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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第六章 新たなる大陸、そしてぼっち旅

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翔、復活!!!

 尻尾を斬られた事よりも、またも邪魔をされた事に激昂するファイブは辰之進へと尻尾を伸ばしていく。辰之進は尻尾を刀で弾き返しながら、距離を詰めて行く。しかし、ファイブへと辿り着く前に尻尾で打ち上げられてしまう。辰之進はそのまま背中から地面に落ちる。



 今度は確実に倒したと思ったファイブは踵を返し、照明の方へと歩いて行く。しかし、ファイブは背中にゾワリと悪寒が走り、勢い良く振り返ると辰之進が立っていた。



「ば、バカな! 貴様、不死身か!?」



 驚愕するファイブ。そんなファイブを脇目も振らずに刀を天高く振り上げる。



「ハァ………ハァ……毘沙丸よ。力を貸してくれ!」



 すると、毘沙丸が妖しく光りだすと、刀身が紅く染まる。毘沙丸の変わり様にファイブが目を見開く。



「な、なんだ!! それは!?」



 ファイブは辰之進に問い掛けるが、辰之進は既に意識は無い。今の辰之進は気力だけで立ち上がり、復讐を果たそうとする鬼と化していた。



「俺の最後の一撃。受けて見よ!!!!」



 辰之進は一歩足を前に踏み出して刀をファイブに向けて振り下ろす。刀から三日月の様な形をした斬撃が飛び出し、地面を割りながらファイブへと向かって行く。



 ファイブは尻尾で防ごうとして尻尾を突き出すが、呆気なく斬られてしまう。ファイブは尻尾がいとも簡単に斬られたのを見て慌てて腕を交差させて防御の姿勢をとる。



「ぐっ! ぐぐぐっ!! ぐぅうう!!!」



 斬撃がファイブを押して行く。ファイブは地面を削りながら後ろへと下がって行く。このまま、ファイブは斬られてしまうかと思ったが――



「ぐぅう!! おおおおおおお!!!」



 斬撃を見事に打ち破ったのだ。しかし、それでもファイブの腕からは血が滴り落ちている。相当ダメージを受けた様でファイブは肩で息をしている。



「くっ……ハァ……ハァ……まさか、人形如きにここまでダメージを受けるとは」



 ファイブは辰之進へと目を向ける。辰之進は完全に意識を失った様で既に倒れ伏せていた。どうやら、先程の一撃が本当に最後の一撃だったようだ。もう、立ち上がる事は無いだろう。









「くっ……ここまでか」


「そ、そんな!」



 照明が地面に手をつき、苦悶の表情を浮かべる。沙織も照明のそんな顔を見て悲痛な顔をして沈黙してしまう。最早、ここまで。最善を尽くしたが翔は回復しなかった。望みは絶たれた。そう思えたかの様に見えたが――



