倭国に上陸
背後から現れたもう1匹のリヴァイサンは俺を見て嬉しそうに餌だ、と叫んだ。冗談では無い、こちらとら、彼女が出来るまで誰にも食われる予定は無いのだ。もちろん、物理的な意味でも、性的な意味でもだ。
「おう、コラ、ボケ!! エドラドス!! いきなり、現れた思うたら、何、人の友達を食べようとしてんねん!! いてこますぞ、ハゲ!!!」
「ふん、相変わらずだなウォルテクス。人など俺らにとっては餌に過ぎん。それを友達と呼ぶとは、やはりお前とはソリが合わんな」
「ワイもお前とはソリが合わへんわ」
「それより、そこを退け。俺はその人間を食べたいのだ。食事の邪魔をすると言うのならば、いくら同族とてタダではおかんぞ?」
「ほう? ワイと喧嘩するんか? ええ度胸やないか!」
「口で言っても聞かんか…………ならば、お前を退けるのみよ!」
「かかってこいや!! このどアホがぁあ!!!」
怪獣大戦争勃発。
巻き込まれる俺。
守ろうとする海龍。
食べようとする海龍。
今、橋の上では歴史に残るであろう、怪獣大戦争が勃発していた。きっと、俺はこの光景を忘れない。目の前で海龍が争い、凌ぎあっている姿を。
きゃあああああ!!!
口からビーム出したぁああ!!
ビームやら海水やら鱗やら血などが飛び散って来る。特撮映画でも、ここまでど迫力なものは無いだろう。ていうか、現実だからな。とりあえずは、巻き込まれ無いように逃げ回っている。
「ドラァァアアアアアアアア!!!」
「かぁああああああああああ!!!」
うひょーーーー!!
声の振動で空気がビリビリしてるよぉおおお!!
鼓膜が破れてしまうわ!!
とにかく、この戦域より離脱しなければ!!
走り出した俺は次の瞬間にリヴァイサンの攻撃を受けてしまい、海へと放り出される。これは、終わったと橋から落ちながら思う。海へと落ちた俺に気付かずにリヴァイサン達は戦い続ける。
「おぼ、溺れる!!」
「ファイブ、死ぬなよ」
「なら、縄解け!」
「嫌だね!! てか、なんか流されてね?」
「当たり前だろうが!! 大渦に飲まれてんだよ!」
「オワタ!」
大渦に飲み込まれて、どこへともなく流されて行く。きっと俺の運命は行き当たりばったりなのだろう。
◆◇◆◇◆
目が覚めると、見知らぬ砂浜に打ち上げられていた。身体を起こして周りを見てみる限り、どこかの島であるようだが、人の気配を感じられ無い。地図を取り出して、ここが何処なのか調べてみると、ここが倭国である事が分かった。つまり、黒髪美人さんがいるんや!!
興奮して立ち上がると、ある事に気付く。ファイブがいないのだ。しかも、何故かグレイプニルが無造作に転がっている。もしかして、いや、確実に、ファイブに逃げられた。これはとんだ失態だ。奴が倭国で何をするかは見当もつか無いが、厄介な事になる事だけは分かる。
なんとしてでも、見つけ出さねば。
すぐに砂浜から走り出して人がいる場所へと向かう。地図を広げて見る分ではすぐ近くに村があるはず。そこを目指して走り出した。
村へとたどり着くと、そこには黒髪の人達がいた。なんだか、親近感が湧いてくる。ていうか、落ち着きを感じる。異世界と言うよりは、元の世界の田舎に帰って来た気分だ。
とりあえず、村へと入り、片っ端からファイブについて聞いて回る。しかし、誰も見て無いし、知ら無いと言う。ファイブはここには来て無いようだ。ならばと、地図を広げて他の村も見て回る事にした。
近隣の村々を回ったが収穫は一切無し。つまるところ、ファイブが何処に行ったかわからずじまいである。肩を落とし歩いていたら前方に団子屋を見つける。丁度、小腹も空いていたので団子屋に向かおうとしたのだが――
「か、金がねぇ……」
諦めて通り過ぎようとした時、団子屋から怒鳴り声が聞こえてくる。聞き耳を立てると、何やら揉め事のようだ。
「ああ!! こんなまっずい団子に金を払えだぁ? ふざけんじゃねえぞ!!」
「で、でも、お代は払って貰わないと……」
「ああっ? 声が小さくてよく聞こえねえぞ!! もっとハッキリと喋りやがれ!!」
「ひぅ……」
「おらっ! 早く言ってみろや! 何にも無いなら俺は帰らして貰うからな!」
…………ここで俺があいつを倒せば御礼として団子くらい貰えるんじゃね?
ふっふっふっ!!
団子の為だ。
それと、団子屋の娘さんが可愛いやんけ!!
うおおおおおおお!!!
今、俺が助けてあげますよぉおお!!
早速、団子屋の娘さんを助けようとした時、1人の若者が怒鳴り散らしている男に食ってかかる。
「そこら辺にしておけ……」
「ああ? なんだ、テメェは?」
「客だ」
「なんか俺に言いてえことであんのか? あん?」
「いい加減、その臭い口を閉じろ。お前のせいで団子が不味くなる」
「な、なんだと、テメェ!! ぶった切ってやる!!」
男が腰に差している刀に手を伸ばし抜こうとしたが、若者によって止められる。
「止めておけ。死ぬだけだぞ」
「テメェがだろうが!!」
男は無理やり手を振り払い、刀を引き抜く。男が刀を振り上げた時、若者が目にも止まらぬ速さで刀を抜き去り、横に一閃する。
若者が刀を鞘に収めると、刀を振り上げていた男の身体が上と下でズレて崩れ落ちた。悲鳴が団子屋に鳴り響く。
わぁーお!!
「すまない、汚してしまって。代金はここに置いて行く。釣りは結構だ」
若者は金を置いて行くと、そのまま団子屋を去って行った。
あー、わけわからん
では次回を!




