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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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ハンナ危うし

 ガロンとの戦いから数日が経過した今、俺たちは新たな町へと辿り着いていた。



「しかし、ここも兵士が多いな」


「仕方ありませんよ。ショウさんの顔は既に軍の人達に知れ渡ってるんですから」


「ふっ、有名人は辛いな」


「悪い意味での有名人ですけどね」



 大通りを二人で雑談しながら歩いているが、周りの視線が鬱陶しい。ハンナは見た目は美少女だから分かるが何故俺に視線が注がれるのか 。



 いや、理由は分かっている。今の俺の格好は認識阻害のメガネを掛けているから分からないのだ。その為、先程から町を歩いている兵士達が俺に対して目を細めている。視線だけで身体に穴が空きそうだ。



 見つめちゃイヤん。



「なんか、ショウさん気持ち悪いですよ?」



 どうやら、顔に出ていたようだ。


 引き締めよう。



 さてと、とりあえずやる事やろうか。まずは資金の調達、次に食料の確保だ。資金の調達はギルドで稼いで、食料は適当にそこら辺の店で買い込もう。



 宿を利用したいが、現状宿に泊まる事は出来ない。何故かと言うと、宿には俺の手配書及び兵士が駐屯しているからだ。つまり、どこの宿も兵士達が目を光らせているのだ。おかげでまともにベットで眠った事がない。



 久しぶりに暖かいベットでぐっすりと眠りたいものだぜ。まあ、嘆いても自業自得なので仕方がない。さっさとギルドで稼いで次の町に向かおう。長く滞在していると何かしらに巻き込まれるからな。



「ハンナ、とっととギルドで一儲けして食料を買い込むぞ。その後、この町ともおさらばだ」


「はぁ……最近まともに町に滞在してませんよね。もう少し町で疲れを癒しませんか?」


「いや、そうしたいけど……お前も分かるだろ?」


「仕方ありませんね。なら、ギルドに行きましょうか」



 諦めた様子のハンナは肩を落として歩き出す。その背中からは哀愁が漂っている。



 うっうぅ、ごめんよぉ……


 俺が不甲斐ないばっかりにぃ……



 心の中でリストラされた親父、もしくは離婚されてしまい娘に頭を下げている親父のような呟きをして歩き出す。まあ、微塵もそんな事思ってませんがね。



 いや、まあ、確かにこの国に来てからというものの俺は事ある事に厄介事を招いてますがね。もうね、笑っちゃうよね。なんで俺ばっかりがこんな目に合わなきゃいけないんだって。



 異世界やんなっちゃうわ。


 でも、なんだかんだ言ってチートで乗り越えてるから良いんだけどね!!


 うひょひょひょ!



 いつの間にかギルドへと辿り着いていた。入り口の前で不気味に笑っていた俺は兵士達に問い詰められたが華麗なる言い訳でその場を無事に乗り切った。



 ハンナは俺が不気味に笑っていた時には既に俺から離れていたらしく兵士達が寄って来たから近寄れなかったと言っているが、問い詰めたら――



「だ、だって急に笑いだすから気持ち悪くて……」



 そうか……


 キモかったのか……


 つい先刻引き締めたばかりなのに。


 よしっ!


 俺は無敗のポーカーフェイスだ。



 無表情になったはず。そう思いながらギルドの中に入る。俺は冒険者として登録していないので依頼の受注はハンナに任せている。基本は魔物の討伐系だ。もっとも稼ぎが良いからな。



 ハンナが俺の方へと戻って来る。依頼の内容を聞くと少し面倒そうな相手だった。今回の討伐対象は以前戦ったデゼルトスコルピオンだ。なんでもデゼルトスコルピオンの亜種らしく岩場に生息しているようで、最近冒険者が偶々見かけたらしい。



 報酬はかなりの高額。しかし、危険度はAランク。つまり、俺にピッタリの依頼だ。でも、なんでハンナが受けれたのだろうか?



「なあ、ハンナ。この依頼ってAランクだけどお前何で受けれたの?」


「あっ、そういえばまだ言ってませんでしたね。私、Bランクに昇格してたんですよ。だから、一つ上の依頼も受けれるから報酬の高いこの依頼を受けたんです。どうですか? 偉いでしょ!」



 鼻を高くして得意気になっているハンナ。褒めて欲しいのかな?



「ああ、お前にしては上出来だよ」


「ふふん。流石私ですね!」


「ホント、凄い凄い」


「もっと褒めても良いんですよ?」


「さっすがハンナ! 頼りになる女だぜお前はよぅ!」


「えへへ〜」



 おだてるのはこれくらいにして早速デゼルトスコルピオン亜種が目撃されたと言われる岩場へと向かうか。こういうのは早いに越した事が無いからな。それに長くこの町に滞在したくないし。



 今もなお、調子に乗っているハンナを連れて町の外へと向かう。出口には兵士が待ち構えているが依頼書を見せるとすんなり外へと通してくれた。



 岩場までは馬で半日掛かる距離なのでバイクで向かう事にした。相変わらずハンナは調子に乗っている。先程から鼻歌が聞こえてくる。



 これからデゼルトスコルピオン亜種の討伐だと言うのに呑気なものだ。それとも、俺を信頼してくれてるからここまで呑気になれるのだろうか。そうだとしたらちょっと嬉しい。



 時刻は夕暮れ。岩場に射すのは黄昏の色。赤く染まった空を見上げて岩場の中を歩いて行く。ハンナは先程の態度から一変して今は俺の腕にピッタリとくっついている。



「ふむ、特に気配は感じないな」


「ほ、ホントですか? 離れてても大丈夫ですか?」


「まあ、今の所は少しくらい離れてても大丈夫だろ」



 俺がそう言うとハンナはホッとした表情を浮かべ俺から数歩離れる。だが、それがいけなかった。俺から数歩離れたハンナに魔の手が伸びる。



「えっ?」


「ハンナ!!!!」



 一瞬だった。ハンナの左腕が食い千切られたのだ。腕が食い千切られた事を理解したハンナが絶叫を上げる。



「ぎゃあああああああああ!!!」



 必死に無くなった左腕の付け根を右手で抑えているハンナを連れてその場を離れる。ハンナは激痛のあまり口から泡を吹いている。



 マズイ!!


 兎に角、ハンナを安全な場所に!!



 回復魔法を左腕の付け根に施し痛みを和らげるが、ハンナの表情は良くならない。岩場を離れて草花が咲いている草原をへと辿り着き、ハンナを寝かせる。苦悶の表情を見せるハンナに声を掛ける。



「待ってろ! すぐに腕は治してやる」


「はぁ……はぁ…………ショウさん……」



 己の寿命を犠牲にしてパナケイアのネックレスを作り上げる。寝ているハンナの首にネックレスを着ける。すると、無くなった左腕の付け根から白い煙が上がる。煙が収まると無くなっていた左腕が元に戻っていた。そして、パナケイアのネックレスも効力を失ったのか砕け散った。



「あ……ぁぁ……私の腕が……」


「大丈夫……大丈夫だ。少しここで寝ててくれ。俺が終わらしてくるから。お前は安心して寝てればいい」


「は……い。ショウさん……が……そう……言うな……ら……」



 ハンナは落ち着いたのかゆっくりと瞼を閉じて寝息を立て始める。ハンナが完全に寝入ったのを確認してから立ち上がる。神羅創世を異空間から取り出して羽織り魔力検知を行いハンナの腕を食い千切った魔物。デゼルトスコルピオンを探し出す。



 ハンナには後で謝らないとな。


 俺の所為であんな目に遭ったんだから。


1日おくれ

前よりはマシかな?


では次回を!

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