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アホで不憫な彼は異世界で彼女を作る為に奔走する  作者: 名無しの権兵衛
第二章

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護衛の依頼⑤

 前回の一件で俺はララちゃんにさらに懐かれた。俺が料理してる時も近くに居座るし、飯を食べる時は俺の膝の間に身体をねじ込んでくるようになった。しかも朝起きたらいつの間にか一緒に寝ていて、ララちゃんを探しに来たリズに勘違いされてビンタを食らう始末だ。



 理不尽やでぇ!


 俺は悪くないじゃん!!


 不可抗力だよね!!


 なんで叩くの?


 ロリコンは死ねってか!?


 俺はロリコンじゃないから安心しろよ!



 ソフィさんとキアラさんもニヤニヤしてないでフォローして欲しい。俺が何を言っても聞き入れてもらえないから助けて欲しいのに。



 マトモな奴が一人もいねえじゃねえか!




「もう六日目ですよ」


「早いね~」


「ん!」


「さっさと準備しなさい!」


「はい……」



 俺に味方はいないのか……


 おお!


 神よ!


 何故我にこのような仕打ちを?


 あなたを恨む!!


 俺は貴方を許しはしない!!


 せめてもっと優しいお姉さんと出会わせろよ!!!


 俺女運ねえのかなぁ…


 はぁ……やってらんねーよ!



 一人寂しくテントを片付ける。誰も手伝ってくれないので時間が掛かってしまった。ようやく、片付け終わるとリズに声を掛けられる。



「準備出来たなら出発するわよ、ショウ!」


「はい。出来ました」


「ショウ……ん!」


「あー、手を繋ぐの?」


「ん!!」


 はぁ~癒されるのう……


 ふぁあああああ!!


 熱い熱いおおおおおお!!!



 手を差し出してきたララちゃんの手を握ると背中に火球をぶつけられた。衝撃と熱さに俺は地面を転がり回る。



「ララちゃんとイチャつくな! ララちゃんは護衛対象でしょ!! 守るべき対象とイチャつくなんて何考えてんのよ!」



 だからって火球を撃たなくてもいいのにと恨みがましくリズを見ながら背中の火傷を治す。そんな俺にリズはうろたえる。



「な、何よ!? 何か文句でもあるわけ!?」


「いえ、滅相もございません」


「ショウ……」



 ララちゃんは手を繋げないと分かると悲しそうに耳を伏せる。手を繋いであげたいけどリズが怒るのでどうしようもできない。



 なんだか最近やたらと邪魔してくるんだよな。


 はっ!


 もしかして!?


 俺に気があるとか!?


 いや、無いだろうな……


 ララちゃんを守ろうとしてんだよな。



 きっとそうだ。リズってああいう事言ってるけど本気でララちゃんのことを守ろうとしている。もし、勘違いして告白なんてしたら――



『はっ? あんた何言ってんの? 私があんたみたいなブサイクの事が好きなわけ無いでしょ。頭でもおかしいんじゃ無いの?』



 ――きっとこう言われるに違いない。いや、下手したら最上級魔法で殺されるかもしれない。考えただけでも恐ろしく、思わずブルってしまう。



「リズ別に手を繋ぐくらいは許しても」


「いいえ、ダメよ!」


「仕方ないよ~それじゃ行こう~」


「ういっす!」



 キアラさんの言葉にリズは反対している。長年の付き合いのある二人は諦めてしまい、ソフィさんが切り替えるように出発の合図を出した。



 ララちゃんまだ耳伏せてるよ……


 そこまで悲しいのか?


 うーん、手を繋げないくらいで大袈裟だな。


 それにしてももう六日目か……


 結構経つなぁ……


 マルコ元気にしてっかな?


 セラさん仕事忙しくないかな?


 マリーさん変なもの買ってないかな?


 セリカさんの料理食いてえな…


 ルドガーさんは……きっと喜んでるだろうな。


 なんせ娘達にたかってた虫が一匹消えたんだからな。



 なんだか気分はホームシックになってしまった。我が家では無いけど、あそこは居心地が良かった。宿に帰るとおかえりって迎えてくれるし、何よりあの家族は皆暖かくて和気藹々で見てる方も幸せだった。そんなことを考えると帰りたくなる。



 気持ちを切り替えよう!!


