一件落着!!
丸一日かけてハマーを飛ばしたおかげで、ロムルスさん達が住んでいる街へと辿り着く事が出来た。道中、魔物が現れたが、そのほとんどは跳ね殺した。
バンが驚いたり、怯えたりとコロコロ表情が変わるのは面白かった。そのおかげで体力的にも精神的にもあまり負荷が掛からずにここまで来れた。
「さてと、ロムルスさん達に会いに行くか」
「そうですね。行きましょうか」
ハマーを降りてからハマーをしまう。とりあえずはバン達を連れてロムルスさん達の家に向かう。一応、俺はこの街の住人にバレないように認識阻害のメガネを着用する。以前、この街で軍相手にやらかしたからな。
それにこの街のガキ達にも迷惑かけたからなぁ……。
バンとバンの母親を連れてロムルスさん達の家へと辿り着く。ノックするのに緊張してしまう。二週間程しか経たないうちに、再会するのだから。
あれだけ勢い良く別れを告げたのに、まさかまたすぐに会えるなんて向こうも思ってはいないだろう。そう考えると胃が痛くなる。
うぅ〜。
ノックしようかと迷っていたら扉が開いた。思わず、後ろに飛び退いてしまった。
「あ……れ? ショウさん?」
扉を開けて出てきたのは、買い物籠を持ったロベルタさんだった。突然の俺たちの来訪で固まっていたが、わなわなと震えると買い物籠を落として俺の方へと駆けて来た。
これは!?
感動の再会のハグ!!
ロベルタさん!!
さあ、俺の胸の中へ飛び込んで――
「ハンナ!!」
俺を素通りしてハンナへと抱きついた。分かっていたよ。俺ではなく後ろに控えていたハンナに視線がいっていたのが。でも、少しは期待してもいいじゃないか。
「ロベルタさん!」
けっ、見せ付けてくれるじゃねえの。
「ハンナ、急にどうしたの? 貴方達が出て行ってまだ二週間程しか経ってないのに。何かあったの?」
「はい。実はですね」
「あっ、待って。ここだと人目に付くから家の中に入りましょ。それとそちらの二人とショウさんも」
ショウさんも!!
俺ってオマケみたい!
家の中へと案内されてリビングのソファに腰をかける。どうやら、ナーベルさん、ロムルスさん、ヨゼフの三人はいないようだ。何か用事でもあるのだろうか。
「ごめんなさいね。今は私一人しかいなくて」
「いえ、私達の方こそ急に押し掛けたんですから謝らなくて結構です」
「そう? それよりもどうして急にウチに来たりしたの? 何か忘れ物って訳でも無さそうだし…………その、もしかしてだけど、その二人のこと?」
「はい。実はここを出た次の街でちょっとした事がありまして」
「そのちょっとした事って聞いちゃいけないこと?」
「出来れば聞かないで欲しいです」
「わかったわ。話を続けて」
「まあ、そのちょっとした事でこの二人の住む場所が無くなってしまいまして……」
「なるほど。だいたい分かったわ。その二人をこの街に住まわせたいのね?」
「話が早くて助かります。それでロムルスさんにお願いしたいのですが、ロムルスさんはいつ頃帰ってくる予定で?」
「多分、もうそろそろ帰って来るとは思うんだけど」
「そうですか。なら、待ってても良いですか?」
「ええ、いいわよ! あっ、まだ買い物行ってなかったわ!! ハンナ、一緒に買い物に行かない?」
「あっ、いいですよ」
「じゃあ、行きましょ! ショウさん。父さんが帰って来たら説明しといてね」
「ういっーす」
ハンナとロベルタさんの二人は俺たち三人を残して買い物へと出かけて行った。他人の家で置いて行かれるとは。しかも、家主が誰もいないというのはどうかと思う。
「あの……よろしいのでしょうか?」
「まあ、いいんじゃないんすか?」
「ですが……やはり私達は迷惑なのでは?」
「多分、訳を話せばロムルスさんなら力になってくれますよ。それまで大人しくここで待ってましょうか」
「そ、そうですか……」
やはり、バンの母親は自分が周りに迷惑を掛けていると思い込んでいるようだ。まあ、実際の所、マダラ病に罹ってしまったからな。多分、自分の所為で誰かがマダラ病に罹ってしまうのを恐れてるのだろう。
だが、安心して欲しい。
絶対に完治してるから。
俺の寿命減らしてまで完治させたから!!
とりあえずやる事も無いのでくつろぐ事にした。バンはつまらないようだったのか既に寝ている。他所様の家でよくもまああんな風に寝られるものだな。
母親も先程から溜息ばかりで空気が重い。誰か、誰でもいいからこの空気を変えて欲しい。換気じゃなく場の雰囲気を変えて欲しい。
その時、玄関が開く音が聞こえて来た。誰かが帰って来たのだろう。足音がリビングの方へと近付いてくる。リビングに入って来たのはナーベルさんだった。
「あら? ショウ君じゃないの」
「どうも、お邪魔してます」
「そ、その勝手に上がり込んでしまい申し訳ありません」
「いえいえ、別に構いませんよ。それよりショウ君どうしたの? 何か忘れ物でもしたの?」
「いえ、実は――」
一先ず、ナーベルさんに事の顛末を説明した。ナーベルさんは説明を聞き終わるとバンの母親の方に歩み寄り手を取ると握り締めた。
「辛かったでしょう。でも、もう大丈夫ですよ。私達が貴方達の力になります」
「いいのですか?」
震える声でバンの母親はナーベルさんに問い掛ける。
「ええ。もうこれ以上苦しい思いはさせません。きっと私の夫もわかってくれるはずですから」
「あっ……あぁ……」
バンの母親は今まで耐えていた涙を流し始めた。これでようやく苦しみからだろう。だが、これで解決した訳では無い。これは時間稼ぎに過ぎないのだから。
まあ、それでも何とか一件落着って所かな!
眠たい目を擦りながらの執筆……
では次回を!