「ぅ……ぁ……」



 翔が呻き声を上げたのだ。照明は聞こえていなかったのか何の反応も無いが、沙織には聞こえていた。



「翔!? 翔!! 私の声が聞こえる!?」


「ぅぅ……さ……おりさん?」


「翔!!」



 遂に目を目を覚ました翔。しかし、状況は最悪だ。意識が戻っただけマシではあるが、それでも翔が満身創痍なのは変わらない。照明では翔の傷を癒す事は出来なかったのだ。



「目が覚めたか!」


「あんたは……確か照明……」


「ああ、そうだ。それよりも動けるか?」



 照明に言われて身体を動かそうとするも、激痛で動けない。動かさせるのは指と首のみ。それ以外は激痛が走り満足に動かす事はできない様だ。



「ぐっ!!」


「くっ、まだ力が残っておれば!」



 照明は地面を叩きつけ悔しがる。



「俺の、俺の剣と鞘を……」



 翔が僅かに腕を持ち上げて指を指す方向に、剣と鞘とコートが転がっている。アレは沙織を人質に取られてしまい、地面に置いた翔の武器達だ。



 照明と沙織は翔が指差した方向に顔を向ける。剣と鞘とコートの存在に気付き、翔に問い掛ける。



「アレがあればどうなるの?」


「俺の……俺の傷が治ります……」


「わかった。私が取りに行こう!」


「いえ、照明殿。私が行きます! いえ、行かせて下さい!!」


「いや、ここは私が」


「お願いです。私に行かせて下さい! それに照明殿は疲労しきっています。私に任せては貰えませんか?」


「……わかった。貴方に頼みます!」


「ありがとうございます! 翔、待っててね。必ず持って帰るから!」



 沙織は翔の手を握り約束すると、立ち上がり剣が置いてある場所へと駆けて行く。









「むっ!?」



 ファイブは腕が治るのを確認して、翔の方を向いたら沙織が走って行くのを見つける。どこに向かっているのか見たら、それは翔の武器達の場所だった。



「まさか、勇者が!? させぬわぁっ!!」



 ファイブは沙織の方へと駆けて行く。



「ハァ……ハァ……よし!」



 沙織は剣と鞘を手に取り、戻ろうと振り返るとファイブが迫って来ている事に気付く。鬼気迫る顔で駆けて来るファイブに足がすくむ。怯えて動けずにいた時、沙織の前に宗政が立ちはだかる。



「それを早く!!」


「む、宗政殿!?」


「私があの化け狐を抑えます!! さあ、早く!」


「は、はい!!」



 宗政はファイブへと駆け出し、その内に沙織は翔の元へと急ぎ戻る。



「ぐぅうう!! どこまで邪魔をすれば気が済むのだ貴様等はぁっ!!!」


「彼女の元へは行かせんぞ!」



 ファイブに刀を振り下ろすが、尻尾で刀を折られる。刀を折られて一瞬唖然とするが、折れた刀でファイブを突き刺す。ファイブもまさか折れた刀で突き刺して来るとは思わず、肩を刺されてしまう。



「ぐおおおっ!! 己!!!」



 肩を刺されたファイブは頭に血が上り、九本全ての尻尾で宗政を攻撃して吹き飛ばす。



「ぐはぁぁあああ!!」



 地面を二度、三度と跳ねて止まる宗政。それでも立ち上がろうとした所にファイブが上から尻尾で叩き潰す。宗政は完全に意識を失ってしまった。



 ファイブが急いで振り返り沙織を追いかける。ファイブはすぐに沙織へと追いつき尻尾を伸ばす。沙織の背中を貫こうと尻尾が迫る。しかし、そこに――



「させん!」



 照明が飛び出し、自らの身体を盾にして沙織を守る。ファイブは照明を吹き飛ばして沙織へと尻尾を伸ばす。



「翔、受け取って!!」



 沙織は翔にエクスカリバーと魔法の鞘を投げ渡す。



「くっ!! あぁぁあああ!!」



 痛みを我慢して腕を上げてエクスカリバーと魔法の鞘を受け止める。



「ごふっ……」



 沙織は翔の目の前で腹を尻尾に貫かれて吐血する。そして、尻尾がゆっくりと抜かれると沙織は膝をつき倒れそうになる。だが、倒れる事は無かった。



「沙織さん。ありがとうございます。後は俺がやります。今は休んでて下さい」


「翔…………勝って」


「はい!!!!」



 翔は沙織にパナケイアのネックレスを付けて腹の傷を完治させる。そして、沙織をゆっくりと寝かせてから立ち上がり、ファイブへと振り返る。



「ファイブ…………終わりにしよう」


「クククククッ!! カッカッカッカッ!! 終わり? 終わりだと?? 貴様一人で私を殺そうと言うのか!? クカカカカカカカッッッ!! 思い上がりも甚だしいわ!!!」


「思い上がりでも何でもねぇよ。俺はキレちまっただけだ!!! お前の命、貰うぞ!! ファイブ!!」

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