 うし!!


 やるぞぉ!!!


 ぶふぇえああああああ!!


 アビャビャビャビャビャビャ!!


 痺れるおおおおおお!!



「急に立ち止まらないでよ!」



 だからって雷球を撃つか普通!?



 もはやリズは俺を殺しにかかってるんじゃ無いのかと疑問を抱いてしまう。やっと、旅も終わりに近付いて来たのに、俺のほうが先に死んでしまうかもしれない。




「リズ。もう少しショウさんに優しくしても」


「そうだよ~あんまり酷いことをしてるとショウちゃんに嫌われちゃうよ~」


「えっ!?」


「あら、どうしたんです、リズ?」


「な、べっ別になんでも無いわよ!」


「動揺しちゃって~可愛いんだから~」


「うっ、うるさい!! 二人も雷球浴びせるわよ!!」



 盛り上がってる所悪いんですけど、俺は痺れて動けないんです。ビクビクと痙攣して横たわっているとララちゃんが近付いて来る。


「ショウ……無事?」



 ありがとう、君だけだよ!


 俺の心配してくれるのは!!


 マイエンジェル、ララちゃん!!!



 唯一心配してくれたララちゃんに大絶賛しながら俺は飛び起きる。痺れが残ってないかを確認して大丈夫だと判断する。



「よっと……うぅん。もう平気かな!」


「良かった……」


「ありがとね、ララちゃん」



 そう言いながら俺はララちゃんの頭を撫でる。猫耳の感触も楽しみつつ撫でるとララちゃんが恍惚とした顔になる。



「ふにゃぁ……!」



 なんか気持ち良さそうな声を出すララちゃん。そういや初めて会った時も頭を撫でると喜んでた事を思い出す。



 今度から頭を撫でてあげるか。


 それにしてもあの三人……


 いつまで喧嘩してるんだろ?


 おっ?


 ようやく終わったみたいだな。


 さてと、さきに進むか!!!



 三人の喧嘩が収まり、歩き始める。大分、歩いてきた俺はつい愚痴を零してしまう。



「もう結構な距離歩いたけどアルカディアはまだっすか~?」



 俺結構疲れたんだけど……


 いやマジで……



 しかもララちゃんも結構しんどいようだから歩くペースが落ち始めたので、今は俺がおんぶしている。



「もうそろそろなんだけど……」


「あと少しの我慢ですよショウさん」


「ショウちゃん私もおんぶ~」



 是非喜んで!!!


 でも背中は無理なんで前で!!



 冗談は心の中にしまって、俺は思ったことを口にした。



「今襲われたらヤバイっすね」


「変なこと言わないでよ。本当に襲われたらどうすんのよ」



 リズに突っ込まれてしまう。俺はそのまま黙っておこうとしたら妙な気配を感じたので聞いてみる。



「あのなんか変じゃありません?」


「何がですか?」


「いやわかんないすけど、なんか変な感じっす!」


「何も感じないよう~」



 他の三人は首を傾げており、本当に何も感じていない様子だ。俺の勘違いかと自分を疑ってしまう。しかし、足を前に踏み出した瞬間、背筋にゾワリと不気味な気配を感じた。



 ッッッ!!!



「全員飛べえっ!!」



 俺は飛び上がり叫んだが遅かった。足元には見た事もない魔法陣が広がっていた。その魔方陣の中に三人は捕らわれてしまっている。



「なっ!? これは捕縛用魔法陣!」


「どうして、こんな所に!?」


「あちゃー捕まっちゃった~」


「呑気な事言ってる場合じゃ無いわよ!」


「待ってろ!今助ける!!」



 俺が三人に駆け寄ろうとした時、魔法が飛んで来た。慌てて回避して、飛んできた方向に顔を向けて魔法を撃ってきた犯人を捜す。



 誰だ!?


 どこにいやがる!?



「ショウ気を付けて!! 多分奴隷商の人間よ!!」


「奴隷商!? なんすかそれは?」


「獣人やエルフなんかを捕まえてるクズ共よ!!気を付けて! 奴らは奇襲に特化してる!!」



 マジかよ!?


 だから気配も隠すのがうめえのか!!



