武器を運ぶ
ギルドを出て依頼主の元へと向かう。今回の依頼は護衛の依頼だった。荷物の詳細は不明だが報酬が良かったのでそれを受けることにしたのだ。
依頼主の元へと向かい、辿り着くとそこには服を着た豚が立っていた。ちなみに言っておくが昨日、俺が脅した豚では無い。別の豚だ、ただし、体型はほぼそっくりだ。一つ違うとすればこいつの方が汗を掻いてるという事だ。
「いやぁ、貴方が依頼を受けてくれたお方ですか」
ハンカチで汗を拭きながら話し掛けてくる。見た目の割には丁寧な人だと評価を改める。
「報酬が良かったので」
「はっはっはっ。正直なお方ですね。それにしても、お若い方で驚きましたよ。相当強いんでしょうねぇ」
「いえいえ、俺なんてまだまだですよ」
フハハハハハハ、もっと褒めろ!!
「謙遜な方ですね。ますます頼もしい限りです」
「期待に応えれるよう頑張ります」
頭を下げて謙虚さアピール。
「それでは、早速出発しましょうか」
「ええ。あのひとつ聞いてもよろしいですか?」
「なんなりと」
「運ぶ荷物を教えてもらいたんですが? 駄目でしょうか?」
「いえ、構いませんよ。私が運ぶ荷物は武器ですよ。荷車の中を見てもらっても構いませんよ」
そう言われたので中身を見せてもらうと、剣や槍、弓矢に鎖、ハンマーに鉄球などの武器が大量に積まれていた。戦争でも始める気かよ、と思い商人のおっさんに振り返る。
「何ていうか、戦争でも始める気みたいですね」
「おや、ご存知無いので? 近々、戦争が起こるのですよ?」
「はっ? 冗談でしょう?」
「いえいえ、冗談ではありませんよ。今、大司教様と聖女様が政権争いをしているのは存じておりますよね?」
「ああ、それは知ってるけど、関係あるのか?」
「それが大アリなんですよ。大司教様が掲げる目標は亜人の淘汰です。まあ、簡単に言いますと隣国でもある、獣王国を滅ぼそうとしてるのですよ。そのため、武器を集めているのです」
「………」
「皮肉な話ですが戦争は我々商人にとって最も稼げる絶好の機会ですからね。それに乗らない手は無いのですよ。お分りいただけましたか?」
「ああ、十分です。ですが、大司教様が勝つとはまだ分からないのでは?」
「いえ、聖女様の掲げる目標がこの国の教義に反しているのです。その目標とは亜人との共存。つまり、この国を根本から否定しているものです。この国は元来より人こそが至高の存在と信じておりますから、聖女様の掲げる目標は国民達にとっては受け入れ難いものなんです」
俺、聖女様の応援する事に決めた!!
あっ………
じゃあ、昨日俺がした事は聖女様にとってマイナスだったわけか!!
やっちまったなぁ……
まあ、気にしても仕方ない!
うん!
今は依頼をこなそう!!
商人の馬車に乗り込むと商人が御者席に着き馬車を走らせる。それより、気になるんだがこの武器は一体どこに運ぶのだろうか。気になっていたら馬車は街の外へと向かっている。街の外に出るということはどこかの村にでも売りつけに行くのか?
そう思っていたが、全く違うようだった。街から出ると森の中へと入って行く。森の中を順調に進んでいたが、突然馬が止まり馬車が止まってしまう。商人のおっさんが馬に鞭を打ち走らせようとするが馬は怯えて全く進もうとし無い。
俺は馬車から降りて馬の前に歩く。茂みの方から複数の気配が感じられる。そういえば、最近は魔物と戦っていなかったな。レベルも相当高くなって来たのでアレをやる事にした。
気配が感じられる茂みの方に殺気を放つ。すると、先程まで感じていた気配が消えて行く。一目散に逃げて行ったのだ。一度やってみたかった。強者が殺気を放つだけで敵が怯えて逃げ出すというシチュエーションを!
まあ、何事も無かったので良かった良かった。商人のおっさんに魔物がいなくなった事を伝える。馬車に乗り込み再び走り出す。馬も魔物がいなくなった事で安心したのだろう。やはり、野生の勘というのは凄いものだ。
しばらくして、森を抜けると屋敷が見えてくる。どうやらあそこが目的地のようだ。屋敷に着くと商人のおっさんは馬車から降りて扉に付いている鈴を鳴らす。扉が開き使用人が出てくる。商人のおっさんが説明をすると屋敷の中から主人と思わしき人物が出てくる、その横には麻袋を持った使用人がいる。
麻袋を商人のおっさんに渡すと商人のおっさんは主人を馬車の方へと案内し中身を確認させる。主人か頷くと使用人達が武器を運び出す。俺はただその光景を見ているだけだった。
一通り武器を運び出すと商人のおっさんと主人が軽く話しをして商人のおっさんが馬車へと戻って来る。
「いやぁ、お待たせしました。それでは帰りましょうか」
「了解だ」
そして、何事も無く街へと戻り報酬を受け取る。俺としてはあまり仕事をしてい無いが気にする事は無いだろう。適当に宿を取り寝る事にした。
明日は良い事ありますように……
更新遅れてしまい申し訳ありません
では次回を!




