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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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脱走の説明

「それで、ショウさんはどうやって逃げ出せたんですか?」



 ヨゼフと話し終えた後、俺はナーベルさんに作って貰ったおにぎりを頬張りながら、今までの出来事を話し始める。



「いや、実はよ――」



 ◆◇◆◇◆◇◆



 護送車に揺られて、牢獄へと連行される。乗り心地は良いとは言えず、少しの段差で車体が大きく揺れてケツに大きな衝撃が伝わり、とても痛い。



「もうちょっと、安全運転して欲しいなぁ〜……」



 反応無し。



 それもそのはず。同乗しているのは全部機甲兵なのだ。俺が話し掛けても、何の反応も無い。これが人間ならまだ会話を楽しめたかもしれないのに。



 しかも、俺がちょっとでも怪しい動きを見せれば即座に反応して銃を突きつけて来る。だから、暇つぶしに何度か機甲兵にちょっかいをかけては遊んでいた。



 それに、こいつらは機械だから全く同じ動きしかしないため、何度でも騙せる。疲れも知らない機械は何度でも俺に翻弄される。



 さてと……。


 お遊びは終わりだ。



「クロ!! 派手にかませ!!」



 俺は叫んだ後、護送車の扉の方へと移動する。機甲兵達が手を伸ばして来るが、護送車は突然の爆発によりひっくり返った。背中を強く打ったが、支障は無いため、すぐに壊れた扉から芋虫のように這いずって逃げ出す。



「こんな時の為にクロに手榴弾持たせて正解だったな」



 ちなみに猫でも使える改良型手榴弾です!


 クロは護送車のどこかに潜んでおくように伝えていたからなぁ〜。


 まあ、爆発したのが前方部分だったから、エンジンの辺りだろう。



 外へと逃げ出した俺は立ち上がり、すぐにひっくり返った護送車の陰に身を潜める。護送車が突然爆発を起こしひっくり返った事で前方を走っていた大佐が乗った乗り物が緊急停止する。



 前方の乗り物から兵士達が降りてくる。大佐は降りて来なかったが、問題は無い。ただ、問題があるとすれば誰が手錠の鍵を持っているかだ。鍵を持ってる奴さえ分かればすぐにでも逃げ出せたのに。



 焦りは禁物だ。


 大丈夫。


 クロに鍵を手に入れるように伝えてある。


 クロの能力に容姿さえあれば余裕だろう。


 まあ、猫がこんな所にいれば不審がられるけどな。


 そこに気付きさえしなければ……いける!



 ゆっくりと兵士達が護送車へと近づいて来る。呼吸を落ち着かせて、様子を伺う。ひっくり返った車体を覗き込んでいたりしているのが一人。周囲を警戒しているのが一人。そして、大佐を守っていると思われる兵士が六人。残りの二人は護送車の周りを調べている。



 誰が持ってる!


 どれだ?


 くそっ……。


 頼むぞ、クロッ!!



 一滴の汗が頬を伝い零れ落ちる。零れ落ちた汗の音が耳に届いて、汗は大地へと吸収された。気付かれたら、終わりと言う緊迫感。



 気分は映画俳優だぜ!



「誰だっ!?」



 ッッ!?


 バレたか?



「にゃあ〜」


「なんだ、黒猫か」



 ナイス、クロ!



 少しだけ顔を覗かせるとクロは兵士一人一人に接触している。どいつが持っているのかを確かめてるのだろう。なるべく早くして貰いたい。



「あっ! 待て、コラッ! この泥棒猫め!」



 何!?



 護送車の陰から飛び出して見ると、口には手錠の鍵を咥えたクロが猛然とダッシュしていた。兵士達も流石に猫には銃を使わないようで、どんどん距離が開いている。



 これなら余裕だな。



 クロが俺に気付き、方向転換して真っ直ぐ俺の方へと走ってくる。兵士達が俺に気付きクロに銃口を向けた。クロが足に力を込めて跳躍して一気に俺の元へと跳ぶ。



 兵士達が銃を乱射して来たが、既に俺の手錠は外れ魔法で弾丸を防いだ。



「はぁはぁ……し、死ぬかと思ったぞ」


「サンキュー、クロ! 金が手に入ったらお前の好きな物何でも買ってやるよ!」


「けっ、目ん玉飛び出るくらいの美味しい物買ってもらうからな」


「任せとけって!」



 兵士達は俺が解放されたのを見て、青ざめている。中には逃げ出す兵士も現れて、大佐を守っていた奴も何故か走って逃げ出していた。見捨てられた大佐が降りて来て怒鳴り声を上げる。



