アホの子と馬鹿
盗賊達をロープで縛り拘束してから、森を出て行く。盗賊達はどうするかというとハンナがギルドに戻り次第報告すると言う事で決定した。
「それにしても災難でしたねぇ〜」
「そうだなぁ〜」
「気になったんですけど、ショウさんって容姿のことを言われるの嫌いなんですか?」
「いや、お前、誰だって嫌だろう?」
「ええー、私は別に気にしませんけど?」
そりゃ、お前は整った容姿をしてるからね!!
俺と違ってお前はチヤホヤされて来たんでしょうね!!
「お前はそうでも、俺は嫌なんだよ」
「そういうものですか」
「そういうもんだ」
ハンナは適当に相槌を打つとそれ以上は何も言わなかった。なんだか、俺だけがおかしいみたいな感じで嫌な気分だが、仕方ない。ハンナはきっと誰かに蔑まれた事とか一切無いのだろう。
ナンパとかされてたりするから、そりゃ分からんよね!
ちくしょう…………
俺だって逆ナンの一つや二つくらい……
無かった……
ギルドに戻り、ハンナは依頼達成の報告とついでに盗賊達の事を報告した。一応、念の為に捕まえていることを報告したら確認が取れ次第、追加報酬が出る事になった。
待つ事、数分で追加報酬が貰えた。この短時間で確認が出来たのに驚いたが、貰えるものは貰っておこう。報酬を全て受け取った俺たちは街で適当に食材を買い込んだ。
「こんなもんだろ」
「もっと買った方が良くないですか?」
「野宿したとしてもどうせ三日程だ。この次の街は結構デカイからな」
「でも、この街も大きいですよ?」
「まあな。でも、次の街も同じくらいの規模だから大丈夫だろ。それに大した距離も無いしな」
「それなら早く行った方が良いですね」
「だろ? それじゃ買い物はこれで終わるか」
買い込んだ荷物を片っ端から異空間に放り投げていく。生物もあるが異空間ならば保存保温全てが出来るので問題無い。むしろ、どれだけ時間が経とうとも新鮮なままである。
マジ便利ぃいいい!
一家に一台は欲しいよね、異空間収納。
買い物も終えたのでさっさとこの街から離れようと考えていた時に街が騒がしくなり人々がある一箇所に集まって行く。
「何かあったんでしょうか?」
「さあな。それよりさっさと行こうぜ」
歩き出そうとしたら、目の前に人が降ってくる。ハンナが小さく悲鳴を上げる。対して俺はその人間を無視して先に進む。
「ど、どんな神経してるんですか!?」
「はあ? いちいちリアクションなんて取ってられるかよ。ファンタジーなんて何が起こるかなんて分かんないからな。何か起きる度に驚いてたら、それだけで腹が減ってきちまうぜ」
「な、何を言ってるかさっぱり分かりませんが、ショウさんが無反応という事だけは分かりました」
再び歩き出そうとした時、背後から声を掛けられる。
「ちょっーち、待ってよ。そこのお兄さん」
「なんか用すかね?」
面倒くさそうに後ろを振り返って見ると、自身の二倍はある大剣を軽々と片手で持ち上げて肩に担いでいる少年が立っていた。だが、その大剣よりも目を引くものが少年の胸に付いていた。
「あ、あれって……特殊機甲部隊の!!」
「そそっ!! 俺的に説明するのが省けてラッキーって感じかな。それでさ、お兄さん…………ちょっとメガネ外してくんない?」
こいつ…………。
気づいてやがる。
「ほら、俺的にさ……こうなんて言えば良いのかな? ビビッと来てんのよ、頭に」
「勘じゃないですか?」
「そうだ、それだ!! 勘だよ! 今俺的にはお兄さんがめっちゃ怪しいって勘が言ってんのよ!」
こいつ、もしかしたら馬鹿かもしれねぇ!
「いやー、このメガネなんですけど、実は呪われてて外せないんですよ〜」
勿論真っ赤な嘘である!
頼む!!
この馬鹿が信じてくれれば乗り切れる!
「マジかよ!? それじゃ無理か〜」
マジかよ……
こんな嘘信じやがった……
こいう、正真正銘のおバカさんや!!!
「じゃあ、俺的に良い考えがあるぜ!! そのメガネを破壊すりゃ良いんだ!」
言葉を失った。破壊すれば良いと言ったこの馬鹿はなんとまさかの行動に出た。担いでいた大剣を天高くに振り上げると一直線にメガネへと振り下ろして来た。
「うおっ!!」
咄嗟の事だったので間一髪だった。あと少し反応が遅れていたら確実にメガネどころか身体まで真っ二つになっていた。どうやら、こいつは馬鹿正直過ぎるのだ。
「おいおい、なんで避けんだよー! 折角俺的に決まったと思ったのによー!」
「っざっけんじゃねえぞ! 避けなかったら真っ二つになってだろうが!!」
「あれ? 真っ二つにすりゃ良いんだろ? 違ったけ?」
「テんメェ……」
ダメだ、こいつはヤバイ。
今までの奴らもやばかったがこいつはいろんな意味でヤバイ。
相手にするのもヤバイな。
「ショウさん、逃げた方が良いですよ!」
「ああ。そうしたいが、こいつは逃がす気なんて無さそうだぜ!」
「おいおい! 目の前でイチャつくとか俺的に超ムカつくぜぇえ!」
男は跳躍して大剣を振り下ろして来る。ハンナを脇に抱えてその場を離れるように全力で地面を蹴り、飛び上がって距離を置く。男が振り下ろした大剣は地面を砕き、蜘蛛の巣のような地形に変える。
やばいな。
こいつ、馬鹿だけど強い!
久々のバトルです
では次回を!




