シャーリィの手料理
震える身体を無理矢理に立たせて、こちらへと振り向くシャーリィの父親。ワンパンすればKO出来そうなくらいに震えている。それでも立ち上がるのは、娘の為なのか、人間が嫌いだからか。俺には分からないが根性だけは認めてやろう。
何、上から目線で見てるんだ、と自分で言いたくなるが俺の方が強いから上なんだ。さて、このガチムチ人魚をどうしようかと考えていたら、シャーリィがガチムチ人魚に近づいていく。
「もう、お父さん止めたら?」
「や、止めるわけにはいかんのだ……娘を泣かせた人間を許せるわけが」
「私が勝手に泣いたんだよ?」
「は?」
「だーかーら、私が勝手に泣いたんだってば! ショウは何にも関係無いの! お父さんってば勘違いしすぎ!」
ああ……シャーリィよ。
お前の説明が足りなかったせいで父親は傷付いてるんだぞ?
そこのところわかってるの?
なんて、この空気では言えずに黙ったまま二人を見ている。父親がワナワナと肩を震わせてガシッとシャーリィの腕を掴んだ。シャーリィはなんで掴まれたかわかってないようで首を傾げている。
「なんで先にそれを言わないんだ!」
「えっ? だって言おうとしたらお父さんが暴走したから」
「うぐっ……」
「大体、お父さんって私の事アホだってよく言うけどお父さんも人の事言えないよね!」
「そ、それは」
「言い訳はしない!」
「はい……」
娘に言い負かされちゃったよ!
でも、まあ仕方ないか。
話終わったシャーリィがこちらへと近づいて来る。
「ごめんねぇ〜。お父さんって私の事になると熱くなり過ぎる所があるから」
「いや、気にすんな。そういうのは慣れてる」
主にルドガーさんのせいで。
「ありがとう〜。そうだ! お詫びにご飯作ってあげる!」
「いや、別に腹が減ってる訳じゃ」
「いいから、いいから! じゃあ、お父さんに話して来るね」
「あっ、おい」
止めようと手を伸ばしたが、シャーリィは父親の方へと行き、俺にお詫びとしてご飯を振る舞う事を話している。父親の方は渋い表情をしたが、自分も先程いきなり襲った手前強く言えずに了承してしまった。
俺としては、別に腹が減ってる訳では無いからいらないのだが。まあ、貰えるというならもらう事にしておこう。すると、シャーリィの父親が兵士達を呼び寄せて何かを伝えている。
そして、何故か今俺は両腕を掴まれ拘束されている。
えっ?
何この状況?
混乱している俺を尻目に兵士達に連行される。連れてこられた場所は長いテーブルがある部屋だった。多分食堂みたいな所だろうと思い見ていたら、無理矢理椅子に座らせれる。俺を椅子に座らせると兵士達は一歩下がった場所に立っている。いや、浮遊しているか。
腕を組み、目をつむって待っていたら、何やら怪しい臭いが漂ってくる。ここは水中だから臭いなんて臭わないのではないかと、疑問に思っていたら目の前に料理を運んできたシャーリィがいた。
テーブルに置かれる料理を見て俺は冷や汗が止まらない。何せ、テーブルの上には暗黒物質が存在しているのだから。
まさか、これを俺に食せと言うんじゃないだろうな?
チラリとシャーリィでは無く父親の方に目を向ける。父親はニヤニヤと俺を見て笑っている。あの顔はシャーリィの料理がどんな物なのかを知っていた顔だ。まあ、親だから当然なのだろうが。
くっ……しかし、これまた強烈な臭いだ。
「さあ、どうぞ! 今回のは自信作だよ!」
自信作が暗黒物質というのは流石にキツイだろう。そもそもお前はこれを味見したのかと問い質したいくらいだ。いや、小一時間くらい説教をしてもいいかもしれない。
目だけ動かしてシャーリィの顔を見てみると、満面の笑みでこちらを見ていた。どうやら、本当に自信作のようだ。こんな顔を向けられては食べないといけないだろう。いや、食べないと男が廃る。俺はスプーンを手に取り料理を掬い口に運ぶ。
痛いぃいいいいい!!
辛いぃいいいいいい!!
酢っぺぇえええええ!!
甘いよぉおおおおおお!!
ひぎゃああああああ!!!
「どう? 美味しい?」
そんな不安そうな顔をしないでくれ。そんな顔をされたら本音を言えないじゃないか。こんな食べ物食べた事が無いって。この世の食べ物じゃないって。
俺は精一杯の笑顔を作りシャーリィに感想を言う。
「ああ……お、美味しいよ」
だが、この一言がいけなかった。シャーリィの顔は不安そうな顔から晴れやかな笑顔になると悪魔の一言を放った。
「本当!? 実は張り切り過ぎちゃっていっぱいあるんだ! おかわりとってくるね!」
このままではいけない!!
俺一人であの料理は食べ切れない!
いや、無理!
死んじゃう!
くそっ!!
はっ!
いい事思いついたぜ!
「待て!!」
厨房に行こうとしたシャーリィをなんとか止めると、俺はある提案を口にした。
「俺一人じゃ勿体ないから、ここにいる皆にも持って来てくれ」
この瞬間ガタッと勢い良く椅子を倒してシャーリィの父親が立ち上がる。その額からは冷や汗が吹き出ていた。
「わ、私はそこまで腹は減っておらんからな」
「シャーリィ。さっきの戦闘で俺もお前の父親も腹ペコだ。俺は今ので満腹だから持って来てくれ」
「任せて!! お父さん待っててね!」
「ま、待て! シャーリィィイイイイ」
父親の叫びがこだまする。その様子を見て兵士達が肩を震わせて笑うのを我慢している。俺は腕を組み崩れ落ちたシャーリィの父親に近寄り肩を叩く。見上げてくるシャーリィの父親に一言。
「愛娘の手料理だ。喜んで食べろよ、お父さん?」
「己、謀ったな貴様ぁあ!!」
シャーリィの父親が襲いかかって来ようとした時にシャーリィが料理を運んで来た。
「お待たせ!! 兵士達の分も持って来たよ!」
俺は心の中で大爆笑した。
「ショウにはデザートもあるから!」
神は死んだ。
茶碗蒸しってプリンだよね?
出汁があるだけの
では次回を!




