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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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山を越えて

「……んむ?」



 どうやら、眠っていたようだ。膝の上にはクロが丸まって寝ている。首だけを動かしてハンナの方を見てみると、ハンナはまだ眠っていた。




 窓からは朝日が差し込み、暖かな一日の始まりを感じる。だが、そんな小さな幸せさえ続く事はない。俺は自分が馬鹿だという事をすっかり忘れていた。



 ドアがノックされる。誰か来たのかと思いクロをソファに下ろして扉に手を掛ける。ゆっくりと扉が開かれ、その先にいたのは兵士達だった。そして、兵士達は手にしていた書状に目を落としていたらしく顔が下に向いていた。



「朝早くに申し訳ない。ここいらでこのような……男……を……あ?」



 手にしていた書状には何が書かれていたのか、何が描かれていたのかはこの反応で丸分かりだ。



 やっちまった……


 認識阻害のメガネは外してるし……


 誤魔化せないよねぇ〜。


 三十六計逃げるに如かず!!



「き、貴様! 手配書の!」



 口を金魚のようにパクパクさせながら書状に描かれている俺と見比べて一致したので驚いてるのだろう。向こうも動揺している為逃げ安かった。



「ちぃっ!!」



 寝ているクロとハンナを抱き上げて窓をぶち破り、外へと逃走する。振り返ると機甲兵が飛んで追いかけて来ていた。その後ろには武装した兵士達もいる。



 本当しつこいなぁ!!



「てか、起きろよ!」


「ふぇ〜?」


「んにゃ?」



 寝惚けてる1人と1匹を抱えながら大通りを疾走する。機甲兵達が容赦なく機関銃をぶっ放してくる。町中だと言うのにちょっとは遠慮して欲しいものだ。見てみろ、お前らが外した弾丸がお店を破壊してるぞ。外観が酷い事になってしまったお店に同情しつつも止まらずに逃走する。



 大分距離が開いて来た所でヘルメスの靴を着用する。空へと逃げた俺に兵士達が声を荒げているが最早俺には届かない。しかし、兵士達は巻けても機甲兵はしつこく追いかけて来た。



「あっー! うぜぇ! 爆ぜろ、業火!」



 橙色の美しい火の玉が一体の機甲兵に衝突すると花火のように爆ぜ、耳をつんざく轟音が鳴り渡った。そして、飛び散った火花は他の機甲兵を巻き込みさらなる爆発を起こして大空を彩った。



「散り行く様は美しいぜ!」



 爆風を利用してさらに加速して大空を翔ける。昇り始めた太陽が大地を照らし、空を明るく、そして、俺を光り輝かせる。



 いや、光り輝かせるってのはちょっと言い過ぎた。


 まあ、普通に眩しっ! ってくらいかな。



「は……はっくしゅ! うっ……ぅぅ……さ、寒い」



 しまった。


 調子に乗り過ぎて高く飛び過ぎてしまった。


 上空何メートルだ?


 まあ、肌寒いと感じてるからかなり高いんでしょうね。



 少し、高度を下げて空を翔ける。眼下に広がる光景は壮大な物で一面の草原に、さらには動物もしくは魔物らしき大群が蠢いていた。空から見下ろす限りではその群れは千を軽く超えてるだろう。



 一応確認しておくか?


 いや、でもなぁ。


 もし、魔物だったら面倒だし。


 仮に魔物じゃなかったとしても……特に問題ないか。



 適当に答えを導き出した俺はその群れを無視して山を飛び越えて行った。山の麓に町が見えたのでそこに降りることに決定した。勿論、俺の独断で。



 2人を叩き起こして町に入ると、何やら不穏な空気が。冒険者達が慌ただしく装備を整えていたり、町から出て行く人達がいたり、兵士達が街中を駆け回っていたりなどしている。



 何かあったのか?



 俺は情報収集しようとしたが相手にされなかったのでハンナに任せることにした。しかし、ハンナに任せたのは失敗だった。ナンパされてしまい情報収集どころではなかったのだ。しかも、相手が過剰に反応してしまい俺に襲い掛かってきた。まあ、返り討ちにしたけど。



 やはり、情報収集のプロに任せよう。



「クロ、頼むわ」


「任せとけ」



 クロは適当な人達に身体を擦り付ける。はたから見れば猫がじゃれているように見えるが俺からしたら鳥肌ものだ。何せ、クロの能力は記憶を読み取るのだから。しかも、映像のように他人に見せる事まで出来る。知っていたら絶対に近づけたくない。



「どうだった?」


「ん〜、なんでも千を超える魔物がこの町に向かって来てるらしいぞ」



 千を超える魔物……


 ここに来る途中で見たアレか!



「ふむ、それでこの騒ぎか」


「まあ、魔物自体はDランクの雑魚だが数が数だからなぁ。一応軍の奴等も大部隊を編成してるらしいが」


「なるほどなるほど」


「ショウさんは手伝わないんですか?」


「無償労働は嫌いだからな。そうだ! ハンナ、ちょっとギルドに行くぞ。依頼が出てるかもしれん」


「それなら早く行きましょう!」


「指名手配されてるのによくやるな」


「細かい事は良いんだよ!」



 ギルドへと赴き、お目当ての依頼を受ける。内容は千を超える魔物、ジルスティード。見た目は元の世界で言う所のヌーだ。大した事ない相手だが数が多過ぎるのでAランクの依頼になっていた。



 問題ない。


 むしろ、俺一人で余裕だ!

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