まってしまっていた。



 俺はと言うと弾丸を胸に撃ち込まれた事で、倒れ伏せてしまう。



「かはっ……」



 血を吐きながらも、起き上がろうと腕に力を込める。やっとの思いで立ち上がり、銃弾が飛んで来た方向に顔を向けてみた。



「いや〜、流石っ! 流石だよ。不法侵入者君、いや、ショウ。まさか、列車を止めるなんてね」


「おっさん……テメェ、まさか」


「おっ、気付いたのか?」


「くそがっ! どうせ、軍人なんだろうが!」


「ハハッ。正解だよ。俺の名はジン。君も知ってると思うが、特殊機甲部隊の一人さ」


「チッ。一番面倒くさい奴らじゃねえか」


「まあ、君も散々苦しめられたもんね。でも、俺も君には苦しめられたぜ?」


「ああ? 意味わかんねえよ」


「意味わからんだと? 俺が……俺がどれだけ、テメェの所為で上からグチグチ文句を言われたと思ってやがる!! ハゲるかと思ったんだぞっ!! ストレスで食事も出来無くなるほどだったんだからな!!」


「そんなの知るかよっ!!」

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