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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第六章 新たなる大陸、そしてぼっち旅

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今宵は無礼講じゃあああ

「今回の件、君がいなければ国が滅んでいた。本当に感謝してもしきれない程だ。あの化け狐を見事打ち倒してくれて本当にありがとう」


「私からも礼を言わせてくれ、翔」



 ちょ、俺抱き締められたままだからシュール!!


 一旦、沙織さんを離して、と。



「あっ……」



 そんな切ない声上げないでよぉおおお!!


 くっ!!



 沙織さんから離れた俺は6人の方に振り向き、立ち上がる。頭を掻きながら、少し困ったように口を開く。



「いや、まあ、お礼って言われても俺としては当然の事をしただけなんですよね」


「それでも、結果的に私達は救われたのだから感謝の言葉しか無いよ」


「そ、そうすか」



 言えねえよな!!


 こんな事になった大元の原因は俺がファイブを逃した事なんて!



「そこで、だ。君には是非とも我が城へと」


「ちょっと待て、将憲よ。抜け駆けは許さんぞ」


「た、隆嗣!! ぬ、抜け駆けなど!」



 えっ!?


 なに?


 俺はお前らなんかに微塵も興味無いけど?



「二人とも!!! 一層の事、西と東の2つで翔を歓迎したらどうじゃ?」



 はっ?


 歓迎って?



「むっ……」

「ぬっ……」



「はあ……お父上も将憲様も強情な方よなぁ……」



 ふむ、つまり、俺という戦力が欲しいのか!


 しかーし! 俺にはやる事があるんや!



「あー、なんか揉めてる所、悪いんですけど俺は旅人なんでこの国には滞在しないですよ?」


「えっ!!!」



 なんで沙織さんが驚いてんの?


 えっ、まさかまだ稽古相手にする気?


 そいつは勘弁願いたいものだ。



「い、いつ!? いつ旅に出るの?」


「へっ? い、いや、別に決まってはいないですけど」


「そ、そう……」



 沙織さんが切羽詰まったように問い質して来たので、それとなく返事をしておいた。本当の事を言うと、すぐにでも旅立とうと思っている。しかし、口にしたら何か面倒そうなので言わない。



「翔よ。いつ旅立つか決まっていないのなら、何処か泊まる所は決めておるのか?」


「えっ? あー、そうですねー」


「よければ、平等院家に――」


「翔!! また、私の家に泊まりなさい!!」


「えっ、あ、はい」



 なんか二つ返事で決めてしまったけどいいのかな。まあ、沙織さんが言ってるんだからいいよな。でも、まあ、残念ながら今夜にでも旅立とうと思うので泊まりませんが。



「ほう? ふふっ、なるほど、なるほど。沙織よ、頑張るのじゃぞ?」


「な、なな何を!」


「翔が旅人というから珍しい話が聞けると思ったが…………ふふっ、若い者同士愉しむのだな」



 なんか朱理さんと沙織さんが話してるけど、まあいいか。





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ハッハッハッハッハッハッ!! 今宵は無礼講じゃ!! 皆の者、存分に楽しめ!!」


「うおおおおおおおおおおお!!!」



 時は経ち、夜になっている。今、戦場だった場所は宴の会場と化していた。将憲が盃を高く上げて高らかに宣言すると、みんな一斉に呑み始める。



 どんちゃん騒ぎでうるさいが、それでもやっぱり宴は楽しいものだ。昼間は互いに憎しみ合って戦っていたくせに酒を共に呑み、言葉を交わし、料理を楽しむ。そこには、妖魔も人も関係無かった。



 きっと、これがこの国の理想の形なんだろう。



 そう思いながら、少し離れた所で酒をチビチビと飲む。バカ騒ぎには混ざりたく無いからな。見てる分は楽しいものだ。そうやって1人酒を飲んでいたら、宗政と照明が近づいて来た。



