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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第六章 新たなる大陸、そしてぼっち旅

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逃走劇

「面倒なことになってしまった……」



 天守閣から飛び出して逃げたはいいが、この後の事を何も考えていなかった。空を駆けながら、思考するが何も思い浮かばない。



 さて、どうしようか?


 綾乃を殺すには他の奴らを蹴散らす必要がある。


 蹴散らすのは簡単なのだが、何故か気にかかる。


 平等院将憲の人間性が。


 そもそも、平等院将憲は妖魔と人との共存を果たした人間だ。


 そんな男が妻を牢獄にぶち込むか?


 綾乃が誑かした?


 それしか思い浮かばないな。


 仮に綾乃が誑かしたとしたら、ファイブの能力って事か?


 あー、もうダメだ。


 わからん!!



 兎に角、今は対策を練る為に逃げよう。速度を上げようとした時、背後から火の玉が飛んで来る。身体を捻り躱して、火の玉が飛んで来た方を見てみると白色の法衣を着ているイケメンが立っていた。



 くそっ!!


 イケメンばっかり!!


 なんだよ、異世界ってのは!!



 法衣を着たイケメンが懐から札を取り出すと、その札を俺目掛けて投げつけてくる。そんな札がここまで届くと思っていると、札は火の玉へと変わり飛んで来る。



 その光景を見て目を見開く。火の玉を腕で振り払い法衣のイケメンに目を向ける。法衣のイケメンもこちらを見据えている。法衣のイケメンは手を空に翳すと剣が現れて、それを握りこちらへと向けて来る。



「何者だ、貴様? 妖術使いか? それとも、陰陽師か?」


「俺は妖術使いでも、陰陽師でもねえよ」


「ならば、何者だ。ここが何処だか分かって襲撃を掛けたのか?」


「ああ、平等院の城ってわかっててやったよ。それで、あんたは誰だ?」


「ふっ、そのような愚か者がいようとはな。私の名は阿部照明(てるあき)だ。平等院家に代々仕える陰陽師である。平等院家の敵は阿部の敵。つまり、貴様は私の敵だ! 悪いが逃がしはしないぞ!! 行け! 我が眷属達よ!」



 剣を高く振り上げて、下ろすとそこには鬼が二体現れる。一方の鬼は赤く一本の角が、もう一方の鬼は青く二本の角が、それぞれの鬼は地面が陥没する程強く蹴り跳躍してくる。



「んなっ!!?」



 二体の鬼は交差する様に爪を振るって来る。干将・莫耶を取り出して二体の鬼の爪を防ぐ。鬼は重力に引かれて落下して行く。鬼の爪を防いだが、その威力は凄まじいもので防いだが両腕が痺れている。



「ほほう? 我が眷属達の一撃を防いだか。中々にやる様だな」


「くっ」



 まだ、何か隠してるな。


 このまま、ここにいるのはマズイ。


 天守閣で綾乃を守った宗政も来てしまう。


 流石に照明と宗政に組まれたらキツイ。



「まだまだ、これからよ! 行け!」


「ゴアッ!」

「ガアッ!」



「チィッ!!!」



 空を駆けて逃げるが、先に回り込まれてしまう。赤鬼が飛んで爪を振るって来るが干将で防ぐ。赤鬼はそのまま自然落下して行く。落下している赤鬼の背後から青鬼が現れて赤鬼の背中を台にして蹴り俺の上を取る。



「大道芸かよ!!」


「ゴァアアッ!!」



 青鬼は上から落ちる様にして爪を振るい、俺を切り裂こうとしてくる。干将・莫耶を交差させて爪を防ぎ、青鬼を蹴り飛ばす。青鬼が落ちて行き、空を蹴って逃げようとしたら目の前に宗政が現れる。



「なっ、空だぞ!?」


「覚悟!!」



 抜刀し一閃してくる。干将で受け止める。宗政は重力に引かれて落ちて行くと思いきや、そのまま浮遊し続けている。



「なんで!?」


「照明か!!」


「宗政! 頼むぞ!」



 どうやら、照明が宗政に何か術を施したらしい。多分、空を飛べる様な術を施したのだろう。だが、何故宗政だけにしたのだ? 赤鬼と青鬼にもしていれば良いのに、何か理由があるのか?



 考えても仕方ない。


 宗政をどうにかしなければ!



 宗政に干将を振るい叩き落そうとするが、刀で防がれる。防いだ隙を狙い腹に蹴りを入れるが膝で防がれる。莫耶で斬りつけて叩き落す。



 今の内に逃げるしか無い!!



「ウガァッ!!」


「なっ、赤鬼!?」



 いつの間にか跳躍して来た赤鬼に掴まれて、地面に落とされる。



「ぐぅっ!!」


「捕まえたぞ、賊め!」


「くそっ!!」



 なんて力だよ!


 振りほどけない!!


 くそっ!!



煉獄闇装れんごくあんそう!!」



 魔力化を施して、赤鬼の拘束を振り払い空へと逃げ出す。見下ろして見ると、照明と宗政が並んで立っていた。



「妖術か!?」


「いや、妖気を感じられん。アレは……」


「悪いがここまでだ!!」



 最高速度で空を駆けて逃げ出す。流石に俺の最高速度には赤鬼も青鬼も追い付く事は出来ず、逃げ切る事に成功した。今回ばかりは少し疲れてしまった。



 人気のいない所まで逃げ切り、地面に降り立ち一息つき休憩する。



「はぁ……どうすっかな」



 愚痴を吐いても何も思い浮かばない。本当にどうしようかと思っていた時、妙案を思いつく。



「そうだよ。クロがいるじゃん! 来い、クロ!」


「俺様はお前のブレインかよ……」


「いやぁ、俺じゃあどうしようも出来ないんだよね」


「はあ……」


「な、何か作戦ってある?」


「んー、お前の記憶を見たけどさ、特に無いんじゃね?」


「えっ」


「まあ、あるにはあるけども……」


「早く教えてくだせぇ!」


「綾乃の前の妻を連れ出すしか無いだろ」


「えっ、そんなんで良いのか?」


「前の妻に話しを聞くしかねえだろ。平等院将憲の事を詳しく聞くしかよ」


「あー、なーるほど。確かにそれしか無いな」


「とりま、頑張れ」


「お前もついて来い!」




 クロを肩に乗せて、再び城を目指して飛び立つ。

歯が痛いぃいい


では次回を!

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