 こっちにはララちゃんがいるから狙っているのか。しかし、状況はカマキリの時よりも不味いかもしれない。戦力である三人が動きを封じられてしまっているのだから。



「ララちゃん……これ持って皆の所に」


「これは?」


「斬魔剣。俺が作った武器だ。これであの魔法陣を斬れば魔法の効果が無くなる! 頼めるかい? 無理なら――」


「やる! 私皆を助ける!」


「そうか! じゃあ頼むよ。俺は奴らをなんとかするから!」



 ララちゃんの勇気ある返事を聞いて気合を入れる。まずは奴らの注意を俺に向けないといけないので俺は爆竹を投げる。奴らが注意を向けたか分からないが武器を取り出した。



 来い、黒蓮、白夜!!



「ストームバレット!!」



 声高らかに叫ぶと俺は風属性の弾丸を撃ち竜巻を発生させる。竜巻は木々をなぎ倒しながら消えていく。そして、倒れた木の陰から複数の人影が逃げていくのを見つける。



 見えた!!!


 そこだああああああ!!!



「アクアバレット!!!フレイムバレット!!」



 逃げていく複数の人影に俺は二つの属性弾丸を敵に撃ち込む。その内の一つには直撃したが一つは外してしまった。



「ぐわっ!!」



 チッ!


 逃がすか!!!



 追い掛けるが相手の方が素早いので追いつけない。そこで、俺は初使用となる魔力化を発動した。雷属性の最上級を唱える。



「雷牙一閃!!」



 その魔法を相手に放つのではなく魔法を己の体に取り込んでいく。これが《魔力化》の使い方である。バチバチと身体が稲光しており雷そのものになったようだ。



「おおっ!! なんか雷様だな!」



 一気に行くぜ!!



 俺は地面を蹴ると雷に匹敵するのではと錯覚する速度で一気に距離を縮めた。逃げる人影の前に先回りすると相手は驚愕の声を上げる。



「なっ、なんだ!!」


「逃がすかよ!」


「くっ……どけぇ!! 岩石崩落!」



 地面が盛り上がると岩が浮き上がり、俺の上に来ると落ちてくる。俺は避ける素振りを見せず、そのまま岩に押しつぶされた。



「ビビらせやがって!」


「残念だったな」


「ッッ!? なんで、当たったはずだ!」


「ああ、当たる瞬間に避けた」


「馬鹿な!! そんな風には見えなかったぞ!」


「まあ俺、今は雷だからね」


「訳分かんねえこと言ってんじゃねえぞ!」



 うろたえる目の前の男は隠し持っていた短剣を取り出したら、俺目掛けて突っ込んでくる。そのまま短剣で俺を切りつけてきたが、物理攻撃は今の俺に効かない。



「なっ! 斬れない!?」


「これ以上は俺も持たないんでな! くらえや、雷撃爆衝!!!」



 腰を落とし力強く踏み込んで男の腹に掌底を打ち込んだ。激しい稲光を起こりバチバチと男を痺れて倒れる。



「ごあっっ……!」



 ふう決まった!!


 それよりララちゃんの所に!!



 バチッと電気の音が弾けて俺はその場から消え去る。リズ達の所に戻ると捕縛の魔方陣から解放されていた。しかし、リズ達の視線の先にはララちゃんが捕まって人質にされていた。



 俺のせいだ!!



 まだ仲間がいたとは知らなかったとはいえ、ララちゃん一人に任せてしまった俺が悪い。だけど、今は一刻も早く助けるべきだと判断した。幸い、ララちゃんを人質に取っている男は俺の存在に気付いてはいない。



 今が好機!!


 一気に決める!!!



「雷刃一閃!!」



 悟られないように一瞬で男の背後に回りこんで後頭部に魔法を打ち込んだ。変な声を上げながら倒れる男からララちゃんを救出する。



「怪我はない、ララちゃん!?」


「ん……大丈夫」



 無事を確認してホッと溜息を吐く。怪我などでもしてたらどれだけ責任を負わなければならないかと思っていたから一安心だ。呆気に取られていた三人もこちらに駆け寄って来る。



「大丈夫ですか!?」


「怖くなかった?」


「平気だった~?」



 一件落着だな!!


 とりあえずあの奴隷商の奴らを捕まえ目的を吐かせるか!

改訂済み

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