幕間:ショウ救出
今リズ達はアルカディアに向けて全速力で走っている。どうしてそうなったかと言うと、リズ達の護衛対象のララを狙ってる奴が現れたからである。
だけど、今はショウが一人残ってリズ達を逃がす事に成功した。だが、敵は禁忌級を唱えれる程の手練れである。リズ達でさえも敵わぬ強敵に一人立ち向かっているショウだが生き残ることさえ難しいだろう。
それでも今はショウとの約束のために全速力でララをアルカディアまで送り届け無ければいけないとリズ達は走り続ける。
「皆、身体強化で行くわよ!!」
「そうですね! あと少しでアルカディアに付きますから!」
「ショウちゃんの為にも急がないとね!」
「ショウ……」
リズ達はさらに加速してアルカディアを目指す。走っている時に後ろから爆発音が聞こえてリズ達は振り返る。
「何!?」
「わかりません! 後ろからです!」
「ショウちゃんのいる所から煙があがってるよ~!」
「くっ……! 先を急ぐわよ!」
「はい!」
「おう~!」
一刻も早くアルカディアに辿り着かねばとリズ達は焦る。たった一人、強大な敵と戦っているショウを思ってリズ達は走る。今すぐにでも戻りたいという気持ちを抑えながら、ララを送り届けるという約束を果たす為に懸命に走り続けた。
「ハァ……ハァ……」
「見えましたよ!」
「アルカディアだ~!」
やっと見えたと一安心したリズ達だがここであることを思い出す。
「しまった! 入国許可証はショウが持ってたんだ! これじゃアルカディアに入れない!」
「大丈夫……私に任せて!」
「ララちゃん?」
門のところに辿り着くと兵士達が出て来て入国許可証を提示するように指示してくる。しかし、ララが一人前に出て兵士の前に立つ。
「入国許可証の提示を」
「通して……」
「ん? なっ、貴方様は!!!」
「早く通して! 私、アルカディア三国王の一人白獅子の娘! ララ・ヴァーミリアンの言葉である!!」
「申し訳ありませんでした! 今すぐに門をお開けします!!」
ララの姿を見て動揺する兵士にララは自身の身分を明かして兵士達に命令を下す。兵士達は大慌てで関所の門を解錠した。その様子を見ていたリズ達三人は唖然としている。
まさか、ララの正体がアルカディア三国王の白獅子の娘であったなど知らなかったのだから驚いて言葉も出ないのも無理はない。
「皆……急いで……私を城に……」
ララの一言で固まっていた三人が動き出す。ララを連れてリズ達は全速力で関所を抜けて城下町を駆け抜け城へと向かった。
辿り着いたアルカディアの王城に驚かされている三人の元に門番が近寄ってくる。
「誰だ。貴様らは?」
「アルカディア三国王の一人白獅子の娘、ララ・ヴァーミリアンです!」
「なっ! ララ様!!」
「いいから早く通して」
「はっ! ただいま城門を開けます!」
ララの言葉に門番は慌てて城門を開ける。リズ達は城へと入り三国王がいる玉座の間へと急ぐ。そこにいたのはエルフの女性と人間の男性と獣人の男性が談笑している最中だった。
「パパ!!」
獣人の男性がこちらを振り返る。厳つい顔に獅子の鬣のような白い髪をしている。最強の武人と噂されているようだが、あながち間違いではなさそうな感じである。筋骨隆々とした逞しい身体をしている。纏っている雰囲気が他の二人とは違って見える。
「ラ、ララ!! 無事だったのか!?」
「パパ! 話は後……今はパパの力を借りたいの!」
そう言うとララはショウが一人で戦っていることを説明する。真剣に話すララを白獅子の王は黙って耳を傾ける。一通りの話を聞いた白獅子の王は控えていた兵士に命令を出す。
「わかった !今すぐに向かおう! 私の部隊を呼べ!! 今すぐに出るぞ!!!」
「はっ!」
白獅子が兵士に命令を下して、兵士が玉座の間から出て行く。その後、後方で控えていたリズ達の元に白獅子の王が歩み寄る。
「君達が娘をここまで連れて来てくれたんだね。心から感謝をする」
「そ、そんな頭を下げないで下さい!」
「いや!! 今の私は一人の父親として感謝しているのだ。三王などではなく一人の父親としてだ」
「それなら~」
「ちょっ、ソフィ!」
「構わぬ。それより急がねばならんのだろう?? 君達の仲間が危険なのだから」
「は、はい! あの!私達も連れて行ってもらっても!?」
「もちろんだ!!」
リズ達は白獅子の王と共にショウの元へと急いで向かった。リズ達がそこで見た物は以前森だった場所だが今は焼け野原と化していた。あまりの変わりようにリズ達は言葉を失う。
一体どれほどの戦闘がこの場で繰り広げられていたというのか。そして、どれほどの強さをショウは秘めているのかとリズ達は思った。
「これ程とは……」
「ゼオン様!! あちらに人が!」
惨状を目の当たりにした白獅子の王ことゼオンはリズ達と同じく言葉を失っていたが、部下である兵士の報告に表情を変える。
「わかった!! この娘達の仲間かもしれぬ!! 急げ!!!」
「はっ!!」
駆けつけた場所ににいたのはショウだった。全身には傷が出来ており血を吐いた痕もあった。ショウは力なく横たわっている。その場の全員が最悪の結末を予想した。
「ショウ!!!」
「しっかりして下さい!!」
「ショウちゃん!! 起きて!!」
「ショウ!! ショウ!!!」
リズ、キアラ、ソフィ、ララの駆け寄る。四人が呼びかけてもショウは目を覚まさなかった。どれだけ声を掛けようとも目を覚ます気配のないショウを見て四人は涙を流し始める。
「そんな……嘘よ!! ショウが死ぬ訳ないじゃない!!」
「そうですよ!! ショウさんは、ショウさんは!!」
「ショウちゃん……」
「死んじゃダメって……」
全員が泣き崩れる。その時だ、ショウが少し動いたのだ。その瞬間を見逃さなかったゼオンが四人に声を掛ける。
「彼は生きているぞ!!」
「へっ? ショウ??」
「ちゃ、ちゃんと……生きてる……っす」
『ショウ!!!』
喜びのあまり四人はショウに抱き付いた。だが、どうやらそれがトドメとなった。意識は取り戻したと言ってもショウは満身創痍で死に掛けていたのだから、四人同時の抱擁は受け止め切れなかったのである。
「ほぎゃあああああ!」
ショウの悲痛な悲鳴がその場に響き渡った。四人はショウが気を失ったことに気付いてない。先程の悲鳴が聞こえていなかったのだろうかとゼオンが慌てて四人を引き離す。
「四人共!! 彼が死ぬぞ!?」
『えっっっ!?』
そして倒れるショウはゼオンに抱えられる。ゼオンは娘の恩人を死なせるわけにはいかないと部下達に指示を出した。
「彼を城まで運ぶぞ。絶対に死なせてはならぬ!! 娘を守ってくれた恩人を死なす訳にはいかぬぞ!!!」