「翔殿よ。楽しんでおられるか?」


「ええ、まあ。楽しんでますよ」


「そうか、それは良かった」


「翔殿、今回の事は――」


「宴の席でその話は無しだ。今は楽しもうぜ」


「…………そう、だな!! ああ、今を楽しもう!」



 宗政と照明と何度か飲み交わす。その後は宗政と照明は他の場所へと移動して行った。また、1人になり酒を楽しんでいたら厳ついおっさんがやって来た。この人は不二虎厳三郎、沙織さんの父親だ。千鳥足では無いが、足元がフラフラしている。大分飲んでるなこの人。



「翔殿よぉ!! 飲んでるかぁ?」


「ええ、はい」


「そうかそうか!! ところで、一つ聞きたいのだが?」


「何ですか?」


「うちの沙織を嫁にどうだ?」


「ぶほぉっ!!」



 盛大に酒を吐いてしまった。



「おおっ、大丈夫か?」


「だ、大丈夫です。厳三郎さん、大分酔ってませんか?」


「そんな事は無いですぞ! それで先程の件なのだが」


「沙織さんを嫁にですか?」


「そう! どうですかな? 沙織も翔殿なら納得すると思うのだ!! 沙織は昔から、「結婚するなら父上よりも強いひとでは無いとしません!!」っと言ってましてなぁ。まあ、私としてもやはり娘には強い男と結婚して欲しい訳なんです。まあ、強いと言ってもただ強いだけでなく誠実で芯の通った男で無いといけませんからなぁ! その点、翔殿はもう文句の付け所がありません!!」


「は、はぁ」


「もしや、想い人でもおられるのかな?」


「い、いや、いませんよ」



 生まれてこの方19年!!


 彼女いましゃえーーーーん!!!



「それなら、やはり沙織を」



 ダダダッと地を猛スピードで駆けてくる影が一つ。その影は跳び上がり厳三郎さんの後頭部を叩いた。



「ち、ちちちち父上!! の、飲み過ぎです!! 翔が困っていますよ!! さあ、こちらに!!」


「お、おい、私は娘のお前の事を思ってだな」


「だ、誰も頼んでませんよ!!」



 厳三郎さんは沙織さんに耳を引っ張られて行く。なんで沙織さんが焦っていたのかはわから、いや、多分、俺に――



 自惚れで無きゃ惚れてるんだろうなぁ……


 正直、旅していつも思ってたけど関わってきた女性殆どフラグ建設してね?


 自意識過剰乙!!


 って言われるかもしれんがそう思うんだよ!!


 酒入ってるからかもしれんが…………


 でも、そうだったらいいよなぁ。



 その時、朱理さんと将憲が近づいて来る。



「楽しんでおられるか、翔殿」


「もちろんです」


「その、この度の件についてなのだが」


「俺は別に見返りが欲しくてやった訳じゃありませんし、礼を言って欲しくてやった訳でも無いですから、もう気にしないで下さい」


「…………ふふっ、朱理から聞いた通りの男だな」


「将憲様、だから言ったではありませんか。翔は何も求めはしないと」


「ふっ、不思議な人だ君は」


「ははっ。まあ、こうやって宴に参加させて貰えたんで十分なんですけどね」


「ところで、翔殿。朱理とは随分親しげな雰囲気だが」


「むっ、それはそうじゃろう。どこぞの阿呆が狐に誑かされて牢屋に放り込まれた私を救ってくれたのが翔なのだから」


「うぐっ!! だ、だから、その件については何度も謝ったであろう!」


「ほほほっ、翔となら存外悪くはありませんのぅ」


「なっ!? た、頼む!! す、捨てないでくれ」


「ふふっ、冗談じゃ。それではの翔」


「ほっ。で、ではな翔殿」




 惚気なら他所でやれ




 また、一人になった俺は酒を飲んで月夜を見上げる。

もう少しで次章に進みます!


では次回を!

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