鉱山の町
う〜ふ〜ふ〜ふ。
楽しいなぁ〜。
現在、俺はお空を飛んでいます。それはもう、ものっそい速度で弾丸の様に飛んでいます。しかし、重力の影響を受け下へ下へと落ちてもいます。つまり、綺麗な放物線を描いております。
なんで、こうなったかと問われれば答えは一つです。
ええ、また、やってしまったのです。
調子に乗ってしまいました。
目を瞑りどうしてこうなったのか一つ一つ、記憶を思い返そうとする。たった、数時間前の出来事を一つ一つの記憶を手探りで探して思い出して行く。
◆◇◆◇◆
「有り金全部置いて来ちまった……」
次の町が見えて来た頃に前の町に有り金全部を置いて来たことを思い出し後悔する。戻ってもいいのだがアレだけカッコつけておいて今更、お金を取りに行くのはカッコ悪い。なので、もう、諦めることにして次の町へと歩く。
「俺様、腹ペコ」
横には空腹で死にかけの黒猫一匹。まだ、自分の足で歩けているので問題は無い。ただし、横向きに倒れ喋らなくなったら危険信号だ。とにかく、早く町へと向かおう。もう、目と鼻の先にあるのだから。
「それにしても、こう毎回毎回苦労してる所を見ると、お前って厄病神に取り憑かれてるんじゃないのか?」
「止めろよ。そんな事言ってたら本気で取り憑かれそうじゃねえか」
「いや、自覚が無いだけで既に……」
「恐ろしいことを言うな!」
会話をしながら荒野を進み町へと辿り着く。黒い煙が所々、立ち上がっている。町の様子を見る限り火事では無いみたいだ。俺は黒い煙が立ち上がっている所に行く事にした。
黒い煙が立ち上がっていた原因はどうやら鍛冶屋があったからだ。奥で剣を作っているのだろう。それにしても、鍛冶屋が多いな。それに、よく見たら冒険者も多い。ここは武器が豊富なんだろう。いや、武器と言うよりは鉱石が多いんだろう。
中に入り壁に飾ってある剣を見ていると、奥から店主と思わしきおっさんが出て来る。
「らっしゃい。何かお探しで?」
「いや、俺無一文なんで」
おっさんが固まり笑顔になるとズンズン近づいて来る。これは、やってしまったと思い後退り店を出る。店主が最後に言い放った言葉は――
「金が無いなら客じゃねえ、失せろ!」
前の町のマスターハゲがどれだけ善良なマスターか充分に理解出来た。ハゲハゲ言ってゴメンね、と心の中で謝罪をして町を歩いて行く。
町を歩いていると冒険者と思われる人達とよくすれ違う。鎧を着ていたり、剣を腰に差していたり、槍を担いでいたり、大剣を背負っていたりしている。とりあえずギルドの場所を聞いてギルドへと向かう。
うふふ、これで無一文とおさらばよ。
ギルドに辿り着き中へと入ると冒険者で溢れ返っていた。どういう事なのだろうかとピョンピョン飛び跳ねて見たら何やら近くの鉱山に危険な魔物が出たらしい。それを討伐すれば、かなりの金額になるらしいのだ。それで、冒険者達は我先にと受け付けに行っているみたいだ。
しかし、どうにもその危険な魔物が強いみたいでAランク以下の冒険者はお断りしている。だが、それでも諦められない冒険者共がウジャウジャといる。
それなりの金額だけでこんなにも来るか?
そんな疑問を思っていたら話し声が聞こえてくる。その声に耳を傾け聞いてみる――
「凄えな。確かに報酬も魅力的だが冒険者としちゃやっぱり貴重なクリゾベルム鉱石の装備一式ってのは喉から手が出るほど欲しいからな」
クリゾベルム鉱石?
なんだそりゃ?
貴重な鉱山って言うから凄いのかな?
だが、理由はわかったな。これだけ冒険者が溢れ返っているのはそのクリゾベルム鉱石の装備一式欲しさに依頼を受けようとしているんだろう。
しかし、どうしたものか。このままだと前に進め無い。強引に進んでもいいのだが絡まれるのは面倒だし、かと言ってここで待ってたら日が暮れてしまいそうだ。そんな時、1人の男が声高らかに叫んだ。
「これじゃあ、ラチがあかねぇ! 町長に誰が相応しいか決めて貰おうぜ!!」
依頼主はこの町の町長なので、その町長に誰がこの依頼に相応しいかを見極めて貰うという事だ。そんなので良いのかと思うが、まあ、別にいいか。もし、選ばれなくても他の依頼を受ければいいだけの話だ。
どうやら、話は纏まったみたいで町長が一人一人を面接するらしい。1人につき五分で、その短い時間で町長にアピールするみたいだ。一応俺も並んでおく。着々と進んで行き遂に俺の番。
一丁やりますか!
「失礼します!」
中に入るとヨボヨボのクソじじいが椅子に座っていた。俺の方には椅子は無いようで、すぐにアピールしろという事なんだろう。しかし、やる気が出ない。妖艶なお姉さんならやる気が出るのに。
「あっ、俺今回の依頼遠慮しますわ」
「採用……」
「はっ?」
「採用……」
「待て待てクソじじい……あっ」
「構わんよ……」
「なら、クソじじい。どうして、俺なんだ? 言っとくけど、まだアピールも何もしてないからね?」
「君を選んだ理由は、他の連中とは違う雰囲気を感じたからじゃ。それ以外何もない」
「たったそれだけ?」
「あとは勘じゃの」
「まあ、俺としては良いけど。他の冒険者にはどう説明すんだよ」
「そこはお主の腕じゃろ」
「丸投げかよ。まあいいか。それよりクソじじい、一つ聞かせてくれ。この町には可愛い子いる?」
「わしの孫はこの町一番の可憐さじゃ」
「是非ともお会いしたいです、お爺様」
「ほっほっほっ。クソガキめが」
「はっはっはっ。頼むぜ!」
依頼を受ける事が出来、さらにはこの町一番可愛い女の子を紹介して貰える。しかし、クソじじいの贔屓目もあるので少し不安だが、まあ、問題無いだろう。
一話で終わらせる予定が……
では次回を!




