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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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新たな乗り物

「ところでさ、おじさんと会ったことない?」


「…………」


「ショウさん、聞かれてますよ?」


「えっ、俺に話しかけてたの?」



 現在俺とハンナとおっさんの三人で歩いているのだが、ハンナを真ん中に歩いているので自分が話しかけられていたとは微塵にも思わなかった。



「でさ、見たことない?」


「…………バーで一緒に飲んだおっさんで間違いないですかね?」


「おお〜〜! 覚えてくれたんだね〜!」


「二人とも既に会った事があったんですね」



 最初から気付いていたが、向こうが何も言ってこなかったのでスルーしていたが、やはり覚えていたようだ。勿論、俺も覚えている。



 いつだったか忘れていたがバーで独り寂しくお酒を飲んでいた時に、席が空いているのにわざわざ俺の横に座ってきたおっさん。俺と同じ酒を注文して適当に雑談を交わしたのはいい思い出だ。



「いや〜、でもこうしてまた会えるなんて俺と君には縁があったんだね〜〜」


「男同士の縁とか勘弁願いたいものですけどね」


「ハハッ、確かにな。俺としてもこっちのお嬢ちゃん見たいな可愛い子と縁が有りたいね」


「それは同感です」



 会話が盛り上がって来たところで、ハンナが本題へと話題を変えた。



「それで、これからどうするんですか?」


「ふむ。暴走列車を止める方法か……」


「止める方法もそうですけど、まずは追いつく事が先決ですね」


「確かにな。速報が出て今はまだイスカンテには入ってないそうだが……」


「時間の問題ですね。時速100キロ出ているならすぐに着くんじゃないですか?」


「いや、意外とそうでもない。ここからイスカンテまでは、大分距離があるんだ。ここは確かにイスカンテに一番近いと言われてはいるがね」


「それなら後数時間は大丈夫と?」


「そうだな。あと……6、7時間はかかると見ても大丈夫だろう。だが、どうやって追いつくかだ」



 そう、追いつく方法が無いのだ。いや、厳密に言えばあるのだがどうしても間に合わないのだ。俺の武具創造で創る事も考えたのだが、このおっさんがいる手前その方法は使えないのだ。



「うーーん。おじさんの魔導車を使ってもいいけど、飛ばしても追いつく頃にはイスカンテ目前だろうしなぁ〜」



 ふむ、なら諦めるのがいいんじゃね?


 何てことは言えない。


 ハンナが泣いてしまうので。


 しかし、どうしたものだろうか。


 打つ手なし。


 もうお手上げですね。


 それじゃ解散!!


 って言いたいよね!!



「あの、ショウさん」



 ハンナが内緒話をするかのように耳元まで近づき小声で話しかけてきた。



「どうした?」


「ショウさんのバイクなら追いつくんじゃ無いですか?」


「いや、おっさんの魔導車と多分同じだ。追いついたとしても、イスカンテ目前で止める事が出来るかどうかの瀬戸際になるだろうよ」


「じゃあ、何か他に無いんですか? ショウさんのバイクよりも早い乗り物は?」


「あるにはあるが……」


「何か問題でも?」


「いや、おっさんに怪しまれるじゃん」



 あれ、待てよ?


 おっさんて確か俺の素顔見てたよな?


 聞いてみよ!



「あの〜?」


「ん? どうした?」


「いや、以前会った時俺の顔見ましたよね?」


「あー、見たね。確か不法侵入者だよね、君」


「バレてたんですか」


「いや、バレ無い方がおかしいでしょ」



 そりゃそうだ。


 バレているのなら武具創造で暴走列車に追いつく乗り物を出しても問題無いだろう。



「まっ、バレてるんならいいか。ハンナ、それと……」


「あー、俺の事はおっさんでいいよ。どうせ、協力するのは今回だけだろうしね」


「じゃあ、おっさんで。とりあえず、街を出よう。街から出たらすぐに暴走列車を追いかけるぞ」



 早速街の外に出ると、すぐさま暴走列車に追いつく事の出来る乗り物を創造して見せた。



「これは……なんですか?」


「ブラックバード。マッハ3.2を記録した事のある乗り物だ」



 プラモデルで作った事のあるアメリカの偵察機。詳しい事は省くが俺の知る中で最も早い乗り物だ。一応改造してあるので三人乗れる。



 操縦できるかと言われたら勿論出来やしない。だが、これは俺のスキルで作られているから、そういった小難しい事は想像で補っている。



 簡単に言えば実物は操縦した事は無いが、ゲームでならある。ブラックバードではないが。



 つまりだ。操縦方法はゲームと同じなので俺なら出来る。正確に言えば元の世界であの有名な飛行機のゲームをした事のある者なら誰でも出来るのだ。



「へぇ〜。凄いな。これが君のスキルで創られた乗り物なのかい?」


「ええ、まあ。それよりも、早く乗って下さい。すぐに暴走列車に追い付いて見せますから」



 搭乗するように促すと、二人は梯子を使い操縦席へ搭乗して行く。二人が乗ったのを確認してから乗り込み、エンジンを点ける。



 さあ!!


 張り切っていきましょう!!



 ちなみに魔法で空気の層を作っているので大気に変化は起きない。だから、マスクを着けなくても問題無いし、服だって私服でも良いのだ。



 俺はワクワクしながら操縦桿を握りブラックバードを発進させた。



 ひゃっはーー!!!



「きゃっあああああああ!!!!」


「うおおおおおおおおお!!!!」



 二人の悲鳴が聞こえるが、そんなもの無視だ無視。俺は一人テンションを上げて暴走列車に追いつく為、ブラックバードを操縦した。



 これならすぐに追い付くな。

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