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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第七章 真実の探求

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「おおおおおおおおおお!!!」



 咆哮を上げながら、爺さんへと拳を突き出す。爺さんはなんの動作も無く拳をその身体で受け止めた。



「なっ!?」


「ぐぅっ……があっ!」


「ごっあ!」



 爺さんはワザと身体で受け止めて、俺が一瞬その事実に怯んだ隙に拳を鳩尾に打ち込んで来た。蹌踉めく俺に追撃をしてくる。



「がふっ」



 頬を打ち抜かれて体勢を崩し、地面に倒れる。倒れた所に爺さんが踏み付けるように足を下ろして来たが、地面を転がるようにして避ける。



 立ち上がり、地面を強く蹴って爺さんへと走り出す。懐に潜り込み、地面が陥没するほど踏み込んで爺さんの顎を掌底で打ち上げる。



「ごっ!」



 首が上へと向き、仰け反る爺さんに回転蹴りを喰らわす。吹き飛んだ爺さんへと走り追撃のかかと落としを決める。地面が蜘蛛の巣のようにヒビ割れた。ぶっちゃけこれで倒れたら良いなと思ったがそう甘くは無いようだ。



「ごふっ……まだまだよ」


「おいおい、タフガイな爺さんだっこった」


「ぬぅおおおおおお!」



 軽口を叩いてる俺に向かって拳を振り抜いて来るが、手の平で受け止め、そのまま衝撃を逸らして滑らかに受け流す。爺さんは受け流された事で体制を崩し、俺の横を素通りする様な体勢になる。俺はそのがら空きの脇腹にヒザ蹴りを入れる。



「あぐぅ!」



 両膝をつき、脇腹を抑える。爺さん相手に容赦をしてやれよ、という声が聞こえてきそうだが、俺はしてやらない。戦場に立てば女も子供も老人すら関係無い。殺るか、殺られるかだ。



 まあ、こんな事を語ったところで本当の戦場に立った事の無い俺にはそんな事を言う資格は無いんだけどね。それに俺はバリバリのチートだから戦士の矜持とかわからないしね。



 何を分かったように言ってるんだか……


 本当の俺は弱いのに……


 いかんいかん!


 ネガティヴ思考に陥ってたわ!


 気持ちを切り替えて、キリッ!



「トドメだ!」



 踵を真っ直ぐ天へと伸ばして両膝をつき脇腹を抑えている爺さんへと踵を打ち下ろす。脳天へと打ち下ろされた踵落としは、爺さんの頭を地面にめり込ませた。



 ピクリとも動かなくなった爺さんをその場に放置してハンナを探す為、廃工場の中へと向かった。廃工場の中は薄暗く足元も廃材などが散らばっており酷い有様だ。幽霊とか出てきそうな雰囲気も出ているから早くハンナを探し出して帰ろう。



 慎重に廃工場の中を調べて行く。無駄に広いからハンナを探すのにも一苦労だ。一階は一通り調べたがハンナは見つからなかった。



 むぅ……


 あの爺さんにハンナの居場所聞けばよかった。


 まあ、今更なので廃工場の中を隈なく探せば見つかるだろ。



 楽観的な考えで廃工場の中を歩き回り、ようやくハンナを見つける事が出来た。パイプ椅子にロープで縛られてはいたが口は何もされていなかった。



 こいつ……


 呑気に寝てやがる!


 ちくしょう!


 人が心配して助けに来てやったのに!



 今だに涎を垂らしながら寝ているハンナをビンタして叩きおこすとハンナは小さな悲鳴を上げて起きる。



「きゃうっ! うっ……うぅ、痛いです」


「痛いです。じゃねえよ! 何、余裕綽々と寝てやがる! 大量に涎まで垂らしやがって!!」


「へっ!? ショウさん!! 助けに来てくれたんですか!?」


「ああ、そうだよ! でも、まさかお前は俺が苦労してる中、呑気に寝てるとはこれっぽっちも思ってなかったがな!!」


「そ、そそそそれは……なんていうか……その……テヘッ」



 殺意が湧いた。


 今なら殺意だけで殺せる気がする。



 ぐっと堪えてハンナを縛っているロープを解く。ようやく自由になったハンナは身体を伸ばしている。まあ、長時間椅子に縛り付けられたら身体が硬くなるわな。



「さっさと帰るぞ」



 身体をほぐすように伸びをしていたハンナに一言言ってから廃工場の外へと向かう。後ろから小走りする音を聞きながら二階から一階へと降りて行く。一階につき、外へと出ようとしたが出る事は出来なかった。



「マジかよ……」


「グアハハハ……ここを出たくば、ワシを倒す事じゃな」



 満身創痍の爺さんが廃工場の入り口を塞いでいた。肩で息をして今にも倒れそうな老体が今は途轍もなく大きく見える。これが闘気というやつか。



 強者の闘気オーラ!!


 ちょっとカッコいい!!


 いや、かっちょいい!!


 俺も出してみてぇ!!



「そういう事なら、押し通る!!」


「来い!! 最後の勝負じゃあ!!」



 爺さんへと走り出して拳を握り締める。お互いに拳が届く距離まで近づき、そして――



「どぅぅらああああああああ!!!」


「があああああああああああ!!!」



 俺の拳が爺さんの頬を打ち抜く。爺さんは体勢を崩すが地面が凹むほど力強く踏んで持ち堪えると、腰を捻ると勢い良く俺の頬へと拳を打ち込んだ。仰け反り体勢を崩してしまう。それでも爺さん同様に地面を陥没させる程、強く踏み締め持ち堪える。



 そして、腰を捻り拳を爺さんの頬へと再度打ち込む。爺さんの体勢が崩れる所に続け様に拳を腹部へと打ち込む。少しだけ爺さんの身体が浮き上がる。咳き込むように身体を曲げた爺さんへと一歩踏み込み下から顔面を拳で打ち抜いた。



「ごふっ……」


「ハァ……ハァ……勝ったぞ……」



 大の字に倒れた爺さんの横で片腕を上げてボクサーのように勝利のポーズを取る。



「完敗じゃ……行け……」


「はっ、言われなくても行くわ。じゃあな爺さん」


「次は負けんぞ……」


「勘弁願いたいぜ」



 ようやく追いついてきたハンナと共に廃工場を後にした。それにしても、カッコつけすぎた。俺のプリチーな顔が凸凹になってしまった。



 いや、すいません。


 プリチーではありませんでしたな。


 あっはっはっはっ……


 はぁ……泣けてくるぜ。

長かった……

更新遅れが……


次回はいつになるかわかりませんがよろしくお願いします!

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