「き、貴様等ぁっ!! 私を守らんか!! 何を逃げておる! 早く戻ってこぉい!!」



 しかし、誰一人として戻っては来ない。これはチャンスと見た俺は一歩一歩踏み締めるように、俺という存在を刻み付けるように大佐へと歩き出す。



 大佐は怖気付き逃げ出そうと走るが、長年走っていない所為で足が空回りして派手に転ける。転けた大佐は首をこちらに向けて俺を見て悲鳴を上げて、今度は四つん這いで必死に逃げようとする。まるで、豚が業者の人間から逃げてるみたいな光景だ。知らないけど。



「ひっ! ヒィイイイ!」



 本当に豚のように見えて来る。俺を捕まえた時はあれ程勝ち誇り、自信に満ち溢れていたのに今は醜い豚に成り果てている。



「大佐殿〜?」


「ッッ!?」



 せわしなく両手両足を動かして逃げようともがくが、その速度は俺の歩く速度よりも遅い為すぐに追いつく。何度か繰り返して大佐の服の裾を掴む。



「こ……」


「こ?」


「殺さないでくれぇええええええええ!! た、頼む! 何でもするから!! わ、私に出来ることなら、何でもしてやるぞ!!」



 ふむ……。


 別に殺すつもりないし。


 ただ、まあ何でもするって言ってるからなぁ……。


 よし!!



「なら、貴様に命じよう」



 大佐はどんな無理難題を命じられるのかと思い、固唾を呑み喉を鳴らす。



「服を脱いで豚の真似をしろ」


「な、なななな!! わ、私に豚の真似をしろと!?」


「なんだ? 嫌なら別に構わんが……そうなった場合は非常に残念な事ではありますが、貴様の命を貰おうか」


「ッッッ!!!! ただいま、やらせていただきます!」



 大佐は俺の目を見て、身体を震わせてから服を脱ぎ始める。贅肉、脂肪だらけのだらしないおっさんの裸なんて見たくも無いが、ここは我慢だ。



 大佐がパンツだけは脱ごうとしなかったので異空間からカラドボルグを取り出してチラつかせる。それを見た大佐は全てを諦めたようにパンツを下ろした。



 ゲロ吐きそう……。



「さあ、早く豚の真似をしろ」


「くっ……」


「ふむ、大佐殿の身体は実に斬り甲斐がありそうだな」


「わっ、分かりました!!」



 大佐が四つん這いになり、大きく息を吸い込んだ。



「ブッ、ブヒーーーー!!」



 つまんねえ〜〜



「つまらんな……」


「ブッ!? ブヒッ! ブヒッブヒッ!! ブヒッブッー!! ブヒヒーーー!!」



 死にたくない為にここまでするとは、俺なら自殺ものと言いたいが、俺も何の力も無ければこんな風にどんな事をしてでも生き延びようとするな。



 とりあえず、カメラで撮影しておく。



「もういいぞ」


「…………」



 やり切った顔をしている。多分、心の中では俺に対しての復讐心を燃やしているのだろう。それにどうやって殺そうかと計画でも立ててるのだろうよ。だが、そんな事は絶対にさせん。



「言っておくが復讐なんてアホな事を考えて見ろ。先程の魔道具はお前の恥ずかしい豚の物真似を記録してある。この意味が分かるな?」


「なっ……そんな……」



 驚愕の表情を浮かべる大佐。ガラガラと復讐の計画が音を立てて崩れ去って行くイメージが見える。



「じゃあな」



 項垂れる大佐を置いて、ハンナの元へと戻る。



 ◆◇◆◇◆◇◆



「って言うわけよ」


「ドン引きです」


「ショウ君、やり過ぎだ」


「あら〜、中々素敵ね」


「流石にね……」


「あははっ! 流石だねっ!」

早く進まねば……


では次回を!

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