完治する
バンの母親が患っているというマダラ病を治す為、早速パナケイアのネックレスを作成する。相変わらず寿命を一年消費するのだが、自分の寿命が後何年残ってるのか分からない。その為、実感が湧かないのだ。
よくよく考えれば、俺って今までの作ったパナケイアのネックレスって十超えてね?
確か日本人男性の平均寿命が八十だから……。
少なくとも七十以下って事か!
そういや、太陽の鎧も寿命を減らしてはず。
つまり、俺の寿命は六十くらいかもしれないのか!?
考えて使わねば……
いや、しかし、助けれるのなら助けたいし。
でも、自分の寿命を削ってまでなぁ……
くぅ〜! これも人助けの為や!!
多少の葛藤はあったものの、バンにパナケイアのネックレスを渡す。
「これネックレスか?」
「母ちゃんに付けてこい。容態が回復したら俺を呼べ。回復魔法を掛けた後に飯を食わせて栄養を補給しなきゃならんからな」
「わかった! 待っててくれ!」
バンはネックレスを大事そうに握り締めると、自分の家へと向かい走り出す。俺はそれを見届けた後、腕を組んで待っているとハンナが話し掛けてくる。
「やっぱり、ショウさんって優しいですね」
「そうか?」
「だって見ず知らずの人を助けてあげるなんて普通の人には出来ませんよ」
「そんなこと無いだろ。誰かが困ってたら誰かが手を差し伸べるのはよくあることだ」
「それが簡単に出来ない事だから凄いんですよ」
「そんなもんか……」
「そんなもんです」
ハンナと雑談をしながら、バンの帰りを待つ。雑談も盛り上がって来た時に、笑顔を浮かべているバンが帰ってくる。どうやら、無事にパナケイアのネックレスが効果を発揮したようだ。
「兄ちゃん!! 母ちゃんが母ちゃんが!!」
「落ち着け。お前の母ちゃんがどうしたんだ?」
「兄ちゃんがくれたネックレスを付けたら病気が治ったんだよ!! 今、目を覚ましてんだけど、まだ身体が動かないんだ」
「まあ、そうだろうな。とりあえず、お前の母ちゃんに会いに行くか」
「ああ!! 早く母ちゃんを元気にしてやってくれよ」
急かされるように手を引っ張られる。そんなに急がなくても良いと思うのだが、やっぱり自分の母親の病気が治ったのがよっぽど嬉しいのだろう。
バンの家へと辿り着き、中へと連れて行かれる。中に入ると、バンの母親が目を覚ましていたが、まだ完全には動けないようで、布団の中にいる。
「このような格好ですみません。このネックレスは貴方がくれた物なのですか?」
「いえ、バンが俺から買った物ですよ」
バンが驚き口を開けようとしたが咄嗟に手で塞ぐ。モゴモゴと何かを言いたそうにしているが、手で抑えている為しゃべる事が出来ない。
「ウチの子がこれを?」
「ええ。金は既に頂いたから大丈夫ですよ。それよりお身体の方は?」
「身体の方は痛みも無く、マダラ模様も消えてすっかり元通りになりました」
「そうですか。では、ちょっと失礼しますよ」
俺はバンの母親の近くへと寄り、回復魔法を施す。栄養とかは後にして、これで動けるはず。
「今何を?」
「今、少し魔法で貴方の身体を回復させました。多分、これで少しは身体が動くはずですよ」
バンの母親が布団から出ようと身体を動かそうとしたら、よろめいてしまい支えようとしたが、バンが素早く母親を支えた。どうやら、俺の出番は無いようだ。
「母ちゃん!」
「ありがとう、バン」
「母ちゃん、動ける? 無理ならまだ寝てても良いんだぜ?」
「大丈夫よ。少しは動けそうだから」
そう言ってバンの支え無しで母親が立ち上がる。
「あの、この度は本当にありがとうございます」
バンの母親が俺たちに向かって頭を下げて来る。そして、ゆっくりと頭を上げると戸惑っているような顔で話しかけて来る。
「お礼をしたいのですが……その……」
「気にしなくて良いですよ。先ほども言いましたがお代は既に頂いてますから」
「でも……」
「なら、こうしましょう。1日でも早く回復してバンを安心させてやってください」
「ッ……はい」
「さてと、それじゃあご飯にしましょうか」
「ご、ご飯ですか!? まさか、それもバンが?」
「ええ。とりあえず貴方は寝てて下さいね」
「で、ですが、そこまでやってもらうのは」
「先ほどの約束を反故にする気ですか? 1日でも早く元気になると言う約束を」
「そ、それは……でも、そこまでして頂くのは」
「あの、お言葉に甘えた方が良いですよ? マダラ病を患っていたのですから、しばらくは安静にしていた方が良いと思いますよ?」
「しかし、それだと……」
「じゃあ、こうしましょうよ。バン君に手伝わせるって事で」
ハンナの提案により、バンの母親がようやく了承してくれた。バンは野菜の皮剥きや食器の用意などをさせてこき使ってやった。バンは嫌々な顔をしていたが、母親が見てると分かったのかキビキビと動いてくれたのでとても助かった。
とりあえず、俺とハンナとバンはカレーとサラダでバンの母親には雑炊を作った。
「それじゃあ、いただきましょうか」
俺がそう言うと、全員手を合わせてから料理にありついた。食べている途中でバンの母親が泣き出したのは相当焦った。
「こんな風にまた温かいご飯を食べれるとは思いもしませんでした……」
泣くなよ!!
俺の雑炊が不味いかと思ったじゃないか!!
大変長らくお待たせしました。
これからも連載はして行きます!
不定期更新ですが、よろしくお願いします!!




